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雑談ネタは"アニキとタケシが過去住職"

プレジデントオンライン / 2019年3月28日 9時15分

写真=iStock.com/tsuyoshi_kinjyo

「雑談が苦手」と避けていては人生のチャンスを逃すことになる――各界が誇る「雑談のプロ」3人が伝授する「雑談で人生を変える奥義」とそのネタ探し法とは。

■雑談から逃げては、損するばかり

商談先で取引相手と、出社時に同僚や上司と、何らかの言葉を交わさなければいけないのに、「何を話していいのかわからない」「会話が続かない」「沈黙に耐えられず喋り続けて自己嫌悪」という悩みは多方面から聞こえてくる。なかには雑談を避けるあまり、上司とエレベーターに同乗しないよう工夫を凝らしたり、「俺は口下手だから」と開き直ってしまったりする人もいる。雑談は、誰もが日常的に話しながらも、苦手意識を持つ人も多い課題の1つである。

しかし、そんな人に「雑談なくしては、どんなチャンスも巡ってこない」と喝破するのは、70万部超のベストセラー『超一流の雑談力』シリーズの著者、安田正氏だ。「この本が売れた背景には、想像以上に『雑談』が苦手な人が多い現実があるからだろう」と分析する。

「かくいう私も、実は昔から口下手で人見知り。子ども時代は買い物先で『納豆ください』も言えなかったくらい」と笑う安田氏の価値観が大きく転換したのは、20代のイギリス留学先でのことだった。

「イギリス人はパーティー好き。しかし料理がまずい。だからつまみは会話、つまり雑談です。ただしそのレベルは日本とは段違い。その場しのぎの話題ではなく、自らの知識やユーモアをフル回転させた機知に富んだものでなくてはなりません。語学力だけ鍛えようとする日本人ではかないません」

雑談力がなければ、彼らのコミュニティに入ることすらできないという経験から、帰国後、自らの雑談力を徹底的に鍛え上げた。現在、法人向けコンサルタントとしてコミュニケーション能力や対人対応力などレクチャーを重ねる同氏によると、定年退職後も幸せな人生を送っている人は押しなべて「雑談力」がある人間ばかりだという。

「例えば退職後に大学の客員教授に招かれたり、新しいビジネスや名誉職をオファーされたりする人がいますよね。世の中には勘違いしている人も多いんです。運のいい一握りの人間だけが、ある日いきなりビジネスチャンスを打診されたりすると。だけど本当は、運のいい人なんてこの世にはいないんです。いるのは縁のある人だけ。縁とは人との繋がりです。雑談から始まるコミュニケーションを大切にし、地道に信頼性を培ってきた人のところにこそ、チャンスは転がり込んでくるんです」

恋愛や地域コミュニティでも同じことだ。

「家族と第二の人生を楽しんだり、高齢者向け施設で人気者になる人もまた、雑談が上手です」(安田氏)

■話さなくて済む、仕事はほぼない

コミュニケーションの第一歩である「雑談」をすっ飛ばして、チャンスが舞い込む人はいない。では、肝心の「雑談」スキルを向上させるには、どのような心構えが必要なのだろうか。

今回、同氏を含め3人の「雑談のプロ」から話を聞いた。前述の安田氏はコンサルタント、田中イデア氏は放送作家、秀島史香氏はラジオDJ・ナレーターと、それぞれ活躍するジャンルは異なるが、実はある共通点が存在する。それは全員が、「本来は話下手だった」という過去だ。

安田氏は帰国後、荒療治として結婚式の司会に片っ端から名乗りを上げ、「若い頃だけで50回近くやった」という。

一方、「ウケる! トーク術」のノウハウを伝授する田中氏も、若い頃は人見知りだったという。家で1人ラジオを聴き続け、好きなラジオの仕事に就きたいと放送作家になった。「ところが、書く仕事がメインかと思ったら、実は大勢と関わり雑談をする力が必要だった(笑)」。業界のベテラン作家は話術が巧みで面白い。中堅どころは場を温め、お酌をするなど機転が利くなか、新参者の田中氏だけは、どちらもできなかった。「仕方なく、とにかく毎回顔を出して、話を熱心に聞き続けるアピールをして、ようやく存在を認識してもらえるようになったんです」という。その後、お笑い芸人のトーク術の研究を続け、「雑談」の奥義を伝授するまでに至る。

ラジオDJの秀島氏も同様の悩みを抱えていた。「人見知りであがり症、毎回緊張で震えながら、『なんでこの職業に就いたのか』と自問自答しつつ、ゲストを迎えていた」と振り返る。初対面のゲストと向かい合い、数時間も台本なしのトークを繰り広げる試行錯誤から、稀有な「雑談力」が育まれた。

好きこそ物の上手なれという言葉があるが、苦手な分野だからこそ研究を続け、技を磨いていく人々もいる。3人ともが自らの体験をもとに強調するのは、誰もが「雑談力」を上げることは可能だという点だ。では、彼らの伝授する雑談の奥義を見ていこう。

■1.5倍の笑顔で、人の話を聞く

まず3人ともに「雑談力」アップの第一歩に挙げるのは「聞く力」だ。

「雑談は、喋ることだと誤解している人が多いですが、実際はむしろ人の話を聞く姿勢が一番重要です」(安田氏)

会議や商談の席で相手の話を聞いているとき、あなたはどのようなリアクションをしているだろうか。

「真摯に聞いている」だけの人は要注意だ。「相手の目を見て聞いている」でも十分ではない。

「相手の目を見つめ、かつ大きく頷きながら、『はい、はい、なるほど』『そうなんですね』『たしかに!』『それは気づきませんでした!』など、いささかオーバーリアクション気味でもしっかり相槌を打つことが肝心」と田中氏は話す。日頃し慣れていないと「あざとい」と感じるかもしれないが、自分が思う以上に、相手は聞き手の反応のなさに不安を抱いているものだ。

第一印象の重要性はさらに増す。

「アメリカのプリンストン大学の研究結果によると、相手の顔を見て『好感が持てそう』『信頼できそう』と判断するまではわずか0.1秒だそうです。とにかく初対面では自分の意識する以上の笑顔を相手に向けること。意外とこわばっていたりするものです。私の実感では普段の1.5倍の表情とリアクションで初めて、相手に『興味ありますよ、しっかり聞いていますよ』というサインになります」(秀島氏)

日本人は欧米人に比べると表情の変化が乏しく、素の表情だと相手に威圧感や不安感を与えかねない。

「雑談しにくい相手だなと感じる人というのは、大抵喋りにくいオーラを発している自分のリフレクト(反射)なんです。自分はオープンマインドのつもりでも、表情が硬かったり目線がきつかったりするので、鏡でいろんな表情をする練習から始めてみてください」(安田氏)

チェックポイントは、「口角が常に上がっていること」「歯が程よく見えるようハキハキ喋ること」「目線が柔らかいこと」「声の高さが低すぎないこと」などだ。コツは「ファ」か「ソ」あたりの音程で話すことだという。これをするだけで、一気に「話しやすい人」に変身できるという。

ただし、「聞くこと」には注意点もある。「Listen(聞く)ではなくAsk(尋ねる)を連発している人もいます。そうなると相手は詰問されている気分になってしまうので気をつけてください」(秀島氏)。

■芸人的面白さはいらない

では、どのタイミングで自分のことを話したらいいのだろうか。

「相手も話しているうちに、『あれ、俺ばかり話しているな』と気づく瞬間が訪れます。そういうときに初めて、『いや、私も先日こういうことがあって』と、自分の話をするくらいがちょうどいい割合でしょう」(安田氏)

話すテーマも悩みどころだが、放送作家の田中氏によると、気をつけるべき点は相手の「共感」を得られるかどうかだという。

「自分の体験、特に失敗談は場の緊張をほぐす効果がありますが、あくまで相手も共感できる範囲であることが大切です。例えば過去に万引をしたとか、浮気がばれて彼女にナイフで刺されたなどの笑えない“失敗談”では、かえって相手が引いてしまいます」

雑談というと、どうしても「ウケる話」をしなければと意識しすぎて喋れなくなってしまう人も多い。

「たしかに高度な雑談力を持つ人は、“面白い話”で他人を笑わせます。でもテレビの芸能人と違い、我々一般人が必ずしもファニーな面白さを目指す必要はないんです。それより目指すべきはインタレスティングな“面白さ”。相手の仕事や趣味に関連した興味深い話題を提供できれば、一気に相手に存在を覚えてもらえます」(田中氏)

そのためには日常的な仕込みも欠かせない。初対面の相手の仕事内容や趣味など基本情報を調べておくことを、秀島氏は料理の「下ごしらえ」にたとえる。

「初対面の人と話すのはいつになっても緊張します。でも、『まずは一品』お出しできる料理(ネタ)を仕込んでおけば、話に詰まることもないので、結果的に自分の緊張を解きほぐすことにも繋がるんです」

そのほか、日々の新聞や雑誌などに目を通し、自分が観た映画や読んだ本の印象をメモしたり、相手から「これ面白いよ(おいしいよ)」と教えてもらったことはすぐに試して感想を伝えるなどの細やかな努力は、「雑談力」上級者が地道に行っている習慣だ。

■47都道府県全部のネタを仕込め

ちょっとした会話で、良好なコミュニケーションをとりたいという気持ちはあるが、具体的に何を話したらいいかわからないという人もいるだろう。

そういった「雑談のネタ」はどのように探せばいいのだろうか。

「雑談のテーマに悩む人は多いようです。正直、タブーなのは政治・宗教・他人の悪口・自慢話くらいで、あまり気にしすぎないほうがいいというのが僕の持論です。とはいえ、イザというときのために、ある程度ネタを仕込んでおくと安心です。私の知り合いの中にも、最初のうちは雑談のパターンを5つくらい用意していたという人を知っています」と話す田中氏は、雑談のネタの探し方として、「アニキとタケシが過去住職」という語呂合わせを提案する。

この語呂合わせは「遊び・ニュース・季節・友達・旅・健康・仕事・学校・家族・恋人・住居・食事」の頭文字をとったもので、12の雑談ネタが含まれている。日常的なネタ探しのほか、会話の真っ最中にネタが尽きて困ってしまったときにも、ぜひ思い出してほしい。

一方、ラジオDJを始めた頃、オープニングトークに最も頭を悩ませたという秀島氏は、当時のことをこう振り返る。「台本には『3分、フリートーク』と書かれているだけ。リスナーを惹きつける“つかみ”は、落語の“まくら”や、商談前の雑談に通じるかもしれません。相手の心をぐっとつかんで場を温めたい。そのために活用し始めたのが、コンビニと歳時記でした」。

コンビニには、季節を先取りしたこまやかな商品が溢れていると、秀島氏は話す。毎日立ち寄る人も多いであろうコンビニは、雑談のネタの宝庫。積極的に活用したい。秀島氏には、シチュエーション別に使える「会話のネタ」についても具体的に教えてもらった。こちらも参考にしてほしい。

また、安田氏は雑談にふさわしいネタのうち、もっとも関係を深めやすいネタとして、相手の「出身地(地域ネタ)」を挙げる。理想は「地名や史跡、銘菓などの知識を47都道府県分仕込んでおくこと」(安田氏)。ハードルが高く聞こえるが、地域ネタは時事ネタと異なり、情報が劣化しないため、1度身に付ければずっと使えるというメリットがある。雑談のネタに困るという人は、まずはおおまかな地域ごとに、知識を仕込んでみてはいかがだろうか。

「雑談ネタ入手には海外旅行もいいですが、国内も意識して旅することをお勧めします」(安田氏)。

■単語のみの生活をやめれば、人生好転

「雑談は苦手」「コミュニケーション能力が低い」と思い込んでいる人や、なかには「沈黙は金」とばかりに無駄話を厭う人もいるかもしれない。まずはそのような先入観を取り除くところから始めたい。

安田氏の体験では、意識すれば人は1週間で雑談力を上げられるという。

「だまされたと思って1週間、口角を上げ、顔に笑顔をたたえ、高めの声で話しかけてみてください。それも職場や商談相手だけではなく、日頃『風呂、飯』しか言葉を交わさない家族や無言でその前を通り過ぎている会社の守衛さん、カフェの店員さんなどにも挨拶をするんです」

日本人はとかく単語のみで日々の生活を送りがちだ。それをまずは文章単位にすること。試しに居酒屋では「ビール!」を改め、「すみません、ビールを1本お願いできますか」と笑顔で注文してみよう。どんなに混んでいる店でも、対応はガラリと好転するはずだ。

雑談はスポーツと一緒である。日頃から言葉を多く発する人間のほうが、いざというときに説得力のある話、魅力ある発声、盛り上がる雑談ができるのは当然のことだ。

これからの時代、どれだけ人と出会い人脈を広げられるかが、長い人生にチャンスを呼び込む秘訣となるだろう。今日からでも遅くはない。「雑談力」を上げる試みをスタートしたい。

■シチュエーション別「会話のネタ帳」【ビジネス編】

▼ビジネスで初対面
「御社はボランティア活動にも力を入れていらっしゃるんですね」
会社訪問をする場合は、事前にその会社のウェブサイトを見て下調べを行うだろう。その際、細かい隅っこのほうの情報を頭に入れておき雑談に交えると「そんなところまで注目してくれているんだ」と、いい方向に解釈してもらえることも。
「学生時代はアメフトをなさっていたんですね。実は私も……」
初対面ではプライベートなことに立ち入りすぎないのがマナーだが、相手が著名であったり、ブログやSNSなどで自ら情報を発信したりしている場合はその限りではない。下調べから一歩進めて「自分の言葉」を加えて話を広げるとよい。
「冬らしいお天気ですね」
「無駄な挨拶はいらないからさっさと用件に入れ」という風潮も一部にあることはあるが、時候の挨拶は応じやすい共通の話題。その先により高度なコミュニケーションを行うための入り口として、大いに活用したいもの。
「ダウンコートはまだ早いかと思いましたが、今朝は皆さん着ていましたね」
時候の挨拶を入り口に、プラスアルファで話を膨らませる。今の時季なら、クリスマス商戦、年賀状、マスク、インフルエンザなど、自分が見聞きしたものから話題を提供すれば、無理も生じず、相手に自然な印象を与えられる。
▼顔見知りの取引先
「先日グランピングっていうのに家族で行ってきたんですが……」
イクメンという言葉が広まり久しいが、相手が子煩悩な人なら、子どもが喜ぶおでかけスポット情報は、聞けてうれしい情報。どんな分野なら喜ばれるのか、家族構成、子どもの年齢などから想像力を働かせてみよう。
「○○(チーム名)は連勝で、今季好調ですね」
野球やサッカーなど、贔屓のスポーツチームを持つ人はやはり多い。スポーツの試合結果をざっとさらっておくと幅広く使える。ただし、試合に負けると機嫌が悪くなる人もいるので、勝敗によって話題にするか否か判断を。
「最近はロボットキャディっていうのも登場したみたいですね」
相手が興味を持っているテーマに関する新しい情報や有益な情報は、最高の手土産。今なら「相手の興味のあること」に「AI」を掛け合わせてネット検索を行えば、高い確率でユニークな雑談ネタを入手できる。
「そのネックストラップ、先日のイベントのものですか?」
身に着けているものは、好きなものである可能性大。それに対して触れるのは、こちらからのおもてなしともいえる。その他、Tシャツも突っ込みどころ。音楽やスポーツなどのイベントTシャツには「行かれたんですか」のひと言を。
「ランチでよく行かれるお店はありますか?」
雑談は、相手の好きなヒト・モノ・コトを起点にすればハズレなし。相手の興味をリサーチできていない場合は、まずは食べ物ネタを。最近食べたもの、好きなものや我慢しているものなど、どんな人でも話すことがあるはず。
「いいお店を見つけたんですよ!」
飲食店について話題にするならば、相手におすすめの店を聞くばかりではなく、自分もいくつか店情報を用意しておきたい。その際は、相手がイメージを膨らませられるよう人気のメニューや店の雰囲気、価格などの具体的情報を盛り込みたい。
※秀島氏への取材をもとに編集部作成

■シチュエーション別「会話のネタ帳」【知り合い編】

▼外でばったり
「今日はリクルートスーツの学生さんが多いですね。懐かしいですね」
相手に合わせた話のネタを準備していなくても大丈夫。動揺せず、周りの状況を観察し、思ったことを口に出してみよう。情景描写するだけでもよい。相手も同じものを見ているのだから、何かしら話が続くはず。
「なんだかいいお顔をしてますね。週末、リフレッシュできたみたいですね!」
相手の顔を見て、受けた印象を伝えよう。ただし、「なんだか疲れてそうだね」というのは要注意。労われたとうれしく感じる人もいるが、「そんなダメな感じに見えるのか……」とネガティブな気分になる人も。特に女性に対してはNG。
▼同窓会
「昔のズボンが入らなくて、新しいシューズで走り出したのに“一日坊主”で」
ほぼ同い年の集まりのため、気になるテーマは重なりがち。その中でも健康ネタは鉄板。「今、毎朝ジョギングしてるんだ!」だと単なる意識高い系の自慢ととられる恐れがある。その背景を自虐交じりに伝えれば、共感度が高まる。
「今どきは無料アプリでトレーニングメニューが組めて、これが意外に続くんだ!」
みんなが共通して興味を持っているテーマに対して、有益な情報をシェアすれば、場全体が盛り上がる。「やってよかったこと、買ってよかったもの」は独り占めせず共有しよう。楽しい仲間づきあいをずっと続ける助けになる。
▼会社の同期
「今度の冬休み、どこか旅行に行ったりする?」
同期が集まるとつい競争心が煽られ「オレ、こんなすごい仕事をした!」とマウンティング合戦になることも。目的は親睦を深めることで、手柄プレゼン大会ではない。全員が共通して楽しめる話題を選ぶようにしよう。
「部長にコテンパンにやられて、この年でトイレで泣いたわ!」
あえて自分の弱みを見せて、「オレは攻撃しませんよ」キャラを印象づけるのも○。自慢話ばかりで周りの仲間に気を使わせる人よりも、大人と思われる。「みんなを和ませるためのトホホ話」と聞こえるよう、シリアスになりすぎない口調で。
▼新入社員
「スマホに入れるアプリがわからなくて。よければおすすめを教えてくれない?」
自分が苦手で、相手が得意とする分野に話題を集める。尋ねたからには聞く側に徹する。相手は縮こまってしまいがちなので、しっかり相槌を打ち、安心感を与えよう。「○○くん」と名前を呼びかけるとさらに効果的。
「新人時代にこんな失敗をやらかしてさ。よく悩んだよ」
上司が失敗談を自ら開示すると、部下は「実は今、仕事で悩んでいることがあって……」と相談しやすくなる。「オレが新人時代だったときはさー」と苦労話から始まる自慢話は一発アウト。似て非なるものなので勘違いしないこと。
▼会社の上司
「部長が私の年の頃にはどんなことをされていましたか?」
「教えてください、勉強させてください」というスタンスで懐に飛び込んでくる部下はかわいいもの。上司のこれまでの経験談を気持ちよく話してもらおう。たとえつまらない話でも役に立つ日がくるかもしれない。
「かわいいお子さんですね!今、おいくつですか?」
かつては「会社ではプライベートな話題は避けるべし」という考えが色濃かったが、スマホの待ち受け画面を家族の写真にしているような人なら、NGとは限らない。ちらっと見えて素敵だと思ったら、素直に伝えてみよう。
※秀島氏への取材をもとに編集部作成

■シチュエーション別「会話のネタ帳」【プライベート編】

▼海外旅行
「It’s another great sunny day!(気持ちよく晴れたね)」
日本に限らず、お天気に関する話題は世界共通の鉄板ネタ。バスを待つ列、エレベーターの中など、気まずさに負けてもたもたしていると余計に話しかけづらくなるので、さっさとハードルの低いひと言を発してしまおう。
「The weather is perfect, isn’t it?(完璧なお天気ね!)」
「Isn’t it?」は、自分の感想の後に相手にふることで、同意や共感をゲットできる。観光地で「Amazingview,isn’t it?(素晴らしい景色ですよね)」など活用の幅は広い。その他、「How about you?(あなたはどうですか?)」も何かと便利。
▼パーティー
「今日はどなたのお知り合いでいらっしゃったのですか?」
最初が肝心。まずは会釈と笑顔。続いて「今日はどなたのお知り合いでいらっしゃったのですか?」と尋ねるのが無難。あまりパーソナルな質問は、共通する基盤のない初対面の相手には警戒されると心得たい。
「こういう場所ってちょっと緊張しちゃうんですよ。なかなか慣れなくて……」
華やかな席が苦手、気後れしてしまう、という人は決して少なくない。先にその気持ちを、自虐的なニュアンスとともに口に出して伝えてしまうと気楽になる。もしかすると、相手も同じように思っているかもしれない。
▼異性とのディナー
「アメリカの80年代の映画が好きで、スピルバーグ作品はほぼ全部観ています」
趣味を問われて「映画鑑賞です」とひと言で終わらせるのはラクをしすぎ。具体的な作品名や思い出話などを織り交ぜて、自分の人柄が伝わるように工夫をしたい。相手との共感ポイントをつくりたいので、マニアックすぎる話はNG。
「実はここだけの話、いまだにお化け屋敷が怖いんだ……」
相手との距離を縮めたい場合は、小さい秘密を共有してみるという手がある。他愛もない自分の弱みを相手に見せてみよう。「僕はすごいんです!」という自慢話を聞かされて、好印象に受け止める人はいない。
「僕は茅ケ崎出身なんだけど、茅ケ崎っていうと何を連想する?」
「主役は相手」だが、相手に話させてばかりでは負担になるため、自分の話も適度に行う。その際、自分語りに終始しないように「どんなイメージがある?」と尋ねるなどして、相手に参加してもらう余地をつくるとよい。
「もし日帰り旅行するとしたら、どこに行きたい?」
「もし明日休みなら何をしたい?」といった「もし○○なら」系の質問は、一緒に楽しい想像を広げられる。必ず自分も回答を準備しておくことが、質問する側のマナー。尋問にならないように、笑顔と柔らかい口調で行うこと。
「そのバッグ、冬っぽくっていいね!」
相手のことを観察して、ちょっとした変化に気づくことが重要。それに対して、さりげなく相手に伝える。身に着けるものは、その人の個性が如実に表れる。褒めるのが照れくさいなら、事実を言葉にするだけでも相手はうれしく感じるもの。
「生まれも育ちも東京なんですか。“東京03”って局番にあこがれました」
相手の出身地を話題にする場合は、まずその土地に関するポジティブなイメージを伝えてから、話を広げていこう。名産品、おすすめの観光地のほか、一般的にどんな場所でデートするのかなど、質問の切り口は無限大だ。
※秀島氏への取材をもとに編集部作成
▼会話のネタに困ったら(1)
鉄板は地域ネタ●安田 正

雑談にふさわしいテーマには、気候・相手の会社情報・ファッション・健康・趣味・最新ニュースなどがあります。しかし、なかでも鉄板なのは相手の「出身地(地域ネタ)」です。雑談で盛り上がるのは決まって「互いの共通点」を見つけたとき。相手の出身地が話題になり、「あの辺りには××がありますよね」などと会話を発展させられれば距離がぐっと近づきます。

地域ネタには情報が劣化しないというメリットも。時事や流行ネタは常に更新し続けなくてはなりませんが、地域ネタは長く使えます。理想は47都道府県分、地名や史跡、銘菓などの知識を仕入れておくことです。

ただし、注意点もあります。地方によっては悲しい歴史や、他県と対抗意識を持っていることもあるため、繊細な話題には触れないこと。もし地雷を踏んだら、素直に「不勉強で申し訳ありません」と謝り、「ぜひ、教えていただけますか」とお願いできれば、印象のリカバリーにも繋がるでしょう。

▼会話のネタに困ったら(2)
「アニキとタケシが過去住職」●田中イデア

雑談のテーマに悩む人は多いようです。気にしすぎないほうがいいというのが僕の持論ですが、とはいえイザというときのネタを仕込んでおくと安心です。

覚えるのは「アニキとタケシが過去住職」という語呂合わせ。応用例とともにご紹介しましょう。

「遊び」子ども時代の遊びや現在の趣味話など
「ニュース」新聞一面記事に加え、突っ込みどころ満載の三面記事や地元の笑える話など
「季節」春夏秋冬、イベントやスポーツなど
「友達」地元や子ども時代の変人、友人エピソード
「旅」出張、観光旅行先での話
「健康」独自の健康法や笑える入院ネタなど
「仕事」仕事やバイトの体験談
「学校」大学・予備校・カルチャースクールでの面白エピソード
「家族」家族やペットネタ
「恋人」恋人や失恋にまつわる失敗談など
ジュウ「住居」家や土地、暮らしに関する話
ショク「食事」飲食、ダイエットにまつわる経験談。

話題につまったときにも思い出してみてください。

▼会話のネタに困ったら(3)
コンビニと歳時記を味方に●秀島史香

ラジオDJを始めた頃、最も頭を悩ませたのはオープニングトークでした。そこで活用し始めたのがコンビニと歳時記です。

コンビニはいつも変わらないように見えて、実は季節を先取りしたこまやかな商品で溢れています。「人気アニメキャラが描かれたお年玉袋だ」「冬限定のビールが今年は豊富」、そんなことを感じながらの定点観測からは、現代における季節感や、世の中の気分が感じ取れます。

一方の歳時記は日本の伝統的な季節感の宝庫。20代の頃、言葉を扱うDJとして語彙力が足りないと手に取りました。以来、瑞々しい日本語の美しさやリズム、「冬夕焼(ふゆゆうやけ)」「木の葉髪(このはがみ)」など五感を刺激する季節の表現に魅了され続けています。

コンビニで目にした商品も、歳時記の季語も、そのままスライドして会話のきっかけとして使えます。「さっき立ち寄ったコンビニのレジ横に最新のマスクが売られていたんだけど」と、雑談を始めることも。気づきや感性を刺激してくれるこの2つ、おすすめです。

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安田 正
パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役
早稲田大学グローバルエデュケーションセンター客員教授。ビジネスコミュニケーションの第一人者。
 

田中イデア
プラトン企画代表
放送作家。テレビやラジオの構成・リサーチ、イベントの企画・プロデュースのほか、芸人養成スクールの講師を務める。『お笑い芸人に学ぶウケる! トーク術』など著書多数。
 

秀島史香
ラジオDJ
ナレーター。慶應義塾大学在学中にDJデビュー。テレビ番組にも多数出演。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』がある。
 

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(フリーランスライター 三浦 愛美 構成=三浦愛美 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)

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