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愚痴は言うよりノートに書けば解決する

プレジデントオンライン / 2019年3月15日 6時15分

レアジョブ 本気塾事業部部長 横尾千亜紀さん

そごうで特選雑貨売り場を担当、その後ソーテック、ベルリッツ、アビバと一貫して店舗開発を担ってきた横尾千亜紀さん。数々の失敗を書き留めた「イライラノート」は101冊目になるという。“イラち”を自認する横尾さんは、レアジョブという新しい場所で部長として奮闘する今もまだ、ノートを書き続ける――。

■言葉を選ばず、実名で書いていく

自分の失敗や会社で苛立つことがあると、ノートに書き続けてきた。その名も〈イライラノート〉である。

「私、すごい“イラち”なんですよ」

そう朗らかにいう横尾千亜紀さんの実家には、なんと歴代100冊の(秘)ノートがたまっている。

「最初は気持ちがスカッとするので始めたけれど、やめられなくなったのは理由があるんです。後から読み返すと、自分の何がダメだったのか、これが足りなかったせいなんだということもわかる。ノートに書くことで、自分の課題も整理されるんですよね」

もともと20歳のとき、高校時代の友人に勧められたのがきっかけだ。最初は職場の愚痴や上司に怒られたことなど、毎日イライラしたことを書きなぐるだけだった。イライラの相手は実名もズバリ書き込む。「だから、絶対人には見せられなくて。私にもしものことがあったときは、友人が処分してくれることになっています」と苦笑するが、だんだんノートの役割も変わっていった。

「まだ一般職だったころは、『もっとまともな仕事させろ』とか、『こんなに頑張っているのになぜ報われない……』といった愚痴が多かったですね。あるとき、上司の出張の手配をしてホテルを取り違える失敗をして、出張先から怒りの電話がかかってきたことがあったんですよ。あとでノートを振り返ってみると、仕事にランク付けをして『もっとまともな仕事をさせろ』と不満を持ちながら業務についていたことに気づくわけです。でも本当は、コピー取りにしても、出張の手配にしても、きちんとこなさなければ困る人がいる。当時はそんなこともわかっていなかったんです」

■今年のイライラは今年のうちに解消する

ノートの役割が大きく変わってきたのは20代の終わり、転職先のベルリッツで課長に昇進した頃からだ。当時全国で50店舗だったランゲージセンターを100店舗まで増やすミッションを与えられた横尾さんは、店舗開発プロジェクトを立ち上げ、メンバーの採用・育成や目標管理を担った。

その責任は重く、管理職になっていろいろ本を読んだり、さまざまな人から学ぶ機会が増えていく。〈イライラノート〉にも、なぜ自分がイライラしたのか、相手の言動も振り返り、気づいたことや課題を書き加えるようになった。

「友だちともルールを決めたんです。いつまでも同じイライラを言い続けないこと。年内に解決して、翌年には引きずらないと……」

■人生最大の試練が訪れたときは年間5冊も書いた

そんな横尾さんにとって最大の試練が待ち受けていたのは、アビバで大規模なリストラに携わったときのこと。ベルリッツの社長が同じベネッセグループ傘下に入ったアビバの再生をすることになり、横尾さんに声がかかった。全国360店舗あるパソコンスクールを100店舗まで削減することを命じられ、その中でどうやって従業員を守っていくか、お客さまのために何ができるのかと、最善の策を迫られる。

「そこで全員が、会社は誰のためにあるのかという原点に立ち返ることになった。毎日、闘っていましたね」

イライラノートの一部。ページを縦半分に割り、左にイライラを、右に振り返りを書いていく。

現場では従業員とお客さまを守りたいといい、親会社側はとにかく数字を求めてくるなかで、せめぎ合いが続く。店舗開発に携わってきた横尾さんはいかに効率よく店舗運営を維持していくかが使命だけに、一店舗の坪数を縮小することを考える。それによってできるだけ店舗を残し、従業員も守れないかと新たなプランを出した。最終的には1000人ほどのリストラをせずに済んだが、その渦中では現場とのやりとりにも苦戦したという。

「イライラノートの量もすごく多かったですね。1年間で4、5冊は書きました。誰が○○と言ったとか、あの人はここがわかっていないとか、自分は何のためにこの仕事をやっているんだろうかと、胸にたまるイライラを全部書いていました。すると、皆が危機感を持っていて、自分のために仕事をしている人は誰もいないことがわかってくる。状況を克明に書くことで反省すべき点も見えてきたんです」

■部下に対するイライラがまったく無くなった

自分も気持ちが焦ると、部下への口調がきつくなる。目的をちゃんと説明せず、「何でできないの!」と詰問してしまうこともよくあった。会社が危機的な状況にあったため、それでも部下は黙ってついてきてくれたが、中には悩んで直属の上司である横尾さんを飛ばして社長に相談する部下もいた。

そんなとき社長に教えられたのは、「人は皆違うのだから、自分の常識で判断しない」ということ。部下を育て、いかにチームの成果を最大化するかという基本をあらためて学んだと振り返る。

「やっぱりイライラの要因は不安なんです。結局、不安や焦りを抱えていると、イライラになって出てくる。その不安をどう自信に変えていくかという過程も、イライラノートを見ているとわかります。すごく不安だったことを自分なりに分析し、解決していくと、仕事をしていく上での軸ができていくんです」

部下との関わり方も変わったという。最初にちゃんと目的を伝えたうえで、進捗状況も細かく確認することを欠かさない。出来ないことや抱え込んでいる業務があれば、「全部書いてごらん」と指示し、足りない部分を考えていく。一緒にやっていくなかで理解も深まり、部下に対するイライラがまったく無くなったという横尾さん。今では<イライラノート>に部下の名前が登場することはなくなった。

■今、ノートによく登場するのは上司の名前

ならばノートの出番は減ったのでは? と聞けば、「ところが、そうでもなくて……」とポツリ。

昨年4月、次なるチャレンジをと転職したのが、オンラインの英会話サービス事業を展開するレアジョブだ。ちょうど新規事業として、マンツーマンで英会話学習をサポ-トする短期集中プログラム「レアジョブ本気塾」が立ち上がったところで、事業部長として入社。16名の部署のマネジャーを任された。

横尾さんは店舗開発のノウハウを買われ、さらにはマーケティング、人事、採用、労務、営業などすべてを担うことになる。そこでも失敗は数々あったという。

「経験のない業務をたくさんやらなければいけなくなったという不安があり、自分に知識がないために上手くいかなくてイライラしてしまう。事業を拡大しろといわれて入ってきたのに、なぜ出店させてくれないんですか、などと滔々と書かれている。今、ノートの中でよく名前があがるのは上司ですね(笑)。でも、ノートに分析しながら埋めていくと、経営陣としっかりコミュニ―ケーションをとれていないことに気づく。それが自分の反省だったという、いつものパターンですね」

■5分考えてわからなければ周囲に聞こう

とにかくわからないことは考えても仕方がない。「すいません……」と言いながら、何でもすぐ聞きに行く。スタッフにも常々言うのは「もう5分以上考えるな、わかんなかったら聞いておいで」と。自分も管理職だから恥ずかしいなどと臆せず、部下にも教えてもらう。すると上司や部下も親身になって答えてくれるのだ。

ちょうどレアジョブに入社したとき、100冊目に入ったイライラノート。まもなく1年が過ぎ、すでに101冊目になった。

「まあ、よくこれだけイライラしてきたなと思うし、まだまだ何冊続くのかわからない。今でもイライラは増えていて、たぶん一生無くならないと思います(笑)。でも、このノートに出てきた登場人物は私を成長させてくれた人なので、もう逆に感謝していますね」

過去に誰が登場してきたかは秘密で……と照れる横尾さん。イライラの背景には自分の失敗がかくれている。それを解決することで自信が生まれ、成長の証になっているとあくまで前向きだ。これまで学んできたことを、部下にもしっかり伝えていきたいと思っている。

いったい何冊まで続くことだろう。だからこそ、「自分の成長記録」と楽しんでもいるようだ。

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横尾 千亜紀(よこお・ちあき)
レアジョブ 本気塾事業部 部長
1989年、そごう入社。専業主婦、ソーテックを経て99年、ベルリッツに転職し初めて管理職に。アビバの立て直しを手掛け、2018年より現職。

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(レアジョブ 本気塾事業部 部長 横尾 千亜紀 文=歌代幸子)

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