なぜサイゼリヤの客離れが止まらないのか

プレジデントオンライン / 2019年3月19日 9時15分

撮影=プレジデントオンライン編集部

ファミレスチェーン「サイゼリヤ」の客離れが止まらない。既存店客数は15カ月連続で前年割れ。低価格でイタリアンを楽しめる“サイゼ”に何があったのか。店舗運営コンサルタントの佐藤昌司氏は「全席禁煙を進めた結果、『ちょい飲み』で来ていた客が離れてしまったのではないか」と指摘する――。

■2017年秋からマイナス傾向が続く

イタリアンファミレスチェーン「サイゼリヤ」の客離れが深刻だ。2月の既存店客数は前年同月比1.7%減とマイナスだった。前年割れは15カ月連続となる。既存店売上高も同様に不調で、2月は1.5%減。11カ月連続でマイナスとなっている。

サイゼリヤの既存店客数は15カ月連続で前年割れとなっている(図表=2018年8月期決算説明会資料より抜粋)

それまでは好調だった。2017年8月期の客数は前期比1.6%増、16年8月期は1.8%増、15年8月期は1.2%増と、3年連続で前年を上回っていた。しかし17年秋から客離れが起きるようになった。以降、現在までマイナス傾向が続いている。

顧客満足度も低下している。日本生産性本部サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数飲食部門」で18年度は5位となったが、前年度の4位から後退してしまった。順位だけでなく、顧客満足度スコアもわずかに下がった。

サイゼリヤは、本格的なイタリア料理を低価格で楽しめることで人気を博してきた。例えば「ミラノ風ドリア」(税込み299円)とパスタ料理「アーリオ・オーリオ」(同299円)、さらにグラスワイン(同100円)を4杯注文しても、1000円でお釣りがくる。1000円でこれだけ楽しめるチェーン店を、筆者はほかに知らない。「サイゼ飲み」という言葉が広まるほど、居酒屋がわりにも利用されている。

■連結売上高は順調に伸びている

サイゼリヤが低価格を実現できているのには理由がある。食材の調達から加工、物流、店舗での販売まで一連の工程をできるだけ自社で行うようにし、中間コストを極力省いているためだ。国内の5カ所に自社工場を設け、食材を加工して毎日店舗に届けている。パスタやチーズ、ワインなどはイタリアから直輸入し、一部の野菜は関連会社の農場で栽培。さらに牛肉には、オーストラリアに加工工場を設立し、ハンバーグや、看板メニュー「ミラノ風ドリア」のソースを製造している。

サイゼリヤの売上高は順調に伸びている。直近の連結売上高は前期比3.9%増の1540億円(18年8月期)だった。10年前の849億円(08年8月期)と比べると、1.8倍に増えている。また国内店舗数は1469店(18年8月期)で前期に比べて45店増えている。既存店売上高は客離れでマイナスだったが、店舗数の増加で全店売上高はプラスだ。これは海外事業が増収だったことも寄与している。

■「ちょい飲み」ブームが落ち着いた

全社レベルでは成長が続いているので、一見すると何も問題がないように見える。しかし、主力の「サイゼリヤ」は国内で客離れに苦しんでおり、今後の成長が危ぶまれている。客離れの原因は何だろうか。

ひとつは「ちょい飲み」ブームの一服がある。サイゼリヤの客数が伸び始めたのは15年8月期からだが、この頃から「ちょい飲み」がブームになった。牛丼チェーン「吉野家」は15年から酒類とつまみを提供する「吉呑み」の本格展開を開始。ファミレス各社も参入し、「ファミ飲み」という言葉も生まれた。飲食店各社が「ちょい飲み」に参入し、市場が活性化したわけだ。

このブームで、「サイゼ飲み」にも注目が集まるようになった。メディアでは「サイゼでせんべろ」(サイゼリヤで1000円でベロベロに酔えるの意)という言葉も踊った。これは、サイゼリヤの客数が伸びた時期と重なる。

2015年から17年頃までの客数増加の裏に、「ちょい飲み」ブームがあったと考えることはできるだろう。こうしたブームが落ち着くと、反動で客離れが起きているようにみえる。

■禁煙化による客離れは短期で済む

もうひとつは、「全席禁煙」だ。サイゼリヤは17年末に全店舗を禁煙化する方針を表明した。19年9月までに、喫煙ブースを設けて、客席は全席禁煙に移行するという。1月末時点では全店舗の6割強に当たる約700店が全席禁煙になった。これにより一部の喫煙客が離れていったのではないか。

喫煙者は減っているとはいえ、全く無視できるほどではないだろう。サイゼリヤは「サイゼ飲み」という言葉があるように、類似業種の中では酒類の販売が強い。一般的に喫煙者と相性がいいとされる「居酒屋」に近い側面があり、サイゼ飲みを楽しみながら喫煙していた客は、全席禁煙でほかの店に流れてしまったのだろう。

もっとも、禁煙化による客離れは短期的なものだろう。中長期的には喫煙を嫌う人を取り込むことが期待でき、喫煙客の離反分の穴埋めはできる。

昨年6月からほぼ全店で全席禁煙に踏み切った居酒屋チェーン「串カツ田中」は、喫煙客は減ったものの、禁煙化をアピールしたキャンペーンを実施するなどしてタバコを嫌う家族客を新たに取り込むことに成功し、既存店客数は好調に推移している。2月の客数は前年同月比6.2%増となり、5カ月連続で前年を上回った。サイゼリヤも、やり方次第で同様に新規顧客を獲得できるだろう。

■増税で据え置きも値上げも危険な道

ただ、今後の見通しは決して明るくはない。特に注意が必要なのは10月に予定される消費増税だ。サイゼリヤは、「299円」などと端数をつけて設定した価格で値引き感・割安感を演出してきた。端数価格を維持するため、14年4月の消費増税時は主要メニューで税込み価格を据え置いた。このため10月の消費増税でも、主要メニューの価格を据え置く可能性が高い。

増税時に価格を据え置けば、サイゼリヤの利益率は大きく低下するだろう。ただでさえ食材費や人件費などのコストは高騰している。サイゼリヤの18年8月期の売上高営業利益率は5.6%。前期から2ポイント低下している。かつては10%を超えていた時期もあった。利益率のさらなる低下は避けたい。

反対に、増税を機に値上げに踏み切れば、さらなる客離れが起きる恐れがある。居酒屋チェーン「鳥貴族」は17年10月に税抜き280円均一だった価格を298円に引き上げたところ、深刻な客離れが起きた。現在も客離れが止まらず、2月の既存店客数は前年同月比3.2%減。15カ月連続で前年割れが続いている。値上げ幅や対象メニューにもよるが、サイゼリヤも同じ道を歩まないとも限らない。

■売りの「コスパの良さ」は失えない

サイゼリヤはコストパフォーマンスの良さが命だ。前述の顧客満足度調査でも、それは明らかになっている。コスパの良さを表す指標の「知覚価値」は飲食部門において18年度は1位だった。これで4年連続1位となっている。だが、知覚価値スコアは前年度から低下してしまった。外食企業の競争激化で、サイゼリヤのお得感が低下したと考えられる。この状況で、主力メニューの値上げは難しいだろう。

いずれにせよ、サイゼリヤは新機軸を打ち出す必要がある。特にメニューの強化が必須だ。コスパの良さを維持することに加え、消費者に飽きられないよう、付加価値の高いメニューを継続的に提供していく必要があるだろう。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司 撮影=プレジデントオンライン編集部)

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