格差目の当たり「同窓会」という残酷物語

プレジデントオンライン / 2018年12月17日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/JGalione)

同じ同窓会でも、学校を卒業して10~20年後の会と、定年を迎えた世代の会は、似て非なるものだ。マーケティングコンサルタントの酒井光雄氏は「会社で出世した者が定年後に抜け殻のようになるケースもあれば、60歳過ぎても第一線で活躍する者もいて、立場が逆転することがある」という。定年までの時間と、それ以降の時間で「勝ち組・負け組」が180度変わる理由とは――。

※本稿は、酒井光雄『男の居場所』(マイナビ新書)の第一章の一部を再編集したものです。

■勝ち組の同窓生が、なぜ負け組に転落するのか

学校を卒業して時間が経つと、同窓会の知らせが届く。卒業して10~20年後の場合だと、「どんな企業に就職したのか」「どんな人と結婚したのか」「自分は勝ち組なのか、負け組みなのか」「他人と比べて、外見は老け込んでいないか」「自分は人より幸せに暮らせているのか」といったことが気になり、ある程度自信のある卒業生だけが集まる。

単に昔の友人に会いたいと思って参加したら、周囲から自慢話ばかり聞かされ、自分が選んだ道が間違っていたような気持ちになり、不愉快になる場合がある。

時が流れ定年を迎えた世代の同窓会になると、その状況は一変する。企業のブランド力が自分の価値だと思って生きてきた同級生の中には、定年後どこにも再就職できず、なにもせずに暮らしている男が出てくる。

その姿は生気がなく、まるで抜け殻のように見える。最年少で部長に昇格したことを同窓会で自慢し、自営業で働く同級生に現役時代は上から目線で話をする度量が狭小な男だった。

それなりの企業でそれなりの地位にいれば、好きになれない男でも人はつかず離れず付き合う。いつか、どこかで、その力を借りることがあるかもしれないからだ。だが役職定年を迎え、そして定年になり、再就職していなければ、周囲にいる人間はあっさりと去っていく。見下された人たちは、拠り所を失ったその男の姿を見て溜飲を下げる。

■60歳過ぎても第一線で働き、生気に溢れる同窓生

その一方、自分で事業を起こした男は、60歳を過ぎても第一線で仕事に取り組み、生気に溢れている。会社で培った実務経験を見込まれ、かつて取引先だった企業の経営者から請われて役員として迎えられ、その後グループ企業の社長になって活躍している早期退職者がいる。

長年の趣味を生かして子供たち向けに将棋教室を開き、充実した時間を過ごしている男もいる。人生の後半戦のことなど何も考えず、また準備することなく定年を迎えた男たちとは対照的だ。

学校を卒業して、どんな企業に就職し、そこでどんな地位にまで登りつめたのか。そんな尺度で人を評価する時代があった。だが、人生100年時代と言われるようになった今、定年までの時間など、単なる人生の通過点に過ぎない。

65歳でリタイアし、仮に85歳まで生きるとすると、何もしなければ小学生から大学までの16年間よりも長い20年という時間を無為に過ごすことになる。

■「60歳まで」と「60歳から」人生のありようは変わる

長寿社会で定年を迎えると、長い間縛られてきた多くの制約から解き放たれ、我々は新たな道を選べる恩恵を手に入れる。

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結婚し、子供が生まれ、住宅を購入すれば、その代償として経済的な余裕と裁量の自由度をなくす。

だが、子供が独立すれば(子供を持たず、自由裁量度を優先した人もいるだろうが……)、教育費という縛りからも解放される。また住宅を購入して住宅ローンを組んだ人たちも、定年前後にローンを完済し、もうひとつの縛りから解き放たれる。

子育てと教育費、そして住宅ローンから解放されると、夫婦二人のためにふたたび時間とお金を使えるようになる。

■人生はダブルヘッダーだ

長寿社会となったこの国で、我々の人生には前半戦と後半戦が生まれた。スポーツの試合に例えれば、前半戦と後半戦の合計得点で勝敗が決まるようになったわけだ。

試合の前半戦に得点を重ね、勝敗がついたように見えた試合で、後半戦で形勢が逆転して勝利する選手がいると、誰もが熱狂し興奮する。人生もこれとまた同じだ。

定年までいた会社で燃え尽きてしまい、定年後にはなにもせずに暮らす人がいる。一方で、前半戦から周到に準備して、後半戦に力を発揮して現在も愉しく暮らす人もいる。

制約が多い前半戦でなく、制約から解放される後半戦にどう挑むかで自分の人生が決まるなら、誰でも面白く生きたいと願うはずだ。

■競争社会を勝ち抜いた勝者ほど孤独だ

同期の人間を差し置いて出世していく男は、次第に社内では孤独になっていく。社長として頂点を極めると、さらに孤独な状況に追いやられる。オーナー企業と違い、サラリーマン社長の地位は、熾烈な競争に打ち勝ってきた結果だ。それゆえ同期の人間と、仲良くしていられるはずがない。

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サラリーマン社長になると、業界団体や経済団体、国や自治体など社外との新たな関係が生まれる。これまでなかったネットワークが生まれた恩恵により、専門委員や顧問に就任を要請されるなど、活動の場を広げる男もいる。

一方で、社内でしかその力を発揮できないような中間管理職は、社会との接点は非常に限られる。取引先か協力企業だけが社会との窓口になり、商品の売り買いなどビジネス上のつき合いだけでは、相手との関係が深くはなっていかない。

仕事を発注する側にいると、地位と発注する権限があるから相手はつき合うが、部署が異動になると、関係が切れてしまうことも多い。受発注という経済活動以外で、両者の関係を維持する価値を相手が見出さないためだ。

だが出会った人たちと仕事以外でも人間的な接点を持てた人には、チャンスが巡ってくる。仕事の力に加え、人との関係づくりが上手い人なら、その人を雇用したいと考えるオーナー経営者は結構多い。昨日まで仕事を発注していた企業の経営者から、請われてその企業の社員や幹部になり、給与をもらう立場になるのは稀ではない。社外の人たちは、人をよく観察している。人として魅力のある人材なら、人生の後半戦の選択肢は広がる。

強い立場で仕事をするのは、誰にでもできる。弱い人の立場を理解して仕事をしていれば、相手は絶対に忘れない。「エリート」と社内で呼ばれる人材ほど、こうした心遣いができないままに、仕事をしている。

■家族が幸せになるために働いたが、家族との間に溝

競争社会とは、闘争社会だ。会社で出世していくことは、同期の仲間から抜きん出る必要があるため、孤独になりがちで、群れることができない。競争することが宿命ともいえる男たちは、生まれながらに群れることができず、ひとりで生きることになる。

結婚して子供が生まれると、その子のため、さらに社会から評価を集め、経済力を高めようと仕事に取り組む。それが高じると夕食を自宅でとることもできない時間まで仕事をする。家族みなが幸せになるために働くことが目的だったのに、家族との間に溝が生まれてしまうことさえある。

■なぜ、中年になると女性が元気になるのか

40代から50代のミドル世代は経済的な制約が多いせいで、他の世代と比較して幸せそうな人が少ないように感じる。事実、日本では49.8歳が最も幸福度が低いことが明らかになっている。実はこの世代の幸福度が低いのは日本だけでなく、世界中で40代から50代世代の幸福度が低いことを、イギリス人の大学教授ふたりが立証した。

イギリスのウォリック大学のアンドルー・オズワルド教授と米ダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授が、幸福度と年齢に相関関係があるという研究結果を発表した。両教授は80カ国200万人以上を対象に調査し、40歳から50歳までの人は、20代、30代の若年層や60代以上の高齢層と比べ、幸福度が低いことを突き止めた。

この傾向は日本、英国、米国など先進国から発展途上国までほとんど変わらず、社会・経済的地位、子供や離婚経験の有無なども関係なかった。

40代に入ると男たちは仕事に脂が乗り、以前に増して仕事に注力する人が増える。それが50代になると今いる会社で先が見えてしまった人とそうでない人とに分化し、前者の背中には哀愁が漂うようになってくる。

■「いい豆で淹れても、パパ味わかんないもん」

同世代の女性たちは次第に子供の手が掛からなくなり、自分の時間が生まれる。仕事に没頭する夫とは別に、有意義な時間の過ごし方に次第に長けていく。

平日の昼間、この世代の女性たちが連れ立ってランチタイムに人気のレストランに出掛け、あるいはウインドーショッピングなど散策を楽しむ姿をよく目にする。同じように時間が生まれた者同士だから、彼女たちの会話は弾ける。

彫金教室の帰りにカフェでお茶を飲んでいるふたり組みのマダムがいた。次回作るブローチのために、どの石を買おうかという相談している最中だ。第1候補はタンザナイトで、欲しいだけ買うと石代は12万円ほどになり、さらに18金の地金は7万円くらい必要になるという。

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ところが夫には「ガラス玉とメッキよ」と話すという。さらに「ウチのパパは、ジュエリーの値段なんて知らないから、説明しても無駄」とのたまう。夫の話はさらに続き、「パパのコーヒーは、いつもアタシの出がらしよ。いい豆で淹れても、パパ味わかんないもん」と笑っている。

人生の前半戦で男たちが微妙な岐路に立っている時、女性たちはすでに後半戦に向けて、有意義な時間の過ごし方を、夫抜きで、しかも自力で見つけ始めている。

(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄 写真=iStock.com)

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