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前年比1.5倍「セブンの冷凍食品」の実力

プレジデントオンライン / 2019年2月15日 9時15分

売り場のほぼ一列を陣取ったセブンのアイスケース。品ぞろえの多さに足をとめる客が多い(撮影=吉岡秀子)

コンビニ各社が冷凍食品に力を入れはじめた。最大手のセブン-イレブンは、冷凍食品の販売面積を広げた店舗を増やしている。新型店舗での売り上げは前年比150%増だ。そのポイントは「スーパーにはない独自商品」。大手3社に取材した――。

■冷凍ケースが3台もあるセブン店舗

パック惣菜、サラダ、スープにスイーツ……コンビニの品ぞろえが変わってきたと感じる読者は多いだろう。なかでも、今ホットな売り場は冷凍ケースだ。コンビニ発の冷凍食品が軒並み売り上げを伸ばしている。現場を探った。

平日の午前11時。東京都足立区の住宅街にあるセブン‐イレブン(以下セブン)の前には、来店客のものだろう数台のママチャリがとまっていた。

中へ入ると主婦や高齢の男性などが買い物カゴを手に、売り場を回っている。客が何度も視線を注いでいたのが、店内でかなりの面積を取っている3台の冷凍ケースだ。

「平台」と呼ばれる冷凍ケースの中には文字通り、アイスクリームが並んでいるのが一般的だ。だが、その大きなケースが3台もあるのは非常に珍しい。

中をのぞいてみると、冷凍のパスタやラーメンといった麺類から、たこ焼き、お好み焼きなどの軽食、焼き肉や焼きとりなどのおかずまで充実したラインナップがずらり。

「2年前から新店を中心に、中食を強化する新レイアウト店に切り替えています。昨年末からは既存店も、そのコンセプトを踏襲して平台型の冷凍ケースを増設し、中食の主力商品である冷凍食品の品ぞろえを充実させているんです」(セブン広報 戸田雄希さん)

冷凍ケースをドーンと増設した既存店は2月末には全国700店まで広がる予定で、今後も拡充していくそうだ。

■セブンが冷凍食品に注力している

“コンビニ=中食が多い”イメージは定着しつつあるが、長年「スーパーの値引き商品」というポジションだった冷凍食品の開発にセブンがこれほど注力していることは、あまり知られていない。昔、コンビニの冷凍売り場にあるモノといえば、鍋焼きうどんやロックアイスくらいだったのだから。

セブン商品本部の冷凍食品担当・阪上かおるさんに話を聞くと、「10年以上前から100円シリーズなどPB(プライベートブランド)の冷凍食品を作ってきましたが、冷凍食品を『食卓惣菜』と位置づけて開発を強化させたのは13年ごろから」だという。

11年に起きた東日本大震災のあと、コンビニを利用する女性やシニア客が増えたタイミングだ。「その場で食べる」に加え「家に持ち帰ってストックしたい」というニーズの高まりに応えて、冷凍食品にスポットライトを当てた。

■“コンビニっぽいオリジナル”を創造

おかずにもおつまみにも良い「おかづまみ」シリーズ。そのまま食卓へ出せる(撮影=吉岡秀子)

興味深いのは、阪上さんら開発者が単に品目を増やしただけでなく、かつてない“コンビニっぽいオリジナル”の創造に奮起したことだ。

冷凍ケースを見渡すと気づく。そのまま食卓に出せる平皿容器の「牛プルコギ」や「手羽中から揚げ」といったおつまみ群、レンジアップしてそのまま食べられる縦型容器のピラフなど、スーパーでは見かけないレアなメニューが存在感を放っている。

「冷凍食品の売り上げトップ3は、主婦の方にも人気の高いギョーザ・たこ焼き・お好み焼き。これらは鉄板なんです。でもコンビニをご利用される若い方や単身男性のニーズを考えると、定番とは別の価値のある冷凍食品があってもいいのではないかと。そこで冷凍ケースの増設に合わせて有名ラーメン店・すみれのチャーハンや、食事のおかずにも、お酒のおつまみにもなる『おかづまみ』シリーズなど、ちょっと視点を変えたユニークな商品を出したところ、好評でした。これからもセブンならではの冷凍食品を考えたいです」(阪上さん)

■冷凍食品の売り上げは前年比150%に

取材に訪れた足立区のセブンの店長も「冷凍食品の品ぞろえを増やしたら、新商品だけでなく既存のたこ焼きなども一層売れ出した」という。理由を「売り場が目立つので、選びやすくなって手が出るのでは」と分析している。

「高齢の方は何度も買い物に出るのが大変なようで、冷凍食品をまとめ買いされる。また仕事帰りのサラリーマンは、おつまみ系の手羽先などとお酒を一緒に買われていくケースが多いです」(店長)

以前は60品目ほどだった冷凍食品を、約90品目に増やした。それによる効果は「まとめ買い・買い合わせ点数の増加」などで、はっきり出ているのだ。

もちろん、この店だけじゃない。新レイアウト店では、冷凍食品の売り上げ前年比は150%にもなっている。プチスーパーの代替になったともいえるコンビニで、おかずを買う、おつまみを買うというスタイルは今後も加速しそうだ。

■ローソンも売り場面積を拡大

売り場のレイアウトをガラッと変えるまでの改革には至っていないが、ローソンやファミリーマート(以下ファミマ)も冷凍食品の開発には力を入れている。

「既存店の冷凍食品の売り上げは年々伸びており、18年上期は前年比125%で推移しています」(ローソン広報 持丸憲さん)

PBの冷凍食品アイテム数は、約70種類。平台の冷凍ケースで陳列するのではなく、扉を開閉する冷凍リーチインケースに並んでいることが多い。

「新店や改装店では2枚扉を3枚扉にして、冷凍食品の売り場面積を広げています。この3枚扉パターンの店舗数は、現在約6000店で今後も増やしていく予定です」(持丸さん)

「ナチュラルローソン彩り野菜と熟成ベーコンのピッツァ」ヘルシー感を押し出した冷凍食品も増えている(写真提供=ローソン)

近所のローソンを見てみると、確かに野菜などの素材系の冷凍食品から麺類、米飯ものまで、品目数が増えていた。

ローソンの冷凍食品の特徴は、健康に気遣う「ナチュラルローソン」ブランドもそろえていること。「野菜を食べるガパオライス」や「彩り野菜と熟成ベーコンのピッツァ」など、ナチュナルローソンブランドは7種類あるという。お弁当のおかずといったこれまでの冷凍食品のイメージを覆す新メニューの投入で、おしゃれさとヘルシー感に敏感な女性客に人気だというのもうなずける。

「冷凍食品の開発は、既存メニューをブラッシュアップしていくことが主ですが、単なるリニューアルではなく、容器の刷新も含めてより簡便性・利便性を追求します」(持丸さん)

具体的には蒸気口のついたものや、スタンディングパックなど、新たな冷凍食品のカタチを模索中だという。

■40~50代女性の購入が多いファミマ

「もちっと食感の汁なし担々麺」もちっとした食感が女性に人気の担々麺(写真提供=ファミリーマート)

ファミマは味にうるさい40~50代の女性客を取り込みに成功している。

「地域や店舗によって差がありますが、冷凍食品の売り上げ前年比は110%で伸びています」(ファミマ広報 樋口雄士さん)

ファミマは近年、ドールブランドの冷凍フルーツなども出し、地域や店舗で差はあるものの約60品目の冷凍食品をそろえている。人気が高いのは惣菜シリーズとして売り出し中の「お母さん食堂」ブランドだという。

「『汁なし担々麺』や『極太つけ麺』など冷凍麺は味が評価されています。比較的、40~50代の女性の購入が多いのが特徴です」(樋口さん)

ミドルエイジの女性が手を伸ばすのは、たぶん「お母さん食堂」というネーミングに親近感を持つからだろう。

また、ひとりでラーメン店に入るのは気が引けるという女性は少なくない。ならばコンビニの冷凍麺を買ってみようという気になるのかもしれない。

ずっと地味な存在だった商品も、見せ方や新しい価値を創造すれば、主役になれる。満を持して放ったヒットに、今年は“コンビニ冷食元年”といっていいのではないだろうか。

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吉岡 秀子(よしおか・ひでこ)
コンビニ記者
関西大学社会学部卒業。会社員生活を経て、フリーランス記者として独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を各メディア、講演などを通じて発信中。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。

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(コンビニ記者 吉岡 秀子)

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