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小学6年生が考案「足し算だけで割り算」

プレジデントオンライン / 2018年11月17日 11時15分

写真=iStock.com/liza5450

■誰でもスピーディーにできる9の割り算

小学生のころ、私はラジオの製作に夢中だった。電卓とともに自分で回路を設計。東京・秋葉原から部品を取り寄せ、半田ごてを用いて製作に熱中していた。愛読誌は月刊「トランジスタ技術」だった。

ところで、AMラジオの周波数(kHz)はすべて「9」の倍数であることをご存じだろうか。NHK第1(594)、TBSラジオ(954)、文化放送(1134)、ニッポン放送(1242)……。このようにAMラジオ放送局の周波数は「9kHz」間隔で割り当てられている。これを「搬送波間隔」という。

おもしろいのは、この9の倍数は、そのケタのすべての和も9の倍数になる性質があるということだ。「594→5+9+4=18」「1134→1+1+3+4=9」。この事実を小学6年生のときに知った私は、なぜそうなるか気になってしかたがなく、自分で答えを見つけようと考え続けた。

その結果、ある数のすべてのケタの数を足して出てきた数は、もとの数を「9」で割った余りだと気づいた。余りがわかるということは、つまり商もわかるのではないか。そう考え、さらに独自に研究を続けた。そうして、ある数を9で割ったときの答えを簡単に導く方法を編み出した。小学6年生だった私は狂喜乱舞した。

それが図の桜井式計算法だ。これを使えば、「9」の割り算は一瞬でできる。2ケタの割り算の場合を見てみよう。「42÷9=?」は一般に筆算で解くが、桜井式では2ステップですむ。(1)割られる数(42)の十の位が商になり、(2)割られる数(42)の十の位と一の位の和(4+2)が余り(6)になる。

この桜井式は3ケタでも同じだ。「152÷9=?」は、(1)割られる数(152)の百の位(1)が、商の十の位になり、(2)割られる数(152)の百の位と十の位の和(1+5=6)が商の一の位になり、(3)割られる数(152)の各位の和(1+5+2=8)が余りになる。つまり答えは「16余り8」である。

ここまで読まれて気づいたことがないだろうか。桜井式計算法では、割り算なのに掛け算と引き算を使っていないのだ。足し算だけで、割り算が可能なのである。しかも筆算はタテに書いていくが、桜井式はヨコ一列で簡単だ。

なお、上記の2ケタと3ケタの例題は、いずれも割られる数のケタの和が「9」未満だった。ケタの和が9以上だとどうなるか。たとえば、「769÷9=?」は、商の十の位は「7」、一の位は「7+6=13」、余りは「7+6+9=22」。

そこで13の1を商の十の位に繰り上げて「7+1=8」とし、商を83とする。一方、余りも22と9以上なので、これをもう1度計算すると、「2、余りは4」となる。その商の2を繰り上げて先ほどの商(83)に加え、最終的な答えは「85余り4」となる。

この桜井式計算法は、多くの例題(パターン)のなかから共通する法則(ルール)として見つけ出され、最終的に論証を経て完成したものだ。パターンのなかからルールを発見することこそ人間に与えられた天性である。これはビジネスにも通じるのではないか。

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桜井 進
サイエンスナビゲーター
1968年生まれ。東京工業大学理学部数学科卒業、同大学大学院修了。2000年、日本で初めてのサイエンスナビゲーターとして活動を開始。『面白くて眠れなくなる数学』など著書多数。

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(サイエンスナビゲーター 桜井 進 構成=田之上 信 写真=iStock.com)

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