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総額50万"ライザップ英語"は買いなのか

プレジデントオンライン / 2018年11月4日 11時15分

写真=iStock.com/Ababsolutum

数カ月の集中トレーニングで英語を一気にマスター! スポーツジムと見紛うそんな英語塾が、急速に注目を集めている。実際の習得度と、おしなべて数十万円という価格帯とは、果たして釣り合っているのか? 「習慣化」をキーワードに、2人のプロが検証する。

■退路を断つ覚悟で、勉強した成果は?

「“毎日最大10時間英語漬け!?”」――ここ1~2年で目にするようになった短期集中特訓型の英会話教室のひとつ「スパルタ」の宣伝文句だ。

ネーミングも含めて近寄り難さを感じないでもないが、スピーキングに特化して鍛えることにより、3カ月以内という短期間で英語が話せるようになるのだという。

今、こうした“体育会系”英会話教室が注目を集めている。「ENGLISH COMPANY」「RIZAP ENGLISH」などのほか、従来型の英会話スクールでもさまざまな短期集中プログラムを展開中だ。

多くの場合、あらかじめ面談を行い、受講者のニーズに合わせて「いつまでに」「どのような」英語力を身に付けるかという目標設定をしてから、カリキュラムが組まれるのだが、主な“短期型”英語塾5つの特色を並列した。

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▼主な「短期集中」英語塾の中身
ENGLISH COMPANY(脱根性型学習!90日の科学的トレーニング)
期間:90日間
形式:専属トレーナーと1対1
学習量:(45分×2を週2回)×24+LINE音声機能で自宅トレ(1時間/日)
費用:入会金5万円、1カ月15万円(トレーニング720分+進捗サポート)
拠点:東京、京都に計7カ所
RIZAP ENGLISH(3カ月で滞在1年分の英会話)
期間:3カ月~(英会話コース・ビジネス中級プラン)
形式:専属トレーナーと1対1※外国人講師あり
学習量:全24回(+Skype会話30分×60回)、メールアドバイス※終了後の継続コースあり
費用:入会金5万円 45万円(教材費込み、市販教材の購入を勧める場合あり)
拠点:東京・新宿、池袋
SPARTA(短期で話せる英会話力を話す質と量が違う)
期間:3カ月(1.2カ月あり)
形式:本人+3人(教室インストラクター、語学コンサルタント、オンラインインストラクター)
学習量:●マンツーマン:24回●グループ:最大10時間/日●オンライン:最大4時間/日●自宅学習:個別
費用:入会金5万円 受講料32.94万円(教材費含む)
拠点:東京・新宿
TOKKUN ENGLISH(マッキンゼー流、問題解決型コーチング)
期間:2カ月
形式:●専属コンサルタントと1対1/週●LINEで毎日サポート+クラウドソフトで進捗管理
学習量:●1対1:1時間/週×8回●自己トレ:3時間/日×60日
費用:29.8万円(税別)※入会金無料、テキスト代含む
拠点:東京・新橋
レアジョブ本気塾(仕事に使える英会話力を身に付ける)
期間:約2カ月or約3カ月
形式:日本人専属トレーナーと1対1or外国人講師1人に複数の生徒
学習量:週1回対面、2時間オンライン、宿題30~60分
費用:29.8万円or24.3万円(入学金・追加購入教材ナシ)
拠点:東京・原宿

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およそ週1~2回のマンツーマンでのレッスンやネットを活用したレッスンを基本としながらも、少人数でのロールプレイング形式で英会話力を磨くケースも。

「海外駐在や昇進など緊急性が高いときに、短期間で“それなりの形をつくる”点ではいい」――企業・個人に「続ける習慣」をテーマにしたコンサルティングを行う古川武士氏は、“短期集中型”をそう評する。

「英語力がかなり落ちている人でも、ある範囲に絞って、ポイントを押さえた指導を受ければ、一定レベルまで引き上げてもらえる可能性はあるでしょう」(古川氏)

たとえば、外国人客が多い小売店の販売員であれば、客とのやり取りで頻繁に使う英語はある程度限定される。ポイントを押さえて徹底的に磨き上げれば、即仕事に生かすこともできるというのだ。

「もし経営者が社員の英語力を高めたいと考えるなら、何より先に場を与えることが有効。たとえば数カ月後に海外赴任させる、あるいは社内で英語を公用語化すると打ち出し、その前提で学ばせるのが一番効果が上がると思います」(同)

泳げないまま海に放り出される! くらいの危機感を持たせるわけだ。

「退路を断つ覚悟で短期集中型の勉強をした成果は、確かにありました」

と語るのは、人材・組織開発のコンサルタント、三浦将氏だ。

自身も短期間の集中学習で成果を上げた経験を持つ。30歳過ぎで勤務先を辞め、イギリスの大学院に留学。IELTSでバンドスコア6.5以上の英語力という条件付きだった。

「TOEICに換算すると820~870点。当初、私はTOEIC400点台だったが、3カ月後にはバンド6.5に達した」(三浦氏)

■資格取得の勉強と英語の勉強は違う

その一方で古川・三浦両氏が懸念するのは継続性である。1つは、たとえ2、3カ月とはいえ、集中的に勉強し続けることができるかどうか。もう1つは、一気に向上させた英語力を、その後も持続・向上させることができるかどうかだ。

実際に“短期集中型”を受講した人々へのアンケート調査では、受講の動機(Q1)は、海外転勤や昇進など必要に迫られたケース以上に「自己鍛錬」を挙げた人が半数以上。63.1%が完遂(Q2)した半面、30.1%が途中で挫折。厳しさやカリキュラムとの相性、宣伝とのギャップよりも、「スケジュールの都合」を理由に挙げた人が最も多かった(Q3)。

同じ自己鍛錬という動機でも、強弱には個人差がありそうだが、古川氏は「継続率6割以上は高いほう。本人の動機次第ということでしょう」と分析する。2~3カ月に30万~50万円と決して安くはない料金もやる気と関係がありそうだが、同じアンケートで各カリキュラムの値ごろ感を聞くと、その満足感と比べてやや厳し目の評価が散見された。

「お金をある程度払っているという感覚があるほうがコミットが強くなるから、決して悪いことじゃない。でも、『痛かった』などと後から損得を考えるのはいいことではないですね。よほどしっくりこなかったか、クレームに近いものならともかく、同じプログラムである程度成果を残している人がいるのに、自分はまったく成果が上がらないとしたら、それは自己責任です」(三浦氏)

では、“短期集中型”を十二分に活用し、その後も英語力をキープし続けるには、どうすればいいのか。

「資格取得のための勉強と英語の勉強は根本的に違う」と古川氏。

「『TOEICで800点を取る』という目標達成スタイルなら、資格取得の勉強法に近い形で学習計画を立てればいい。しかしこの手法だと、800点を達成した瞬間からモチベーションを一気に喪失し、リバウンドを起こしかねない」(古川氏)

「RIZAP ENGLISH」のように、集中授業の後で月2回、1年間のメンテナンスコースを設けるところもあるが、英語に「終わり」はないのである。

「最初にやるべきことは、英語を勉強し続けることによって、どんな夢が広がるのかを10個くらい書き出すことです。『自分のキャリアを広げてくれる』『海外からいち早く情報を仕入れられる』『海外の専門家の話を英語のまま聞ける』といった具合に。そこにフォーカスしてモチベーションを高めるわけです。その途中の“中間目標”として『TOEIC800点を3カ月で実現』という構図にしないと、思ったような成果は得られません」(同)

三浦氏の考え方も古川氏に近い。現在、英語学習に関するコンサルティングの要請に応じる機会が多いという三浦氏とクライアントとのやり取りは、たとえば次の通りだ。

【三浦氏】何のために英語を勉強したいのですか?

【英語学習者】昇進したいからです。

【三浦氏】では、昇進したらそこで何をやりたいですか?

【英語学習者】そうか……、そうだ、海外の人と丁々発止でビジネスをやりたいです。

【三浦氏】それができるようになったら具体的にどうしたいですか?

【英語学習者】そうだな……、わが社が誇るいい商品やサービスを欧米だけでなくもっと世界に広めたいです。

【三浦氏】ただ広めればいい?

【英語学習者】う~ん……、それが、日本人としての世界貢献につながれば夢のようです。

「まず、英語にポジティブなイメージを持てるようにする。そして本当の目的、強い目的意識をしっかりと見据えることです」(三浦氏)

■毎日のジョギング実践で快感を得る

職場で強く要請され、嫌々ながら即席で通わなければならない場合でも、やり方はある。

「『アズ・イフ・クエスチョン』をしてみてください。『もし英語を自在に話せたら、何をしたいか』について突き詰めていくのです」(同)

朝、目覚めて突然英語が操れるようになっていたら……などと“妄想”すれば、何をしたいかは意外に出てくるという。会社が強制してくるなんて、いいチャンス! と前向きな気持ちになればしめたものだ。

こうして古川氏の言う「夢」、三浦氏の言う「本当の目的」を確認したら、次に「習慣化」のベースをつくることが重要だと両氏は強調する。

「たとえばジョギングを楽しむ人々の多くが、タイムを上げたり距離を延ばすことよりも毎日実践することじたいに快感や報酬を得ています。お勧めの方法が、子供のころにラジオ体操に参加するとスタンプを押してもらえたのと同じようなカードを作ること。勉強した日に『済』などと記していくわけです。これを続けると不思議なもので、空白の日があると気持ちが悪くなり、不思議なモチベーションで継続できます。しかも毎日、学習を積み上げているという実感が得られるので、自己肯定感も生まれます」(古川氏)

■「快の感情」が、湧くかどうか

一方の三浦氏は、集中特訓の期間に体験するプレッシャーや厳しさが、自分の成長に「快の感情」として繋がるかどうかがカギだと説く。

「英語を学ぶ本当の目的が明確であれば、英語を学ぶことに『快』の感情を持てるはず。そうなると『快』を求めて学ぶ習慣もつく。スクール選びの際にも、無料お試し授業などを受けてみて、『快』の感情が湧くかどうかは重要。『快の感情』として繋がっていれば、短期トレーニング後も、英語の力はしっかりと伸び続けます。逆に『苦の感情』がありながら、『何とか乗りきった』のでは、その後の習慣的な継続に繋がりにくくなります。動機が自己鍛錬のみで、特に差し迫ったニーズがない場合は特に重要」(三浦氏)

その意味では、「TOKKUN ENGLISH」(※取材時。現在のサービス名は「PROGRIT」)の受講者が記した「楽しく勉強できた」という実感(表参照)は意味がある。ちなみに、「快」の感情をアップさせるには、「『もう少しやりたい』といったところで勉強をやめるのがコツ」と三浦氏は言う。「最初のうちなら10分くらいでしょうか」(同)。

まずは毎日、1カ月続けることを重視すべきというのは古川氏。

「最初の1週間は1日15分でいい。勉強量をゼロから増やすことに専念し、2週目からは約30分と徐々に上げていく。1カ月もすれば習慣化し、体が自然に学習に向かうようになる。これならモチベーションがなくとも継続できる」(古川氏)

“やりっぱなし”では費用対効果は下がる一方だ。終了後の学習の習慣化を考慮に入れながら、プログラムを選択することが肝要だ。

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古川武士
習慣化コンサルティング社長
関西大学卒業。日立製作所などを経て2006年独立。著書に『30日で人生を変える「続ける」習慣』ほか。
 

三浦 将
チームダイナミクス社長
英国立シェフィールド大学大学院修了。大手広告代理店等を経て現職。著書に『自分を変える習慣力』ほか。
 

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(小澤 啓司 撮影=初沢亜利 写真=iStock.com)

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