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「もっと外国人を」介護現場の悲痛な叫び

プレジデントオンライン / 2018年12月14日 15時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

外国人労働者の受け入れ拡大を目指す「入管法改正案」が12月8日に成立した。改正案には批判も多かったが、主な受け入れ先のひとつである介護業界には「もっと外国人労働者を受け入れてほしい」という声がある。あるケアマネジャーは「人手不足が年々深刻になっている。『団塊の世代』が75歳以上になる2025年までには何とかしてほしい」という。待ったなしの現場の声とは――。

■可決した「入管法改正案」に批判も多いが、介護業界は……

12月8日、外国人労働者の受け入れを拡大する「出入国管理法」の改正案が国会で成立しました。この改正案を巡っては与野党が激しい論戦を繰り広げました。論点は多岐にわたりましたが、メディアを通じて報じられた意見は以下のようなものでした。

「すでに技能実習生という形で多くの外国人労働者が入っているが、労働環境の悪さから辞める人が多い。その問題点を見直すのが先決だ」
「安易に外国人労働者を入れると、日本人の雇用が確保できなくなる」
「これは事実上の移民許容だ。移民として受け入れたら外国人に日本人と同じ保証や権利を与えなければならず、大きな負担になる」
「生活習慣や価値観、倫理観が異なる外国人が入ってきたらトラブルが多発し、治安が悪くなる」

■「空き」がある特別養護老人ホームに入居できない理由

しかし、こうした論点は机上の空論であることが少なくありません。今回は、外国人労働者の主な受け入れ先として考えられている介護業界の現場の声をご紹介したいと思います。

ベテランケアマネジャーのTさん(40代・首都圏在住)は「他の業種のことはわかりませんが、介護業界は外国人の受け入れ拡大を歓迎していると思います」と話します。

「介護事業者の人手不足は本当に深刻なんです。たとえば特別養護老人ホーム。有料老人ホームなどに比べ利用者のコスト負担が少ないため入所希望者が多く、なかなか入れないといわれている施設です。ただ、地域によっては空きがあるのに、受け入れられないというケースもある。人材が集まらず所定の職員数が確保できないからです」

他の高齢者施設や介護サービス事業者も同様で、「需要はあるのに人手不足のため十分に供給できない」、あるいは「サービスの質を落とさざるをえない」という状況なのだそうです。つまり、このままでは施設に入る高齢者に悪影響が及ぶことになります。

■介護職員はほかの産業より10万円以上も月給が低い

介護労働安定センターの「介護労働実態調査」(2017年度)によれば、介護事業者に職員の過不足について聞いたところ、「不足感がある」(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)と回答した事業者は前年度より4ポイント増となる66.6%でした。これは4年連続で悪化。その主な原因は「低賃金」にあるようです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/woolzian)

介護職員が不足している理由について聞くと、「採用が困難である」が88.5%で突出しています。同調査によれば、「採用が困難」という背景にあるのが、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」「他産業に比べて、労働条件などが良くない」といった待遇面です。

この調査では、訪問介護員の平均月給は19万8486円でした。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2017年)によれば、全産業の平均月給(2017年)は30万4300円なので、かなりの開きがあります。介護職員はほかの産業より10万円以上も月給が低いのです。

■介護業界が警戒する「2025年問題」とは何か

こうした事情に加えて、外国人労働者の受け入れを求める背景には「2025年問題」があります。2025年は人口の多い「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になる年です。後期高齢者が増えれば、それに比例して要介護者も増えます。今でさえ人手不足に頭を悩ませているのに、2025年を迎えたらどうなってしまうのだ、と怖れているのです。

2025年まであと7年足らず。刻一刻とその時は迫っており、外国人の力を借りてでも人材を確保したいというのが介護業者の本音のようです。前出のTさんは「介護業界で働く外国人の評判は結構いいんです」とも言います。

「すでに高齢者施設やデイサービスの事業者などに外国人が実習生という形で入ってきています。多くがベトナム、ミャンマー、タイといった東南アジアからきた女性です。私が見聞きした範囲では、真面目でよく働いてくれるという声がほとんどです。ある利用者さんからも、『日本語はカタコトだけど話をしっかり聞こうとする姿勢があるし、明るくて感じがいい』と聞きました。気候や生活習慣、価値観などが異なる日本では苦労することも多いと思いますが、日本語を必死に覚えようとしていますし、仕事ぶりも誠実。部外者の私の目から見ても頼りになる人材ばかりです」

■介護業界でも外国人実習生が辞める現象はあるのか

入管法改正案の議論では、実習生が次々と辞めていくのもひとつの問題として取り上げられました。来日前の説明と実際の労働環境が大きく異なり、職場から離れる人が多いのです。

介護業界ではそうした問題はないのでしょうか。

「あるかもしれません。残念ながら介護業界にも酷い事業者はいますからね。ただ、私が知っているところでは辞めていったという話は聞きません。それらの経営者は外国人に対する偏見は持っておらず、日本人スタッフと同様の待遇、態度で接しているからでしょう。せっかく来てくれたのに辞められたら困るという意識もあるでしょうが。そのあたりは結局、経営者の資質の問題かもしれません。人材を大切にする誠実な経営をしていれば、多くの外国人はそれに応える仕事してくれると思います」

介護業界には外国人に対するこうした見方がベースにあるから、入管法改正に期待を寄せていたのでしょう。今回の法改正で、政府は2019年度からの5年間にわたり、14業種で最大34万5150人の受け入れを見込んでいます。

次回は、現在、日本の介護施設で働く外国人労働者の肉声をお届けします。

(ライター 相沢 光一 写真=iStock.com)

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