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ボーッとした人ほどムダ遣いが増える理由

プレジデントオンライン / 2018年12月16日 11時15分

写真=iStock.com/gpointstudio

ムダ遣いをしてしまう、行動がのろい、片づけられない……。そんな苦手を克服するにはどうすればいいのか。今回、9つのテーマに応じて、各界のプロにアドバイスをもとめた。第7回は「ムダ遣いが多い」について――。(第7回、全9回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年7月16日号)の掲載記事を再編集したものです。

■ボーッとした脳が刺激を求め衝動買い

ダメだと頭ではわかっているのに、つい買ってしまう……そんなムダ遣いをしたことは誰でもあると思います。意思が弱い、性格的なものなどと半ばあきらめている人もいると思いますが、実はこうした浪費は脳に原因があります。

脳には、1000億を超える神経細胞があり、同じような働きをする細胞は近い場所で働いています。私はこれらを「8つの脳番地」に割り振りました。

▼8つの脳番地をうまく活用できないとムダ遣い発生!
脳番地を刺激し覚醒を上げれば冷静な判断ができるようになる

(1)思考系脳番地
思考や判断に関係する脳の司令塔。活用できないと、周囲の声に乗せられたり、比較できずに両方買ってしまったりすることも。
(2)理解系脳番地
物事や言葉など外部から与えられた情報を理解し、役立てる。活用できないと、自分に合わないものを買ってしまうなど「いい買い物」ができない。
(3)記憶系脳番地
覚える、思い出すことに関係。知識の記憶と感情の記憶を連動させることで鍛えられる。活用できないと、過去に失敗した買い物を繰り返す。
(4)感情系脳番地
喜怒哀楽など、感性や社会性に関係する。活用できないと、気分に流されて不要なものを購入してしまう。人に大金を貸してしまうことも。
(5)伝達系脳番地
言葉、文字のほか、ジェスチャーなど話したり伝えたりするコミュニケーションを担当。活用できないと、店員に欲しいものを的確に伝えられず、中途半端なものを購入。
(6)視覚系脳番地
文字・言葉を読み取る左脳が活用できないと、商品スペックを見落とす。絵や映像を読み取る右脳が活用できないと、いい商品を見逃すことに。偽物を購入してしまうことも。
(7)聴覚系脳番地
言語や音など耳からの情報に関係する。活用できないと、店員の話が頭に入らず、疲れて妥協した買い物をしてしまう。
(8)運動系脳番地
体を動かすこと全般をつかさどる。活用できないと、ネットショッピングなどを好むようになり、実物を見ないで購入して失敗することに。
※加藤氏への取材をもとに編集部作成

私たちはこの8つの脳番地を常に活動させています。例えば買い物なら、店に行って売り場を歩き(運動系脳番地)、商品を見て(視覚系脳番地)、店員に質問をして(伝達系脳番地)、説明を聞く(聴覚系脳番地)。商品の特徴や魅力を理解し(理解系脳番地)、過去の経験を思い出しながら(記憶系脳番地)、ドキドキワクワクし(感情系脳番地)、買うべきかどうかを考えて決断する(思考系脳番地)。こんな具合です。

しかし、この8つの脳番地をうまく活用できていないときにムダ遣いが発生します。ムダ遣いは脳への刺激となるので、眠っている脳番地を起こす「覚醒作用」があるのです。ムダ遣いは、この覚醒作用を求めてやってしまうといっても過言ではありません。

脳は、ボーッとした未覚醒の状態を嫌います。シャキッとしたいのです。そこで何かしら脳を目覚めさせる刺激を求めるわけですが、それに最適なのが「物質依存」です。タバコや麻薬もそうですが、ムダ遣いにもそうしたものに近い、脳への覚醒作用があるということなのです。

同じことは、睡眠不足でも起きます。夜更かしし、日中眠い状態でいたときは脳の覚醒が低い状態にあります。そういうときに何か自分を刺激してくれるようなものがあったら、つい買ってしまう。

同様に、夜9時を過ぎると脳の思考系脳番地の働きが落ちてきます。しかも一日の疲れが出る時間帯なので、脳の覚醒はすごく下がる。このときにネットショッピングなどをするとムダ遣いをしてしまいがちです。

脳の覚醒が低いと、過去を振り返ったり未来を見通したりする力も落ちてしまいます。つまり、過去にムダ遣いした経験を顧みることもなく、先のことを考えれば今ここでお金を使ってはいけないという自制も効かなくなるのです。

ムダ遣いをする人は大きく2つのタイプに分かれます。1つは、家にこもって外出もせず、ネットショッピングをしてしまうタイプ。もう1つは、外出していろいろ動き回って衝動買いしてしまう活動的なタイプ。前者は動かないから覚醒も低く、刺激を求めてムダ遣いをしてしまう。後者は行動しすぎるので脳全体の覚醒は比較的高いのですが、集中と散漫のバランスが悪く、不安定なのです。

では、どうすればムダ遣いを防げるのか。答えはシンプルで、「脳が最高の状態」のときに買い物をするようにする、ということです。特に大事な脳番地は、理解系と思考系です。

モノのよしあしや要不要は理解系が分析し、「買うべきかどうか」は思考系が最終判断します。思考系は欲求を抑える力を持つ前頭葉に位置しますので、ここが機能すれば衝動的な行動にブレーキをかけることができます。なお思考系は記憶系と連動し、過去の記憶を思い起こしながら思考を深めるため、記憶系も重要な脳番地です。

ですから、まずは睡眠不足の状態で買い物をしないこと、夕方以降の遅い時間帯での買い物も避けましょう。そのうえでムダ遣いしそうになったら、3分ほどそのあたりを歩いてみてください。歩くという行為は脳番地全体を刺激するので、脳がいわば「脳トレ」をした状態になります。麻痺していた思考系や理解系の脳番地の覚醒も上がるので、冷静な判断ができるようになります。そのとき、1度お店から出るとより効果的です。

使用する脳番地を意識的に切り替えることも有効です。脳というのは同じところだけを使っていると疲労します。そうすると違う脳番地を使いたくなるのです。買い物もいろいろな脳番地を刺激する行為なので、脳が疲れると衝動買いをしたくなるわけです。

ですので、商品から目を離して外の風景を眺めてみたり、連れの人と話してみたり、様々な方法を駆使して違う刺激を脳に与えればいいのです。それだけでも、脳番地が切り替わって、もう1度商品を見たときにはまた違う感想を抱くと思います。

ほかに気を付けてほしいのは、「スマホ依存」です。スマートフォン(スマホ)は、小さい画面をじっと見続けることになるので、眼球運動がほとんど起きません。一番簡単な脳番地の切り替えは眼球を動かすことなのですが、それが起きないので脳番地が切り替わらない。結果として、衝動的にポチッとクリックしてものを買ってしまう。目に入った商品をすぐ買えるスマホは、脳番地から考えてもムダ遣いの温床なのです。

▼衝動買いを抑えるその場アクション8
(1)一回店から出る
(2)3分間歩く
(3)午前中に買い物をする
(4)スマホでネットショッピングの場合は、1度スマホの画面から目をそらす
(5)過去に失敗した買い物を思い出す
(6)代用できるものを考える
(7)代わりに何を捨てるかを考える
(8)財布に入れた親や子の写真を見る
※加藤氏への取材をもとに編集部作成

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加藤俊徳(かとう・としのり)
加藤プラチナクリニック院長
脳内科医・医学博士。昭和大学客員教授。1995~2001年、米ミネソタ大学で脳画像の研究に従事。13年、MRI脳画像診断と脳トレ治療のクリニックを開設。脳の個性の鑑定も行う。

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(加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳 構成=衣谷 康 撮影=向井 渉)

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