働き方改革法で消えた"残業の抜け道"とは

プレジデントオンライン / 2019年3月21日 11時15分

■「青天井」に天井ができる

2019年4月、時間外労働の上限規制を目玉とする働き方改革関連法が、いよいよ施行される(中小企業は2020年4月から)。

現状の規制内容を確認しよう。時間外労働は、労使の合意に基づいた協定(36協定)の範囲内で可能。協定で定める時間外労働時間には上限があるが(1カ月45時間、年間360時間)、臨時的な特別な事情があれば、特別条項を付けて、上限を超えた労働も可能になる。実質的には青天井だ。

今回の法改正では、抜け道になっていた特別条項に制限をつけた。まず、原則の上限である月45時間を上回る回数は、年6回まで。時間外労働の上限は、年間720時間以内。さらに休日労働込みで、単月100時間未満、複数月(2~6カ月)平均80時間以内になった。

この改正で企業はどのような対応を迫られるのか。社労士の岡田良則氏は次のように解説する。

「じつは単月100時間、複数月平均80時間という上限は、労災で過労死の判定に使われる過労死ラインと同じ。現実は法律の先を行っていて、すでに残業を過労死ライン以下に抑えている大企業は多い。大変になるのは、長時間労働で経営を支えている中小企業でしょう」

■運用の厳格化に注意しよう

ただ、法定の数値だけに注目していると、思わぬところで躓きかねない。改正後は運用が厳格化され、いままで事実上許されていたことが通用しなくなる可能性があるからだ。たとえば過半数労組だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/tunart)

「労使協定は、労働組合が非正規社員も含めて従業員の過半数で組織されていないと有効になりません。以前から法律上はそうでしたが、過半数労組ではないのに36協定を結んだ企業もあった。今回から労働基準監督署に提出する書式が変わり、労組の名称を書く欄に、過半数労組かどうかの確認が括弧書きで加わっています」

新協定届は、「時間外労働をさせる必要のある事由」を書く欄も拡充された。特に、特別条項を設ける事由として認められるのは、製品トラブル、クレーム対応など、一時的・突発的なものに限られる。単なる人手不足といった理由では残業させられなくなる。

「改正後の時間外労働の上限は単月100時間ですが、現在でも特別条項が80時間を超えている企業は労基署がチェックしており、自主点検表が送られてくるなどして、残業の実態を提出させられます。厚生労働省の『新労使協定の書き方例』には、改正で規制に休日労働を含むことになるため、上限が90時間と書いてありました。しかし、これほど多いと、やはり労基署の目に付くでしょう。書き方例よりも残業は減らすべきです」

そもそも法律ギリギリまで働かせるという発想では、人を採用できない時代になった。法律を守るのは最低限。働き方改革を進めて、余裕を持って対応したいところだ。

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=社会保険労務士 岡田良則 写真=iStock.com)

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