地方選で安倍自民党の足並みが乱れるワケ

プレジデントオンライン / 2019年3月21日 11時15分

ダブル選挙に関して、記者会見する大阪府の松井一郎知事(左)と大阪市の吉村洋文市長=3月8日、大阪市中央区(写真=時事通信フォト)

統一地方選は3月21日、11の道府県知事選の告示で火蓋が切られた。中央では国会審議も終始与党ペースで「安倍1強」は揺るぎないように見えるが、地方での戦いは自民党内の足並みの乱れが目立ち、違った景色が見えてくる。選挙結果によっては「安倍1強」の終わりの始まりとなるかもしれない――。

■大阪の陣、最悪なら3連敗の悪夢も

統一地方選は都道府県、市区町村の首長選、議会選を4年に1回集中的に行う選挙。知事選は松井一郎知事、吉村洋文市長の辞職で「ダブル選」が行われることになった大阪も含めて11の道府県で行われる。

11知事選は4月7日に投開票が行われる。ここで自民党は苦戦する可能性がある。大阪は「大阪都」構想を巡り、大阪維新の会の代表である松井氏が仕掛けた選挙。当然、市長選に出る松井氏、知事選に出る吉村氏が連勝を目指す。

一方、自民党側は、知事選には副知事時代、大阪都構想に異論を唱えた小西禎一氏、市長選には参院選の候補者だった柳本顕氏をくら替え出馬させる「現状では最高の布陣」で陣形を整えたが、出遅れ感は否めない。

大阪では、統一地方選の後期日程(21日)に行われる衆院大阪12区補選も待ち構える。こちらは自民党の北川知克氏の死去に伴う選挙。北川氏のおいを擁立する「弔い選挙」で必勝を期したいところだが、もし知事選と市長選で連敗するようなことになれば、2週間後の衆院補選にも影響しかねない。

それを意識しているのだろう。3月15日、市長選出馬が決まった柳本氏の訪問を受けた安倍晋三首相は「府知事選と市長選を勝ち抜かないと次の補選にも響く」と危機感をあらわにした。大阪で3連敗するようなことになると、政権がぐらつくことを予感しているのだ。

他の10知事選を見通すと、1つのキーワードが浮かび上がる。「保守分裂」だ。

■福岡、島根、福井、徳島では「保守王国」が割れた

10知事選のうち、福岡、島根、福井、徳島の4県で保守分裂選挙となる。このうち福岡、福井、徳島の3県は、もともと自民党と良好な関係だった現職に、自民党の全体もしくは一部が反旗を翻す構図。島根は引退する現職の後継候補を一本化できずに分裂選挙となった。

4県は、いずれも自民党が伝統的に強い保守王国だ。4年前、2015年の前回選挙では、いずれも自民党などが推す現職が圧勝している。ところが、今回は「王国」が割れる。

4年前の2015年の政治状況をおさらいしておきたい。

この年は4月に統一地方選が行われたほか9月に自民党総裁選が行われ、安倍氏が無投票当選した。国会では憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を一部可能にする安全保障関連法を成立させた。

この年の9月には安倍氏の妻・昭恵氏が森友学園で講演し学園小学校の「名誉校長」を受諾。また、愛媛県の文書によると、加計学園の加計孝太郎理事長が同年2月に安倍氏と面会。獣医学部新設計画について話し合ったのではないか、という疑惑にさらされている。

■「野党はダメ、しかし安倍政権には疑問」というねじれ

また、最近になって明らかになったことだが、毎月勤労統計を巡り、統計方法の変更を首相周辺が厚労省に働き掛けたのではないかと疑われているのも同年9月のことだ。

つまり安倍政権の政策、政局面での問題の多くがこの年に集中している。このころから強権的ともいわれる政権運営が目立つようになり、官僚たちは忖度するようになった。2015年は「安倍1強」が確立された年、と言ってもいい。

その後4年間、中央政治では「安倍1強」が続く。しかし、地方では人口減少や景気回復の遅れなどによって安倍政権に対する疑問の声が高まる。昨年9月の自民党総裁選で安倍氏の対抗馬・石破茂元幹事長が地方党員票の45%を確保したのも、安倍政権に対する地方が抱く疑問の表れだ。

野党には任せておけない。しかし安倍政権には疑問を感じる。このねじれが保守分裂が続出する一因になっている。

■本来なら自民党は負けるはずのない選挙

この結果、本来なら自民党は負けるはずのない選挙で、勝敗が見通せない状態に追い込まれている。先ほど紹介した4知事選のすべてで自民党が推す候補が敗れるわけではないだろうが、いくつか取りこぼせば空気は悪くなる。さらに大阪12区に加えて沖縄3区の衆院補選も楽観できない。

4知事選は、もともと自民党支持層の中での争いだ。今回自民党が推す候補が敗れても、1、2年たつ間に勝った知事と自民党の関係は改善されることも考えられる。そういう意味ではどちらが勝っても影響は限定的という見方もあるだろう。

しかし、結果として敗北がつくということは、7月の参院選に向けて勢いをそがれるのは間違いない。

また、知事選で「分裂選挙」を行った感情的しこりが残れば参院選でも挙党態勢をとれなくなる可能性がある。

■安倍自民党は「身内の戦い」に弱いという仮説

ここまで書いてきたことでお気づきの人もいることだろう。知事選の地方選の多くは「野党不在」だ。11ある知事選で、自民系と複数の野党が推す候補が戦う「与野党対決型」といえるのは北海道知事選ぐらい。「安倍1強」の中、野党はこの4年間、中央でも地方でも浮上の目をつかめていない。ただし、この野党の低迷が、今回の統一地方選での保守分裂を生んでいるというのは皮肉な展開だ。

自民党幹部はこうつぶやくのだ。「野党相手の戦いならば戦い方も心得ているし、負ける気はしない。しかし身内が相手となると話は変わってくる」。

安倍氏は2012年暮れに政権に戻ってから6年余。衆院選、参院選などで連戦連勝しているが、小池百合子氏が出馬した16年の都知事選、小池氏が「都民ファーストの会」を率いて挑んだ翌年の東京都議選では、ともに惨敗している。

小池氏は都知事選に出馬する前は自民党所属の衆院議員で、自民党支持層の多くも小池氏になびいた。こちらも「保守分裂選挙」といってもいい。安倍自民党が保守分裂による身内の戦いに弱いという仮説に立てば、統一地方選は思わぬ傷を負うことになるかもしれない。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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