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北海道を東急電鉄の豪華列車が走る理由

プレジデントオンライン / 2019年2月27日 15時15分

美しいロイヤル急行をディーゼル車に牽引させていいのか。(東急電鉄=写真提供)

■JR北海道が、東急に土下座した日

経営難に陥っているJR北海道が、JR東日本、東急電鉄、JR貨物の協力のもと、道内で観光列車を走らせると発表した。観光振興、地域活性化、北海道胆振東部地震からの復興を目的とした走行プロジェクトである。

JR北海道といえば、2018年11月に発表した線区別収支(2017年度)によると、運行する全27線区が赤字の崖っぷち。16年に留萌本線の留萌~増毛間が廃止され、19年4月には石勝線の夕張支線がなくなるなど、今後も複数路線が営業の幕を閉じようとしている。

さらに輪をかけるように18年9月の台風21号、北海道胆振東部地震が連続して発生。北海道全体が大きな影響を受け、約7700本もの列車が運休する事態になった。特急列車での客室乗務員のサービスを2月末で廃止するなど、悪いニュースが続々と聞かれる。

そんな同社の経営改善の足掛かりになるかと、今回のプロジェクトは業界内でも注目度は高い。

ただ、事業収入の見通しについて聞かれると、JR北海道の島田修社長は「線路使用料、借入費用、運営方式などを含めてこれから協議」と歯切れが悪い。本当に大丈夫なのか心配してしまう。

さて、今回のプロジェクトで運行する観光列車は2種類。

1つは、JR東日本から車両を借り入れた「風っこ そうや」(宗谷本線・旭川~音威子府/音威子府~稚内)で19年7~9月に運行させる。もう1つは、東急が所有する豪華観光列車「ザ・ロイヤル・エクスプレス」(札幌~道東エリア)を20年5~8月の間の約1カ月の運行を想定している。

編成イメージ(JR北海道のプレスリリースから)

JR北海道が他社の車両を借り入れて運行させることは異例。今回のプロジェクトは、島田社長から東急へ話を持ち掛けた。

東急の高橋和夫社長は、「北海道で運行させるのは当社としてもチャレンジングである」と語る。

走行写真(東急電鉄=写真提供)

ロイヤルエクスプレスは現在、横浜~伊豆急下田で運行しており、スタートから約1年半の間で8000人近くの人が利用する人気列車。車両の貸し出しとともに、これまで培ったノウハウをJR北海道へ提供する。

東急の関係者は、「今回の取り組みでは、当社にそれほど大きなメリットはない」と明かす。あくまでも観光振興、復興応援など、社会的意義のための“協力”としているようだ。

島田社長が東急を指名した理由に、観光列車事業のノウハウに加え、クルーのサービススキルが高いことを挙げている。また車両にインパクトがあることも、魅力の1つだ。

ロイヤルエクスプレスは、高級感漂うロイヤルブルーの車体がひときわ美しいと評判の列車である。数々のオシャレな列車を手掛けた水戸岡鋭治氏がデザイナーを務め、電車らしからぬラグジュアリーで個性的な内装も女性からの支持を集める。

1号車の様子(東急電鉄=写真提供)

緑萌える広大な北の大地を走るロイヤルエクスプレスは、さぞ美しかろうと想像をかき立てられる。英国の新聞「デイリー・テレグラフ」の公式ウェブサイトが発表した「アジアの最も美しい鉄道トップ10」18年版にも選出されている。

が、1つ大きな懸念が……。肝心なデザイン性の維持だ。

説明によれば、ザ・ロイヤル・エクスプレスは、JR北海道が所有するディーゼル機関車と電源車が牽引する編成になっている。

2号車の様子(東急電鉄=写真提供)

車両形式はまだ未定だが、同社所有のディーゼル機関車と聞いて想像するのは、例えばDE10形。野暮ったく、あか抜けない赤色に白ラインの入った車両だ。まさかアレに牽引させるのか。まったくオシャレさに欠けるものだと言ってもいい。

せっかく都会的で高貴な青色の車両が、ローカル臭漂う機関車に連結されれば、世界観の不一致に乗客が興ざめする。その点も含めて「東急のチャレンジ」なのかもしれないが、ここは編成の続報を待つとしよう。オシャレでハイセンスな東急ブランドの車両。北の大地で上手に生かし、乗客を魅了してほしいと願うばかりである。

(鉄道コラムニスト 東 香名子 写真提供=東急電鉄)

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