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もはや「タバコ規制」は根拠を失った

プレジデントオンライン / 2019年1月31日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Bunyos)

■科学的根拠に基づいた公平・公正な議論をすべき

あれだけ止めておいたほうがいいと言っていたのに、タバコ撲滅を進めた東京都の小池百合子知事に続き、またもや感情論で、タバコ撲滅を目論む計画が、兵庫県が進んでいる。

兵庫県知事5選を果たした井戸敏三知事は、津波防災インフラ整備計画や山地防災・土砂災害対策計画を策定するなどのハード面、地域防災力の強化のため、地域での避難訓練への支援を行うなどのソフト面、ハードとソフトをともに充実させてきた十分な実績を持つ。築地でコケ、豊洲でコケた小池知事と違い、今さら人気取り政策に走る必要はない。

私はタバコを吸う。そして、タバコを嫌いな人が多数いることを承知している。

議論で意見が分かれたとき、私たちはどうすればいいのか、それは科学的根拠に基づいた公平・公正な議論をすべきなのである。

どこぞの隣国のように、徴用工問題でも、レーダー照射問題でも、理屈抜きに「日本憎し」を掲げていればいいという国では、残念ながら日本はない。感情論だけで「タバコはダメ」というのであれば、将来に必ず禍根を残す。

タバコが嫌いな人にいくら理屈を説いても、「でもやっぱりタバコはあかんよ」で終わってしまうようなことが、日本ではこれまでずっと起きてきた。そういう光景を見ていると、日本人は果たして隣国のふざけた振る舞いを笑えるのか。ほんとうに心配になってしまう。

■飲酒による社会的損失は4兆円以上、タバコは半分の2兆円

話は大きく2つに分かれている。

1つ目は、「タバコは絶対禁止」にするのであれば、タバコよりも社会的に損失を与え、健康被害が明確に確認されている「お酒」についても「絶対禁止」にする必要があるということだ。

英国のがん研究所は「がんに関しては安全な飲酒量などない」と断言している。口腔がん、咽頭がん、食道がん、乳がん、肝臓がん、大腸がんは、アルコールとの関係が指摘されている。飲酒による事故やDVなどの社会的損失は、厚生労働省研究班の調査によると4兆円以上で、タバコは半分の2兆円だ。タバコが子どもにとって危ないという以上に、酔った人物による幼児虐待、暴力事件は後を絶たない。そういったお酒の被害者の声に耳を傾けずに、タバコだけはダメ、ということにはならない。

■夫の安否だけを考えていた自分の愚かさを恥じた

これは沖縄県警のHPに記された飲酒加害家族の手記だ。

『夫の飲酒運転事故は私や子どもの人生に大きく影響をもたらしました。酔いつぶれて帰ってきた翌朝、車があることにしばしばびっくりしながらも、運転できるぐらいの量だったんだと安堵していた日々。夫の酒がひどくなった頃、毎日のように繰り返す飲酒運転のことで、喧嘩は絶えませんでした。救急車のサイレンが深夜に鳴り響くと夫が事故で怪我したのでは……と、真っ先にそのことを思い、その次によぎることが他人に怪我をさせたのでは……と帰ってくるまで不安で眠れないことも度々でした。

一番避けたかった出来事が現実になった日。事故現場で、酒が残ったしまりのない顔でたたずんでいる夫の惨めな姿に、ついに起こってしまったという怒りと情けなさでいっぱいでした。命に問題はないと聞かされ安心したものの、愚かな行為の結末を受け止めるにはあまりにも残酷な結果でした。

救急室で被害者の姿を目の当たりにした私は平常心を失い、我を忘れ被害者の横たわるベッドの脇で、青白く冷たくなった足を必死にさすりながら「ごめんなさい……ごめんなさい……」と恐怖でいっぱいになり泣きながら言い続けていました。これまで、飲酒運転で怪我をしたら困ると、夫の安否だけを考えていた自分の愚かさを恥じ、見ず知らずの人に一生消えることのない傷を負わせたことへの罪悪感を持ち続けて生きる辛さを知りました。そして飲酒運転の代償の重さを……家族が受ける地獄のような生活の始まりでもありました。

夫は事故後、ショックで更に飲酒量が増え、1か月も経たない内に精神病院でアルコール依存症と診断されました。事故の後始末や夫がやるべき問題を私が解決に奔走するようになった頃、目の前のあらゆることが自分の責任となってのしかかり、被害者に対して「もっと何かしなければ……」と負い目を感じ、要求されるままに見舞金をかき集め支払いました。被害者が苦しい入院生活を送っていると思うと「幸せになってはいけない」という罪を自分に課していったのです』

■酒場でのセクハラやパワハラは日常茶飯事ではないか

タバコを禁止するなら、他のものも禁止しないと公平・公正な態度とは言えないのである。私はほとんどお酒を飲まないが、酒場でのセクハラやパワハラは日常茶飯事ではないだろうか。

年間何千人もの人が交通事故で死ぬ、クルマだって、タバコ以上に危険な代物だ。クルマの排気ガスだって危ない。なんでもかんでも禁止にするのはいいが、そんな息苦しい社会にしたいと、タバコ撲滅論者は考えているのだろうか。不思議でならない。多様性を認める寛容な社会を目指すか、何でも禁止の社会を目指すのか。精神を落ち着かせる効果を持つ喫煙と感情的になりがちな飲酒。タバコだけ禁止という根拠をぜひお示しいただきたいものだ。

2つ目は、兵庫県で、今、起きていることだ。

前述したが、私は兵庫県知事の井戸氏の行政手腕を高く評価している人間の一人だ。だからこそ、今起きていることが少し心配だ。配下の役人がきちんとした情報を知事にいれているのだろうか。

兵庫県は、健康被害が未だ明らかになっていない、加熱式タバコについて、厚生労働省も認めている飲食が可能な「加熱式タバコの専用室」を認めないという。明らかな行き過ぎであろう。紙巻きのタバコと最新テクノロジーの恩恵を受けた加熱式タバコを一緒くたに議論して、条例改正後も同じ規制をしようとしているのだ。

■行政による陰湿な中小企業イジメでしかない

そのへんから、すでに私は頭が痛くなってくるのだが、この加熱式タバコを一緒くたにすることによって、飲食店では経営の選択肢が他県に比べて狭まる。国法であれば現在の喫煙エリアを加熱式タバコ専用室として使用可能であるところ、兵庫県ではこれができず、場合によっては、これまでの投資が無駄になってしまうこともあるだろう。

これによって最も影響を被るのは、中小の事業者に他ならない。結局、その影響に耐えられない中小飲食店だけが競争から脱落していくことになる。せっかく準備を整えたのに、その努力をナシにするという条例なのである。行政による陰湿な中小企業イジメでしかない。

また、これは国の定めた基準からも大きく逸脱するものだ。兵庫県が国の定めた基準や科学的根拠を覆すファクトを、自ら調査して持っているのならそれで結構だが、兵庫県は何を根拠に突っ走っているのだろう。

この現代にあって、紙巻きと加熱式タバコを一緒だと考える国民はどれぐらいいるのだろう。臭いもほとんどなく、私は排気ガスや香水の匂いのほうが気になってしまう。吸っていても、全然パンチ力がないので、私には吸った気がしないぐらいだ。ましてや、健康被害が明らかでないのだ。これを禁止しようなどと考えるのは、ただの感情論ではないか。

■「健康被害の恐れがない」との証明などできるはずがない

兵庫県は「現時点で健康被害の恐れがないとの証明がなされていない」という。しかし、これは「悪魔の証明」と呼ばれるものである。「健康被害の恐れがない」との証明などできるはずがない。そんなことを言うなら、兵庫県庁の職員よ、身の回りにあるもので、健康被害の恐れがないことを証明してみてほしい。大根でもきゅうりでもいいのだ。健康被害の恐れがないことなど証明できようはずがない。

ちなみにでいうが、白米だって、牛肉だって、健康被害の証明はされている。

・白米には、糖尿病のリスクと正の相関関係がある。つまり、糖尿病になる危険が増す。
・加工肉の摂取量が1日あたり50グラム増えると脳卒中のリスクが13%増加する。赤い肉の場合は、1日あたり100~120グラム増えるごとに脳卒中のリスクが11%上がる。
(津川大介著『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』より)

兵庫県は、健康被害が明らかになっている白米やソーセージを禁止しようというのだろうか。そうではないだろう。きちんと加熱式タバコの調査もせずに、感情論で先走るのは止めたほうがよい。

東京都の小池百合子知事は典型例だが、人気取りに走ろうとなると、結局、感情論優先で、敵をつくってタバコを規制しようとする。

兵庫県のインバウンドは、京都府(743万人)や大阪府(1110万人)と比べて、158万人と、あまり盛り上がっていない。加熱式タバコが禁止されたから、兵庫県は、海外の旅行者にとって魅力が上がるのだろうか。そうではないだろう。完全なる分煙を進めるのが、兵庫の魅力を高める施策だと思う。

ぜひ東京・銀座のカフェに行ってみてほしい。喫煙席は外国人観光客でギューギューの満員なのである。

(内閣参与(特命担当) 飯島 勲 写真=iStock.com)

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