小泉国会改革が進まない理由は小泉進次郎

プレジデントオンライン / 2018年12月18日 15時15分

12月4日、衆議院本会議に臨む自民党の小泉進次郎厚生労働部会長。(写真=時事通信フォト)

■なぜ「小泉改革」は進まないのか

自民党の小泉進次郎厚労部会長は、永田町で最も注目を集める政治家の1人であることに誰も異論はないだろう。

彼が今取り組んでいるのは国会改革。中心的な存在として立ち上げた超党派の「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」が7月に提言をまとめ、それを自民党内でフォローアップするためにつくった「衆議院改革実現のためのプロジェクトチーム」でも事務局長を務める。

しかし、今月10日に閉会した臨時国会では、小泉氏らの意見は取り入れられず、国会改革をしようという機運は皆無に近かった。なぜ「小泉改革」は進まないのか。

■臨時国会が「成果ゼロ」に終わった背景

超党派の「平成のうちに」は、言葉通り、来春元号が変わる前に国会改革を実現しようという掛け声のもとに発足。100人以上の与野党国会議員が参加し、7月20日には衆院議長に提言を提出している。提言内容は、

(1)党首討論の定例化・夜間開催の実現
(2)衆議院のIT化(タブレット端末の導入など)
(3)女性議員の妊娠・出産時等への対応(代理投票の検討)

――など。小泉氏の持論である、スキャンダルなどを追及する特別調査会の新設は提言に入っていない。与野党で合意を得やすい「比較的簡単な」テーマを取り上げて提言したのだ。それでも、臨時国会で実現に向かったものはひとつもない。

会期48日の間に開かれた党首討論はゼロ。タブレットの導入はおろかペーパーレス化も進まず、妊娠議員の代理投票は実現のめどが立っていない。「成果ゼロ」だった。

来年通常国会は1月に召集されるが、前半は補正予算や2019年度予算案の審議に費やされる。国会改革の議論が本格化するのは、早くとも春以降とみられる。4月30日までの「平成」に実現する改革も「ゼロ」となる可能性が高い。

なぜ、小泉改革は進まないのか。まず国会改革は、与野党の合意が難しいテーマであるということだ。

■「無駄」に守られる野党は大反対

国会改革は、突き詰めていえば、無駄の解消。空洞化している国会の慣習を見直して効率化させようという発想だ。総論では皆賛成だろう。ただし国会の場合「無駄とみえるところに民主主義が宿っていることがある」(立憲民主党幹部)という見方もあることを忘れてはならない。

国会は、最終的に多数決で結論を出す場だが、それだけでは数で優位に立つ与党の意見が常に採用され、少数意見は封殺されてしまう。少数意見が多数派に抵抗する策として、野党は投票の際の牛歩戦術や、演説を延々と続けるフィリバスターと呼ばれる戦術を使う。効率という観点でみると完全な「無駄」だが、これは野党に与えられた数少ない合法的な抵抗手段なのだ。「衆議院のIT化」といえば聞こえはいいが、IT化によって「無駄」がなくなれば野党はますます弱体化しかねない。

特に今は、「安倍1強」のもとで自民党の強引な国会運営が問題視されている。その時期の国会改革に、野党側は慎重にならざるを得ない。

■「妊娠議員の代理投票」は憲法違反の疑いもある

憲法・法律上の問題もある。妊娠中の女性議員の代理投票を例にとってみよう。これも総論では賛成する人が多いだろうが、憲法問題が待ち構える。国会の定足数、採決を定めた憲法56条は

両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

とされている。同条では採決は「出席議員の過半数でこれを決し」とある。条文を厳格に読めば「出席議員」しか投票できず、代理投票は認められないとなる。

この条文は妊娠議員の代理投票を想定していないだけで、全否定しているものではないだろう。憲法が制定されて70年以上たち、電子投票やテレビ会議も常識となった今、何らかの方法を整備して憲法問題をクリアする道は残されている。

ただ、憲法問題をクリアしても、今度は「なぜ妊娠女性だけ許されるのか」という議論も起きてくる。国会議員には病気で入院中の議員もいる。国際会議出席中で本会議に加われない閣僚もいる。彼らにまで門戸を広げてしまうと、それこそ憲法56条は形骸化してしまう。簡単そうにみえるが、平成のうちに結論が出せる問題ではない。

■小泉人気便乗で「自爆」した高市早苗氏

「小泉国会改革」が進まない最大の理由は、小泉氏本人の存在かもしれない。小泉氏は常に注目を集める存在だ。移動する時も常に「番記者」に囲まれている。彼が取り組んでいるからこそ国会改革が注目されているといえる。その功績は大きいが、それ故、便乗しようという勢力もあり、嫉妬も渦巻く。

臨時国会冒頭、10月25日、衆院議院運営委員長の高市早苗氏は小泉氏の表敬を受けた際、(1)ペーパーレス化の一層の促進、(2)法案審議の方法を改善、(3)衆院本会議場への「押しボタン方式」の導入――を検討する考えを示した。

小泉人気に便乗して目立とうとした高市氏のスタンドプレーと受け止められ、野党だけでなく与党からも批判が出た。このあたりの経緯は「国会大混乱の自爆テロ『高市私案』の中身」を参照されたい。

ちなみに高市氏は、「ペーパーレス化」を最優先に考えていて、妊娠女性議員の代理投票問題はあまり強いこだわりを持っていない。改革を進めようとしている議員の中でも優先順位の違いがあるのも議論が集約されない一因となっている。

■野党と共闘する姿が面白くない議員も多い

小泉氏が超党派で活動しているのもハレーションを起こしている。小泉氏と行動をともにする野党議員は、選挙区で自民党議員と闘っている。野党議員が地元で小泉氏とのパイプをアピールする姿を見れば、対立候補の自民党議員は面白くない。そういう自民党議員は、「国会改革に反対」という立場に動いていってしまう。だから自民党内が一枚岩にならない。

小泉氏は、会合の冒頭の写真撮影では、できるだけ野党議員と一緒に写らないよう心掛けているという。自民党の不利にならないよう配慮しているのだが、党内に怨嗟(えんさ)の声が広がっていることを自覚しているのだろう。

人気があるから注目される。それゆえハレーションも起きる。有名税と言ってしまえばそれまでだが、小泉国会改革は「小泉氏がどこまで目立つか」という壁に直面している。

小泉氏は14日、日本記者クラブで行った記者会見では「来年の通常国会がラストチャンス」と気炎を上げた。引き続き議論をリードしつづける考えで、一歩引き下がる気はないようだ。それが吉と出るか凶と出るか。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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