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"サブカルは先行投資だ"借金男の言い分

プレジデントオンライン / 2019年3月13日 9時15分

写真=iStock.com/dobok

年収630万円▼経費で落ちない“仕事飲み”がつらすぎる
30代 編集者 太田 穣さん(仮名)

■仕事には満足も将来が不安

太田穣さん(仮名・30代)。中学生のころから本の虫となり、読書や映画、音楽に没頭。現在に至るまでサブカル貧乏生活が続いてしまっている零細出版社の編集者だ。

「もともとは大手マスコミで働いていたのですが、会社の働き方が合わず退職。その後、職を転々としていましたが、4年前、ようやく今の会社で雇ってもらえました」

大学卒業後は大手マスコミ業界というだけあり、給料は同世代に比べて高い水準だった。経費も比較的自由に使えたこともあり、趣味への出費は一気に増えたという。

「本屋に行けば、最低数万円は買っていました。書籍だけで10万円分は買っていましたね。仕事柄、細かい休みは取れないため、まとまった休みが取れたときは思い切ってヨーロッパなどに1週間ほど海外旅行に行っていました」

そんなこともあり、現在に至るまで太田さんの貯金額はほぼゼロ。

現在勤める出版社の月収は額面で45万円。ボーナスはもらっていない。収入は年収900万円だったかつてよりは下がったという。

「副収入として、知人から頼まれたライター仕事をこなすこともありますが、せいぜい月に3万円程度。生活はギリギリどころか赤字ですね」

その要因はなんだろうか。

「まず、固定費が多いことですかね。大学時代の奨学金の返済が残り100万円。これを毎月3万円返しているのに加え、大学院に通う弟にも私が月2万円援助しています」

独身で体も強いほうではないという太田さんは、最近、貯蓄型の生命保険に入った。

「知り合いの営業マンに勧められるまま、外資系保険会社に毎月2万円。あとはほとんど趣味と業界関係者との飲み代に消えます」

太田さんは出版社勤務ではあるが、一部マスコミ業界に見られる“会社の経費で飲み放題”とは無縁の生活を送る。彼が勤める零細出版社となると、それは尚更だ。

「とはいえ、週末の飲み歩きはやめられません。なので、飲み代や趣味以外の出費はできるだけ削っています。5年住んでいる目白のアパートの家賃は月8万円。私以外の住人は全員学生です。毎晩学生の部屋飲みの音が聞こえてきますが、うるさいというよりは交ぜてもらいたい」

本人が「最も浪費の原因」と語る映画や本、音楽などの趣味にはどれだけお金を使うのだろうか。

「今の会社に就職してから、歌舞伎やクラシックコンサートに頻繁に足を運ぶようになりました。先日は仕事で知り合った方に誘われて、オーボエのコンサートに行ってきました。深い音色に感動しましたが、これが1回1万円。これくらいの相場の芸術鑑賞に月1回は行きます」

さらに、映画や観劇のあとは決まって食事も取る。これもまた出費がかさむ原因となっている。

太田さんは現在の仕事に満足しているものの、漠然とした将来の不安を抱えているという。

「この年になって、そろそろ結婚も考えているのですが、貯金もないし、給料も大手マスコミ時代より高くない。おまけに趣味に莫大なカネを使う私のような男を好きになってくれる人なんているんですかね? 付き合っていた彼女とも別れましたし……。でも最近またいい女性に出会えたのです。ただ将来が不安です。それも保険に入った理由の1つです」

■親からの援助が命綱なのに……

太田さんの生活費は月給を上回っており、完全に赤字。これを補填するのが、ほぼ毎月振り込まれる両親からのお小遣いだ。

「本当はよくないとは思いつつも、大手マスコミを辞めてから仕送りをもらってしまっています。ただ、先月ついに『今年度いっぱいで仕送りはもうできないからね』と通達されました。父親が来年公務員を定年退職となり、本当にお金がなくなるのだ、と言われまして」

いよいよ来年は経済的に自立しなければならないと語気を強めて語る太田さんだが、会社の給料は入社以来1円も上がったことがない。

「毎年年俸交渉があるのですが、前年の水準を維持したままでした。そろそろ上げてほしいと交渉するつもりです」

親から借金をしてまで味わう「文化的趣味」とは果たして本当に必要なものなのか。そう思う人もいるかもしれない。

「大学時代からおもしろいと思ったものへの出費は抑えられないんです」

そう語る太田さんのトレーナーは母親に買ってもらったもの。身につけるものも親に頼るのは彼なりの生存戦略なのだという。

いま1度家計簿を見てもらい、今後の貯蓄計画を聞いてみた。

「うーん、できればもっと趣味にお金を使いたいですね。あとは大手マスコミ時代には通っていた風俗にも行きたい。今の給料では年に1回行けるか行けないかでしょうか」

現実的に考え、今の会社では月給は上がっても数万円。転職を考えるしかないのではないだろうか。

「転職はしたくないんです。つらい仕事の我慢代として会社からお金をもらうのは大手マスコミ時代で懲りています。できれば今の会社で仕事量は増やさずに給料だけ増やしたい。あとは経費ももっと切れるようにしてくれたらいいんですけどね」

実は太田さんが私財を仕事に投入しているのは飲食費だけではない。

「そもそも本にかけられる予算が少なくて……。でも、自分が作るからにはトコトンこだわりたいのです。だから装丁のデザイナーや帯も自分が考える最高の状態にします。そうすると予算は簡単にオーバーするのですが、足りない分は自腹で補っています。周囲からやめろと止められますが、ベストセラーの本を連発して、給料が上がれば戻ってくるはず」

実際に太田さんの本はよく売れる。業界でも有名になってきた。彼の先行投資は出世という形でちゃんと戻ってくるのだろうか。

▼FUKANO’S POINT
会社員やめてフリーになっては? 貯蓄型生命保険はお勧めしません
今の太田さんの働き方は会社員というより経営者です。自分の生活設計に影響を与えてまで自腹を切るべきではありません。腕に自身があるならフリーになるのはどうでしょう。それなら飲食費や書籍代も経費で落とすことができるはずです。結婚も検討しているならやっぱりキャッシュは必要です。このままでは結婚相手が苦労することになります。それに奨学金も返せるなら一括で早く返したほうがオトク。貯蓄型生命保険は、いざというとき保障か返戻金を取るかの究極の選択になるためお勧めしません。手元の金を使ってしまう癖を直して、一日でも早く貯金すること。「キャッシュ・イズ・キング」で、現金は強いのです。

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深野康彦
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』『ジュニアNISA入門』など、著書多数。

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■▼映画、音楽、本……趣味への出費は抑えられない

(編集者・ライター 鈴木 俊之 写真=iStock.com)

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