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日本人が「小室さんは不適格」と思う理由

プレジデントオンライン / 2019年3月5日 9時15分

2017年9月3日、会釈しながら赤坂御用地を出る、秋篠宮家の長女眞子さまとの婚約が内定した小室圭さん(手前)と、母佳代さん(写真=時事通信フォト)

■なぜ「小室母子は嫌い」という空気が醸成されたか

秋篠宮眞子さんと小室圭さんの結婚問題について論じることは、メディアのあり方を考えることである。

週刊女性が一昨年の暮れに、小室さんの母親・佳代さんの元婚約者だという男との間に「金銭トラブル」があると報じ、年が明けて、週刊文春と週刊新潮が後追いして、騒動が拡大されていった。

週刊誌に続いて、ワイドショーなどが連日のようにこの話題を取り上げ、コメンテーターたちの無責任な発言を垂れ流した。そうした見方がネットで拡散され、リテラシーのない人間たちの間に「小室母子は嫌い」という空気が醸成されていった。

それを見て驚いたのであろう、突然、宮内庁は2人の婚約延期を発表するのである。

こうした小室母子バッシングともいえる一連の報道を見ていて、私は違和感をおぼえて仕方がなかった。

■どのメディアも元婚約者の証言のおかしさを追及しない

元婚約者という男は、いまだに名前も顔も出さず、取材に来る連中に一方的ないい分を申し立て、週刊誌やワイドショーは裏も取らずに、そのまま流してしまう。

その話をもとに、「小室圭は眞子さんの婿にはふさわしくない」という風評をメディアが作り出していったのである。

他人の不幸は蜜の味。宮内庁や秋篠宮家の「関係者」という、どこの誰かもわからない証言者を動員して、「美智子皇后は最初から小室圭を嫌っていた」「秋篠宮紀子さんは圭と別れさせたがっている」と見てきたような揣摩臆測記事を洪水のように流し続けたのである。

不思議なのは、どのメディアも、元婚約者の証言のおかしさを追及しなかったことである。

■週刊誌へのタレコミは男らしいやり方ではない

この男と佳代は結婚を前提に付き合っていたのだ。夫に早く死なれ、女手ひとつで苦労しているのを見て、当時はカネに困っていなかった男が彼女や息子のために援助したのである。当然、借用書などもらってはいない。

しばらくして、2人は別れてしまう。その後、男は仕事を失い生活に困ってきたため、女にカネを返せと手紙を送るが、あれは譲渡されたものだと理解しているという佳代からの返事があったという。

ある日、彼女の息子が秋篠宮眞子さんと婚約をしたという報道が流れ、2人がにこやかな表情で会見を開いた。それを見た男は、母親との金銭問題を週刊誌にタレ込むようになる。

どう見ても男らしいやり方ではない。だが、週刊誌は眞子さんの婚約者の母親に金銭トラブルがあるという話に飛びついた。

■ニューヨークまで小室圭さん追いかけ回す異常さ

以後、小室母子に人権もプライバシーもないかのごとき報道があふれ、彼らの人格を否定する内容のものまで出回ったのである。

皇族の婚約者というだけで、これほど一般人をたたくメディアスクラムが起きた例を、寡聞にして私は知らない。

昨年夏、小室圭がニューヨーク州の大学へ法律を学び旅立った直後に、朝日新聞が、「秋篠宮がこのままでは納采の儀は行えないといった」と報じた。

秋篠宮も小室母子の金銭トラブルを憂慮していた。自分たちの報道は正しかった、天下の朝日新聞がお墨付きを与えたとばかりに、今度は、ニューヨークまで出張って小室圭を追いかけ回すに至っては、メディアは正常な判断ができなくなっているのではないかと思わざるを得ない。

私は、小室母子の対応がすべて正しいといっているわけではない。元婚約者との金銭トラブルは、もっぱら母親とその男との男女関係がからんだ問題だから、当事者同士で話し合い、速やかに解決するべきだったとは思う。

■週刊誌で初めて「サンデー毎日」が疑問を投げかけた

それをせずに、1年以上がたって小室圭側の出した文書は、「証文の出し遅れ」といわれても致し方なかろう。この親子は世事に疎い。

だが、百歩譲っても、これまでの報道の在り方は、常軌を逸していると思う。

ようやくサンデー毎日(3/10号)が、週刊誌ではおそらく初めて、「ご結婚問題『私はこう思う』」という特集を組み、こうした報道への疑問を投げかけたのである。

まず保守論者の小林よしのりはこう指摘する。

「小室圭氏の母とその元婚約者との金銭トラブルが問題になっているが、なぜ元婚約者の言い分に耳を貸すのか、なぜテレビのコメンテーターがそろって小室氏を批判するのか、そもそもそこが理解不能だ。

これが小室家でなければ『なんてみっともない男だ』と、元婚約者がたたかれるはず。ところが、眞子さまと小室氏の結婚を破局に持ち込みたいという欲望がふつふつとわいている構図になり、それが楽しいという感覚になっている」

■「高貴な身分の人の不幸が見たい」という大衆心理

マスコミにあおられて国民は、小室氏は眞子さまの結婚相手にふさわしくないと判断してしまっているとし、

「ご結婚問題では眞子さまの気持ちが最も大切であるはずなのに、その意思がまったく顧みられていない。自由恋愛の勧めをしたのは、父親の秋篠宮殿下だ。それでも『皆から祝福してほしい』と国民の気持ちを忖度する思いはあるだろうから、親としては複雑だろう。

眞子さまにとって恋愛の機会はそれほど多くないはず。自らつかんだ純愛を破局に追い込もうとする現在の流れは、眞子さまの精神状態がどうなるかとても心配だ。(中略)

眞子さまはご結婚の意思が固いといわれている。そうなのであれば、国民の勝手な思い込みだけで破局に追い込むことは、奈落の底に突き落とす結果になってしまうのではないだろうか。そこからは、皇族という高貴な身分の人の不幸が見たい、そんな大衆の嫌な心理が垣間見えてくる」

■皇族は何を言われても名誉棄損訴訟などできない

次はリベラル論者の香山リカ。皇族のプライバシーを尊重すべきだと語る。

「知りたいと思う国民と、あまりにも踏み込まれすぎる皇族方。やはりある程度、プライバシーや本人の意思が尊重されなければいけないだろう。皇族は何を言われても名誉棄損訴訟などできない。そこを見越した上で言いたい放題になり、憶測を呼ぶ状況に陥ってしまう。皇族方もご本人たちの意思を自分たちの言葉で発信してもいいのではないか」

その上で、小室母子への過剰なバッシングへ異を唱える。

「報道が小室さんバッシングに偏り過ぎではないかと懸念している。週刊誌は毎週のように大きく報じている。需要があるからなのだろうが、まだ一般の市民であるのにここまで踏み込んでいいのかと不思議だ。小室家の金銭問題だけにとどまらず、小室さんの人となりが掘り下げられ、だから結婚相手にふさわしくないという図式ができ上がっている。人間誰しも遡れば、少しくらい脛に傷があるもの。一私人の人間性についてここまで騒ぐことには、納得がいかない」

■身分に縛られず、お互いの自由恋愛を前提にしてきた

皇室史専門家の小田部雄次は、過剰報道は不安の表れではないかという。

「現在、秋篠宮さまの長女眞子さまの結婚問題が話題だ。平成の天皇の結婚以後、皇族の結婚は旧来の身分に縛られず、かつお互いの自由恋愛を前提にした流れにある。また皇室の女子の結婚では相手の適否について皇室会議を経る必要はない。法律上も慣行上も問題はないが、眞子さまのお相手に対する国民の目は厳しい。お相手が母親の金銭問題や、安定した職についていないことなどが理由のようだ。

(中略)

なぜ騒ぎになるのか。恐らくは、女性天皇、女性宮家の賛意が高まり、眞子さまが結婚後も皇族として皇室にとどまるかもしれないという国民の期待があるからだ。逆に言えば、女性天皇や女性宮家が実現する前に眞子さまが皇籍を離脱したり、離脱しなければお相手が将来の女性天皇の伴侶になったりすることへの不安でもある」

■「自分の人生だから結婚する」という可能性は残る

山下晋司は元宮内庁職員だから、やはり小室母子に厳しい見方をしている。

「日本人が持っている世界観の最大公約数的なものから、小室さん母子はややずれているのではないか。そのため、行動を理解できない。そういう人と皇族の結婚はふさわしくない、と考える方がたくさんいるのは事実だ。

ただ法的には、眞子内親王殿下の結婚はご本人の意思により可能だ。皇族としての立場、皇族だった者としての立場をどうお考えになるか。プライベートな部分を重視されるのであれば、皇族として好ましくないと批判されても、自分の人生だから結婚する、とされる可能性は残っている」

■「コムロコイン」という仮想通貨が立ち上がっている

流れが変わってきたのだろうか。こうしたまっとうな意見が載るのは、これまでの報道におかしさを感じている編集者やジャーナリストが増えていることが背景にあると思う。

一方、いまだに週刊文春(2/28号)は「小室圭さん『コイン詐欺』と『宮内庁職員なりすまし』写真」と、まるで小室圭が詐欺を働いているかのような記事を掲載している。

内容は他愛もないことだ。ツイッターに圭の写真が載っているのだが、それを「彼が宮内庁職員になりすまして、当時イギリスに留学していた眞子さんに会いに行き、帰ってきたところの証拠写真だ」と、悪意のあるツイートをする輩がいるというのである。

文春が調べたら何のことはない、留学生向けの就職セミナーに出ていた時の写真だった。

今一つは、コムロコインという仮想通貨のサイトが立ちあがっているというお話。誰かが、小室圭の名をかたって開いた詐欺まがいのサイトだそうだが、女性セブン(3/4号)は、ここから「小室圭さん『同級生の反旗』でVIP留学取り消し危機」という牽強付会なタイトルを付けて読者を引こうとする。

■もういい加減にバッシング報道は止めよ

週刊大衆(3/11号)には「小室圭さん 新卒銀行時代の『上司恫喝』&『逆ブチ切れ』黒い裏の素顔」というタイトルが載った。

こうした中傷タイトルが新聞広告やネットで流れ、読みもしない連中の間で「小室圭はけしからん奴」という風評が広がっていく。私が当事者なら信用毀損で訴える。

これだけの小室バッシングの嵐の中でも、眞子さんは公務を粛々とこなし、母親の厳しい視線にも臆することなく日々を過ごしているといわれる。

気丈な女性である。これだけを見ても、彼女は結婚すればいい奥さんになれることがわかる。その代わり怒らせたら怖いだろうが。

圭さんが、7月に行われるといわれるニューヨーク州の司法試験に見事合格して、両親の所へ「眞子さまをください」といいに来る日を信じているに違いない。

もういい加減にバッシング報道は止めて、2人を静かに見守ってあげることこそ、今メディアのやるべきことだと思う。(文中一部敬称略)

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦 写真=時事通信フォト)

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