"自分の葬式"を想像すると生き方が変わる
プレジデントオンライン / 2019年2月15日 9時15分
■自分の葬式の出席者を想像する
『7つの習慣』と出合ったのは22歳のころです。私は日本で2年間、ボランティアで宣教師をしたあと、アメリカに戻って大学に復学。将来についてはまだ何も決まっていなくて、これからの生活をどうしようかと考えているタイミングでした。英語版は1989年が初版です。じつは私の母は本が出る前から「7つの習慣」セミナーに出席していました。その点にも背中を押され、いまの自分に合う情報が書いてあるのではないかと手に取りました。
一読して印象に残ったのは、第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」のミッション・ステートメントのつくり方。自分のお葬式を想像して、参列者の記憶にどのように残りたいのかを考えようというアドバイスが載っていました。自分の生き方は自分で変えることができる。そう気づいて、勇気をもらえたような気がしました。
また同時に、目指すべき目標もできました。著者のスティーブン・R・コヴィー博士は、研修を行うコヴィー・リーダーシップセンターと、プランナー(手帳)を提供するフランクリン・クエストという会社をつくっていました。私はもともと人の役に立つ商品をつくる会社で働きたいと考えていたので、『7つの習慣』を読んで、この2つの会社で働くことが目標になりました。
■最悪のタイミングで社長に就任
2つの会社はのちに合併してフランクリン・コヴィーになります。私はアメリカでも日本でもフランクリン・コヴィーの採用試験を受けましたが、それでもなかなか採用してもらえませんでした。そして2008年にようやく入社がかないました。しかも、いきなり社長としての採用です(笑)。途中で諦めなかったのは、人の役に立つ仕事をしたいという決心が揺るがなかったから。これも『7つの習慣』のおかげです。
念願かなってフランクリン・コヴィー・ジャパンの社長になりましたが、じつは社長に就任したのは最悪のタイミングでした。リーマンショック直後で企業が研修費をカットし始め、その影響を直接受けたのです。でも、どんなときもリーダーシップの基本は同じです。例えば、「green and clean」という考え方。
コヴィー博士は、小学生の息子に芝生の生えた庭の片づけを頼む際、やり方を細かく説明することなく、隣の家のきれいな庭を示して、「この庭のようにgreen and cleanにしてほしい。やり方は自由」といって任せたそうです。経験の足りない人には細かく指導することも必要ですが、基本的には本人の主体性に任せたほうがうまくいくと考えています。
お客様との関係では、第4の習慣「Win-Winを考える」、第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」を大事にしました。つまりお客様にとってのWinは何かをまず理解することを、社員たちには徹底してもらったのです。
■お客様より社員を大事にする
それができているかどうかは、毎週金曜日の5時にミーティングを開いて確認します。各チームに進捗状況を発表してもらって、誰かが成功していたらみんなで褒めます。そのミーティングの後は寿司パーティーを楽しむ。毎週お寿司では飽きるので、チキンやピザのときもあります。いずれにしてもこれを繰り返すうちに『7つの習慣』の考え方やメソッドが社内にも浸透していきました。
その結果、08年から3年連続で売り上げがダウンしていた流れを、11年に反転させることができました。同年は東日本大震災の影響を受けましたが、上昇のモメンタムにあったのでダメージは最小限で済みました。
震災といえば、その対応でもコヴィー博士の教えが役に立ちました。その日、私はオフィスで社員とミーティングをしていました。地震が収まると、安全を確認して社員を即座に帰し、その後はかろうじて使用できたEメールなどを使い、社員一人ひとりの安否確認に一晩中費やしました。なかには自分の家に帰れず、他の社員の家に泊まったという人もいました。
この対応ができたのは、コヴィー博士が「お客様より社員を大事に」と言っていたからです。もちろんお客様は大事です。しかし、社員はお客様のケアをするから、社員を大事にすることはお客様を大事にすることにもつながります。だから震災時も何よりまず社員の安否が大切でした。そのせいか、震災後はみんなの絆が強くなった気がします。
■「毎日52ページ」本や雑誌を読む
先日は大学生のインターンに、ある発表をしてもらいました。社員はそれぞれ改善のアイデアを持っています。インターンには社員にインタビューしてアイデアを集めるという仕事を与え、その成果をプレゼンテーションしてもらったのです。
これは第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」、第6の習慣「シナジーを創り出す」の実践です。つまり社員同士の理解を深めて、改善のアイデアを共有して、シナジーを生むのです。こういった取り組みをしながら、仕事の進め方はつねに見直しています。
私自身の読書習慣についてもお話ししましょう。私は97年から、本や雑誌を毎日50ページ読むことを自分に課しています。そのきっかけは、MBAでの授業にあります。そこで感じたのは、他の学生に比べて自分が優秀ではないということです。しかし、一方で自分の人生は自分で変えられるという思いもありました。劣っている現状を受け入れて勉強を毎日続ければ、いつかは追いついて自分も成功できるはず。そう考えて読書のノルマを設定したのです。
当初は1日50ページでしたが、3年前から52ページに。上乗せした2ページは、日本語の本です。この習慣を始めてからつけている記録によると21年間で、1739冊、40万2428ページを読了しました。読書のためのまとまった時間はなかなか取れませんが、10~15分の隙間時間を使ったり、車での通勤中にオーディオブックを聞いたりしています。聞くのは読書じゃないという人がいるかもしれませんが、大切なのは何を学ぶか。堅苦しく考えずテクノロジーの助けを借りるのも、読書を長く続けるコツです。
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フランクリン・コヴィー・ジャパン 代表取締役社長
1968年、米国ネバダ州ラスベガス出身。94年、ブリガム・ヤング大学で日本語学学士号取得後、日系IT企業に入社。98年、同大学でMBA(経営学修士)を取得。2008年6月より現職。
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(フランクリン・コヴィー・ジャパン 代表取締役社長 ブライアン・マーティーニ 構成=村上 敬 撮影=村上庄吾)
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