上場40社以上で採用"近未来予測"の中身
プレジデントオンライン / 2018年11月7日 9時15分
■未来を知ることは仕事、資産形成に役立つ
私たちの生活は、世の中の動きに大きな影響を受けます。とくに経済の動きは、見逃せません。人生に必要なお金を確保して豊かに暮らすには、近未来を予測して行動することが大切。リンジーアドバイスの渡辺林治さんは、経済アナリストとしての経験を活かし、30年かけて未来を予測するモデルを開発しました。為替レートや株価指数、金融危機についてのデータと歴史分析による予測です。実際に予測は上場企業40社以上で活用されています。
「日本は大きな転換点を迎えていることが明らかになりました。2019年は景気が悪化するものの、21年以降にバブルが発生する可能性が考えられます」
加えて24~26年にはバブルが崩壊しうることも指摘。これから10年をどう過ごすかで仕事面にも資産面にも大きな差が出そうです。いまこそ先行きを見通して行動すべき時期なのです。
予測の詳細は後述しますが、ここでは、未来を予測して行動するには、何を知っておけばいいのか、ポイントを解説します。
まず、世の中は政策→金融市場→実体経済というサイクルで動いています。政策とは政府が打ち出す金融政策や財政政策のこと。金融政策では、金利を変動させたり、世の中に出回るお金の量を調整したりします。財政政策では関税を引き上げたり、災害が起これば復興のための支援策を打ち出したりします。この政策が金融市場に波及するのです。
金融市場には、株式市場、債券市場、為替市場、商品市場がありますが、投資家の売買によって相場が変動します。日本の株式市場の売買は外国人が多く約7割を占めるほど。彼らが注目しているのは政策です。政策が実体経済にどう影響するかを先読みして投資家は売買するので、政策の次に金融市場が動きます。そして最後に政策の効果が実体経済=景気に表れてきます。
「たとえば14年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられ、株価と消費が落ち込みました。そこで安倍政権は3.5兆円の緊急経済対策を行います。株価が上昇し景気は安定を取り戻しました」
このように政策が金融市場、実体経済の順に影響を及ぼし、さらに実体経済を見ながら政府はあらたな政策を打ち出す、というサイクルになっているのです。まずはこの仕組みを理解しましょう。
■いまの日本は150年前の明治維新の時期に似ている
未来予測に欠かせない3つの視点があります。
1つ目は歴史を学ぶこと。歴史を学ぶことで、現在がどういう局面にあるのかが判断できるのです。
「日本は150年前の1868年に江戸から明治へ時代が変わりました。そして、2019年には平成から元号が変わります。再び大きな転換点を迎えているといっていいでしょう」
150年前には産業革命が起きていた欧米の金融システムに組み込まれ、日本は通貨制度が混乱しました。物価も上昇し、人々の暮らしが厳しくなったのです。現在はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるIT産業革命が世界に広がっています。収入が増えない中で物価は上昇し人々の暮らしは再び苦しくなります。
2つ目は世界的視点で考えること。日本経済は単独で動いているわけではなく、世界経済の影響を受けているからです。
3つ目はデータ分析の基礎を学ぶこと。過去の相場の変動を示すチャートを見る方法をマスターしておくといいでしょう。
Point 1 歴史を学ぶ
歴史を学ばずしていまを知ることはできないし、いまを知らずして未来を考えることはできない。歴史の中からいまと似ている時代を探し、その後に何が起きたかを確認すれば、未来予測の手掛かりになる。歴史を学ぶには、経済や国際金融の歴史について書かれた本を読むといい。
Point 2 世界的視点で考える
日本経済も日本人の暮らしも世界経済という生命体の一部をなしている。世の中の動きを世界的視点で捉えなければ、事の発端を見極めたり、次に起こることを見通したりできない。たとえば、幕末のインフレは欧米の対日政策が原因だったし、2018年2月の世界的な株価暴落はニューヨーク市場が起点になっている。
Point 3 データ分析の基礎を知る
株価や為替レートなどの過去の値動きを示したチャートを見ることで、経済の先行きに対する投資家の微妙な心理変化を把握できる。また、過去の高値や安値を超えたときは、投資家の想定外のサプライズが起きていて、新たな動きが生じることも。高値や安値など値動きの節目となる閾値(しきいち)を把握しておこう。
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リンジーアドバイス 代表取締役
商学博士(慶應義塾大学)。野村総研、シュローダーを経て、企業の業績改善や資産形成に役立つ経済予測モデルを開発。著書に『乱高下あり! バブルあり! 2026年までの経済予測』。
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(リンジーアドバイス 代表取締役 渡辺 林治 文=向山 勇 イラスト=原田リカズ)
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