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坂本龍馬が「多くの人」を惹きつける理由

プレジデントオンライン / 2019年3月6日 15時15分

坂本龍馬は没後150年以上経った今でも、多くの人を惹きつけている。(amanaimages=写真)

■坂本龍馬に学ぶ人気者の条件

2018年は明治維新150年である。

日本の近代化のきっかけとなったこの歴史上の大事件。今ふたたび、日本はグローバル化や人工知能に象徴されるイノベーションの波で激動の時を迎えている。明治維新の意義についてふりかえってみることは大切なことだろう。

日本を江戸時代から近代に導いた立役者は多いが、なかでも坂本龍馬は特筆すべき役割を担った。とりわけ、日本初の国際的な商社である「海援隊」(「亀山社中」)を創始して、政治の動きと経済を結びつけたこと、そしてともすれば対立しがちだった薩摩、長州の両藩を結ぶ「薩長同盟」を実現したことは大きい。

坂本龍馬のこの偉業の背景はさまざまある。その中で、何よりも大切で、また今日を生きる私たちにも参考になるのは、坂本龍馬がとても「人気」があったことではないか。

人気とは不思議なものである。正論を言っているのはわかるのだが、なぜか聞く人の心を動かさない人がいる。あるいは、頭脳明晰であることはわかっていても、周りに誰も寄り付かない人もいる。

何かを始めたおろか者がリーダーになるのは、フォロワーが集まるからだという趣旨のTEDトークがある。坂本龍馬は、確かに幕末のリーダーの1人だったが、その原動力は、彼の人気にあった。

人気は、激動の時代にこそ大きな意味を持つ。薩摩、長州という「組織」の枠を超えて人を結びつけるためには、権限や上意下達といった論理を超えた人間力がなければならない。それを支えるのが人気である。

また、この人のためならば協力する、がんばって動くという気持ちにさせるのも、人気である。その人の言葉なら聞いてみよう、耳を傾けてみようと思わせるのも人気である。今日の言葉で言えば、坂本龍馬は「インフルエンサー」だったのだ。

今日、人気についてはさまざまな研究がなされているが、そのデータが明らかにしたことの1つは、人気がある人は「他人の心がわかる」ということである。

他人の心を読み取る能力を「心の理論」という。脳の中では、前頭葉にある「ミラーニューロン」(鏡のように他人と自分を映し合う神経細胞)などによって支えられている。

他人がどのように思っているか、どう感じているかを読み取る能力がある人のほうが人気がある。自分勝手だったり、他人の気持ちをくみ取らないような人は人気がない。

坂本龍馬には、維新の大望があった。しかし、それがために他人を利用するといった冷たい人ではなかった。他人の気持ちを感じられる思いやりの精神があったからこそ、人気があったのである。

他人と自分の間の共感力も、人気の原動力となる。

坂本龍馬は、いろいろと弱点のある人だった。自分のダメなところを、隠さず見せた。だからこそ、他の人は共感して、ついて行こうと思った。坂本龍馬自身も、暗殺するつもりで訪れた勝海舟に感銘を受けて、その場で弟子入りを申し込むという共感力を見せた。

他人に対する思いやりや、共感力、そしてもちろん明確なヴィジョンと志。坂本龍馬は人気があったからこそ、歴史に大きな足跡を残せたのだ。

仕事をするうえで大切なものはいろいろあるが、「人気」もまた重要な資源の1つ。知識やスキルだけでなく、人間関係を育む大切さを坂本龍馬が教えてくれる。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=amanaimages)

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