公務員夫婦"離婚後も経済的に最強"の理由
プレジデントオンライン / 2019年2月10日 11時15分
※本稿は、「プレジデント」(2018年11月12日号)の掲載記事を再編集したものです
■被害を最小限に抑える方法
離婚で発生する夫婦間のお金のやりとりは、養育費、慰謝料、年金分割、財産分与の4種類。熟年であれば、子どもはすでに独立しているケースが多いので養育費は関係ありません。慰謝料が認められるケースもほとんどありません。DV(家庭内暴力)や不貞があれば慰謝料を請求できますが、最大でも300万円程度です。
一方で年金分割は、確実に発生します。妻が専業主婦やパート勤務で厚生年金に加入したことがなくても、厚生年金の受給額を夫婦間で同じに分けるのが基本です。夫の厚生年金部分の2分の1を妻に分割することになります。
財産分与も夫婦で築いた共有財産を2分の1に分けることが基本です。「マイホームは俺の名義だから」と安心している夫がいるかもしれませんが、それは通用しません。妻が専業主婦で収入がないために、夫一人の名義にしていたとしても、住宅ローンは夫婦で協力して返済したと見なされます。金融資産も同様。夫名義のものと、妻名義のものを洗いざらい財産分与のテーブルに載せて、2分の1になるよう分割します。夫は自分名義の資産が多いほど、妻に分与する資産が増えるのです。
逆に財産分与を妻から受けられることが多いのは、妻が正社員の場合。給与に男女格差のない公務員夫婦は特に可能性が高くなります。家計に余裕があり、貯蓄せずに趣味に没頭する夫が少なくない。一方、公務員妻はしっかり者の場合が多く、老後に向けてコツコツ資産形成をしており、ふたを開けてみると妻の資産のほうが圧倒的に多いことさえあります。
注意が必要なのは、結婚前の資産。基本は財産分与の対象外ですが、「結婚後もそのまま生活に使っている」と見なされると分与が必要になります。たとえば、独身時代から利用していた給与振込口座をそのまま利用している場合、口座の資産は共有財産と見なされる可能性が高いでしょう。財産分与の観点からは、結婚するときには口座を新しくして、独身時代の蓄えは分離しておくべきです。
財産分与を少なくしたいなら、離婚を早めに決着させること。協議離婚でまとまらなければ調停離婚→裁判離婚と進みますが、裁判ではもちろん、調停でも2分の1ルールが基本となる可能性が高いのです。協議離婚の段階であれば互いの話し合いで決着できるので、妻が納得すれば2分の1ルールに縛られる必要はありません。
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弁護士
丸の内ソレイユ法律事務所代表。東北大学法学部卒業。南カリフォルニア大学ロースクール修了。2009年に同事務所を開設、年間300件以上の離婚相談を受ける。法政大学大学院環境マネジメント科兼任講師。
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(丸の内ソレイユ法律事務所代表 中里 妃沙子 構成=向山 勇 写真=iStock.com)
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