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仕事場での“女の涙”はすべてを狂わせる

プレジデントオンライン / 2019年2月8日 6時15分

映画『メリー・ポピンズ リターンズ』(公開中)の完全日本語吹替版でメリー・ポピンズの声を演じる平原綾香さんとマイケル・バンクス役の谷原章介さん。ディズニーの名作映画のリメイクに初めて挑戦した二人が思い描く、一流のキャリア女性像について話し合ってもらった。デビュー15周年を迎えた平原さんは「仕事をしていくと、どんどん“男”になっていく」という。その意味するところとは――。

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平原綾香(ひらはら・あやか)
2003年に「Jupiter」でCDデビュー。2004年の日本レコード大賞新人賞などを獲得。実力派のヴォーカリストとして活動しつつ、舞台にも活躍の場を広げる。2018年はミュージカル『メリー・ポピンズ』に主演した。

谷原章介(たにはら・しょうすけ)
1995年より俳優として活動。映画『天使の恋』『マーマレード・ボーイ』、ドラマ「ハンサム★スーツ」「半分、青い。」など出演多数。TV番組「パネルクイズ アタック25」、「うたコン」の司会としても活躍中

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■芯が強く、凛とした、ただ者ではない女性

――約20年ぶりにバンクス家に現われ、マイケルの子供たちの教育係となるメリー・ポピンズ。彼女は魔法使いであり、かつての教え子でもあるマイケルをも叱咤激励します。そんなメリー・ポピンズをどんな女性だと思いましたか?

【谷原】映画の舞台がかなり前で、1930年代の世界恐慌の時代なんですよね。メリー・ポピンズは昔の女性ではあるけれど、現代に通じるイメージがあります。独立していて、芯の強さを持った現代的な人だなと……。

【平原】彼女には様々な側面があって、少女のような時もあれば、母親のような母性もあるし、父親のような力強さも持っています。いろいろと昔のことにも詳しくて、おばあちゃんのような知識を持つ人でもあります。やはりただ者ではない感じがしますね(笑)。

【谷原】平原さんがおっしゃったように、多面的な要素を持っているのかな。彼女は“ツンデレ”でもありますよね。普段はツンとしているけれど、たまに見せる心優しい面にハートをつかまれてしまう(笑)。かつてジュリー・アンドリュースが作り上げたメリー・ポピンズ像は、とてもかわいらしくてチャーミングなのですが、今回、エミリー・ブラントさんが演じたメリー・ポピンズは凛とした美しさの中にコケティッシュな魅力があると思います。

■2人とも、オーディションで役を獲得

――今回、ディズニーの世界各国の吹替版の声優監修の総指揮を執るリック・デンプシー氏が収録に立ち会い、彼から直接、演出指導を受けたそうですが、どんなふうにコミュニケーションを取りましたか?

【平原】私はオーディションでメリー・ポピンズ役に決まったんですが、顔の骨格も判断材料だったそうなんです。骨格が声を左右するということで、顎を見られていたんだなと思うとちょっと面白かったですね(笑)。リックさんは大物プロデューサーですが、すごく気さくな方で、「自分じゃない人の声に合わせて歌うのは、とても大変かもしれないけれど、君なりのメリー・ポピンズでいいんだよ」とおっしゃってくださいました。私がミュージカルの舞台でポピンズ役をやっていたことも知っていらしたので、「これがメリー・ポピンズらしいというアイデアがあったら、そのままやっていいからね」と言ってくださいました。

【谷原】僕もオーディションを受けました。リックさんは「この映画は家族愛に満ちあふれているから、大好きなんだよ」と、映画への思いをたくさん語ってくださったのが印象的でしたね。僕の場合は、細かい演出は日本版の演出監督からしていただいたので、リックさんが演出監督の立場を立ててくださったのだと思いました。

【平原】エミリーさんの歌を日本語に吹き替えていく時、エミリーさんはそんな歌い方をしていないのに「ここはもっとコブシを入れてくれ」と言われたりしました。「これは日本版だから、日本独自のメリー・ポピンズでいいんだ。エミリーとは違う歌い方をしてみよう」という指示が印象的で、リックさんの熱意を感じましたね。

■相手が大物でも、初対面でも臆さず提案

――今回のお二人のように、初めて会う外国の人と円滑に仕事をするためには、どのようにしたらいいでしょうか?

【谷原】やはりまず、相手との壁を作らないように、気持ちをオープンにして接することじゃないでしょうか。

【平原】私も言葉の違いは関係ないと思いました。英語を話せても話せなくても、自分が相手に何を伝えたいかが大事だと思います。「私は英語を話せないから、外国の人と会話できない」と頑なになるのではなく、「じゃあ、もしも英語ができるなら、自分は何を話すだろうか」と考えてみて、「特に今、話したいことはないな」と思うのであれば、無理に会話する必要はないんです。やはり、自分の中にハングリー精神というか、「こういうことを伝えたい」というものがあるかないかで変わってくると思います。

【谷原】そうですね。あくまで人間対人間のコミュニケーションですから。

【平原】日本語でも英語でも言語は大切なので、誇りを持って歌えば、英語圏の人も必ず応えてくれます。実は「幸せのありか」というエンドソングではノイズ(演奏の雑音)を見つけて、取り除けないでしょうかとリックさんにメールしたんです。すると、すぐに動いてくださいました。とても忙しい方なのに、絶対に邪険に扱わない。私のことをちゃんとアーティストとして見てくださっているのが伝わってきました。そんなふうに初めて一緒に仕事をする相手でも臆せず、伝えたいことを言うことが大切だと思います。

■第一線で活躍する女性は絶対に泣かない

――メリー・ポピンズはひとりの職業人として自分の使命を貫きます。同じように現実社会でキャリアを積んでいこうとする女性たちへアドバイスをお願いします。

【谷原】働く女性が置かれている環境はなかなか大変ですよね。男性と同じ仕事を求められる場合もあるけれど、男性のように体調がずっと一定ではないですし、男性と同じ筋力があるわけでもない。だから、そこで無理して張り合ってしまうと、結局、男性にとっても女性にとっても得がない気がするんです。女性だからこそできることを見つけると、より活躍できるのではないでしょうか。もちろん、僕ら男性側も、男性ができることと女性ができることの違いをちゃんと分かった上で、良い関係性を築けるように気を配る必要があると思っています。

【平原】むしろ私の方が働く女性としてアドバイスを聞きたいぐらい(笑)。私は19歳の時にデビューし、去年15周年を迎えたんですが、やっぱり音楽界の中で生きていくのはすごく大変なことで、仕事をしていくと、どんどん“男”になっていくんです。

【谷原】それは意外(笑)。性別を超えた人間としての部分が大きくなるということですか?

【平原】そうかもしれないですね。例えば、私が憧れているオノ・ヨーコさんは「オノ・ヨーコ」という存在だと思うんです。マイケル・ジャクソンもそうです。私もそういう存在になっていけたらいいなと、最近思うんですね。もちろん、それには女性としての品格といったものがなければいけないとは思うんですけど……。

仕事を続けていくには「なぜ夢をかなえようと頑張っているのか」ということを忘れなければ大丈夫だと思います。私の場合は家族を幸せにしたいから頑張っていますが、家族じゃなくても、大好きな彼でもワンちゃんでも、何か自分の“家”みたいなものをひとつ持つことで頑張れる。あと、泣かないことですね。女性の涙は全てを狂わせます(笑)。女性が涙してしまう場合も「泣いたらなんとかなる」と思っているわけではないけれど、やっぱり第一線で活躍されている女性は絶対に泣きませんから、それが夢をかなえる第一歩だと思っています。そう考えると、毅然としたメリー・ポピンズの生き方にもつながってきますね。

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.
映画『メリー・ポピンズ リターンズ』
公開中
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

 1964年公開の名作『メリー・ポピンズ』をリメイクしたミュージカル映画。エミリー・ブラント演じる魔法使いのメリー・ポピンズが、母を亡くした悲しみから抜け出せずにいる子供たちの教育係となり、一家の危機を救う。オリジナル・ソング『The Place Where lost Things Go』(「幸せのありか」)がアカデミー賞歌曲賞にノミネートされている。

(清水 久美子 構成=小田慶子)

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