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結集より「泥仕合」を選ぶ野党のお粗末さ

プレジデントオンライン / 2019年1月28日 15時15分

2019年1月24日、会談を終えた自由党の小沢一郎代表(左)と国民民主党の玉木雄一郎代表。(写真=時事通信フォト)

野党勢力が迷走している。今夏の参院選を控え、1月24日、国民民主党と自由党は統一会派を組むと発表した。これに対し野党第一党の立憲民主党は社民党と組むという。野党は結集よりも、分裂に向かっている。1月27日の山梨県知事選では、野党側の推す現職が、与党側の推す新人に敗れた。このまま“安倍1強”が続くのか――。

■「大きな野党結集の第一歩となることを期待」

何度同じ失敗を繰り返すのだろうか。

安倍1強を崩すには「野党結集」しか道がないことは分かっているのに、野党各党は逆方向に向かい始めている。“主役”となっているのは長い間政党の合従連衡の中心にいた自由党の小沢一郎代表。「平成の壊し屋」と言われたこの男は、平成が終わろうとする今も、壊し屋であり続けようとしている。

久しぶりにマスコミのフラッシュを一身に浴びた。1月24日午前、小沢氏は国民民主党の玉木雄一郎代表との党首会談で両党が統一会派を組むことを決めた後、共同記者発表に臨んだ。

玉木氏「野党の大きな塊をつくり、自民党に代わる選択肢を国民に示していくのがわれわれ野党の大きな役割だ。通常国会の開会を控えていることを踏まえ、両党で統一会派を結成することにまず合意した」

小沢氏「野党の結集、大同団結を図っていくのを最終の目標にする。われわれの合意がそうした大きな野党結集の第一歩となることを期待し、そこにつなげていきたい」

28日から通常国会が始まるのを前に、国民民主党と自由党は統一会派結成をつくることになった。統一会派を組むとは、国会で共闘するということだ。将来、合併も視野に入れる。

■ところが現実には「2対2」への分断だった

小沢氏らの話を聞いて、野党結集を図るための一歩と受け止めた人もいるだろう。しかし現実は違う。逆だ。

「野党結集」の定義はあいまいだ。一般には枝野幸男代表率いる立憲民主党、国民民主党、自由党、そして又市征治氏が党首を務める社民党の4党がスクラムを組み、共産党も同一歩調を取る、というのが一般的な「野党結集」のイメージだろう。

今回の「国民、自由」統一会派は、4党のうち2つが先行的にくっついた形になる。4党結集を図っていた立憲民主党や社民党は面白いはずはない。立憲民主、社民の2党は、国民民主、自由の両党に対抗するように参院で統一会派を組むことにした。4党の結集が叫ばれている時、2対2に割れたのだ。

■「分裂」「泥仕合」という言葉しか見当たらない

この「分断劇」をもう少し詳しく書いておきたい。自由党はこれまで、参院で社民党とともに「希望の会」という会派を組んできた。自由党所属が4人、社民党所属が2人の計6人で構成する小さな会派だ。その6人のうち4人の自由党所属議員が抜けて国民民主党と組み、残された2人の社民党議員が立憲民主党と組んだ。形状をみれば「分裂」「泥仕合」という言葉しか見当たらない。

衆院では立憲民主党が野党第1党だが、参院は国民民主党と張り合っている。今回の離合集散は参院での主導権を争う多数派工作だ。小沢氏が言うように「大きな野党結集の第一歩となる」とはとても思えない。実際、国会召集を前に野党の2つの勢力は参院の野党第1会派を激しく争っている。

ここで小沢氏の戦略を考えておきたい。彼が安倍自民党に代わる野党の塊をつくろうと考えていることは間違いない。そして、自分がその中核として政治的影響力を発揮しようと考えているのも間違いない。

小沢氏の手法は、いつも同じだ。国民的人気を呼びそうな「旬」の政治家に接近して、その人気に乗って選挙で勝ち、権力を得ようというもの。成功した時も失敗した時もあるが、秋波を受ける対象となったのは細川護熙氏、羽田孜氏、海部俊樹氏、渡辺美智雄氏、鳩山由紀夫氏、小池百合子東京都知事ら、数え上げたらきりがない。2017年の衆院選の後は枝野氏にご執心だった。

■枝野氏は理念なき「野合」には消極的

だが枝野氏は理念なき団結には消極的だ。与党側から「野合」と批判されるのを恐れているからだが「政策なんぞ、後からついてくる」が持論の小沢氏としてはもどかしい。もともと枝野氏は20数年の政治生活の大部分を「小沢氏批判の急先鋒」として生きていたという経緯もある。最近、2人の関係が微妙になってきた印象は否めない。

小沢氏はここで方向転換する。自由党は今のままでは所属議員数人の小政党にすぎない。それでは小沢氏といえども影響力を発揮するのは限定的だ。そこで一定の規模を持つ国民民主党とくっつき、立憲民主党と伍する数を得てから枝野氏を再度口説くという二段構えをとることにしたのだろう。

小沢氏は、この2段階論をとることがしばしばある。2017年の衆院選前には野党第1党の民進党と社民党で合併したうえで、「都民ファーストの会」を率い飛ぶ鳥を落とす勢いだった小池東京都知事と交渉することを考えていた。このあたりのことは当時書いた「老いた豪腕小沢氏が描く『小池総理』の夢 75歳が最後に狙う『2段階論』」を参照願いたい。

玉木氏は小沢氏が民主党幹事長として絶大な勢力を持っていた時の1回生。小沢氏にとってくみしやすい相手。国民民主党は支持率は1%程度に低迷してはいるが衆参あわせて60人近い議員数を持つ。

■インフルエンザの病床からツイートする枝野氏

小沢氏は、タイミングを見て枝野氏らと会談し、大同団結を迫る考えだ。しかし、今回の統一会派騒動を受けて両者の間にできた溝は大きい。

枝野氏は23日にインフルエンザでダウンしたが翌24日、病床からツイッターで「(立憲民主党が)検討しているのは政党間の合従連衡でなく、参議院で院内会派『希望の会(自由党と社民党による会派)』のメンバーが2人になってしまうことを踏まえ院内での活動を充実させる見地から『希望の会』に残る2名の方と参議院限定の院内会派を構成しようというものです」とつぶやいた。

立憲民主党が社民党の参院での統一会派は、自由党の4人が「希望の会」から離脱したことに伴い、社民党を救済するための手段であって、「仕掛けて」きたのは小沢氏だという意味だ。

一方、小沢氏は25日、記者団に「立憲が何で社民党と一緒になったの? 数合わせはだめだ。われわれは大きな目標を目指して頑張ろうということで衆参ともに統一会派で合意した。(参院の)片方だけというのは分かりません」と皮肉たっぷりに語った。

■現状を一番喜んでいるのは、野党を分断したい安倍首相

小沢氏は2003年、自由党党首時代に民主党との「民由合併」を主導し、6年後の政権奪取につなげた成功体験がある。今回の統一会派を小沢氏は「第2の民由合併」と自負しているかもしれない。

しかし、小沢氏には失敗体験もある。1994年、小沢氏らが中心となって非自民連立政権を構成していた時、連立与党内の一部だけで新会派「改新」を発足した。会派から外された社会党は怒って連立を離脱。結果として非自民連立政権は崩壊に向かった。

今回の推移はどちらかというと「1994年」の失敗に近いようにみえる。

小沢氏と枝野氏の2人が近い将来、共闘でがっちり握手する姿を想像するのは、今は難しい。そして、現状を一番喜んでいるのは、野党を分断して弱体化を図りたい安倍晋三首相率いる自民党であることは、言うまでもない。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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