天皇陛下を「盗っ人」と呼ぶ韓国の卑劣さ
プレジデントオンライン / 2019年3月22日 15時15分
■朝鮮半島にも伝わる「盗っ人たけだけしい」
今年2月、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が「日本は盗っ人たけだけしい」と発言したことが大問題となった。
文国会議長は、先に慰安婦問題について「天皇陛下が謝罪すれば解消される」などと発言。この発言に日本政府が謝罪と撤回を求めたことに対し、「謝罪すべき側がせず、私に謝罪を求めているのは盗っ人たけだけしい」「(謝罪すべきは)現職の首相が1番目で、2番目が天皇になる」と反発したのだ。
いわば首相や天皇陛下を「盗っ人」呼ばわりしたも同然である。日本政府には同議長の非礼な発言を忘れず、何度でも謝罪と撤回を求めていただきたいと願う。と同時に、ふと気になったことがある。
「盗っ人たけだけしい」という言葉は、韓国にあるのだろうか――。
そう思って調べたら「賊反荷杖(チョクバンハジャン)」という言葉が、それに該当するそうだ(同じことが2019年1月12日付けの産経新聞「産経抄」でも述べられていた)。中国由来かと思えば、どうやら朝鮮半島にも古くからある言葉のようである。
つまりは「悪事を働いた賊が、開き直って武器(杖)を振り上げ抵抗する」という意味。日本語訳に近いとはいえ「賊」という文字から、「盗っ人」よりも強い表現に受け取れる。
■2万人が600人に敗れた「応永の外寇」
朝鮮半島の人が、日本を「賊」よばわりする根拠として考えられることは何か。近代以前の歴史を紐解けば「倭寇(わこう)」の存在がある。
倭寇とは13世紀から16世紀に活動した倭人、主に日本人が行なった朝鮮半島沿岸での海賊行為を意味する言葉だ。「倭」は「魏志倭人伝」でも有名な、中国発祥の日本の蔑称である。
実際は日本人だけでなく、高麗(朝鮮)人も混ざっていたし、中国人の海賊も多かった。当時の東アジアには国籍の概念は存在しないから、日本列島の人であろうが、大陸や半島に住む人であろうが、明確に区別されなかったのである。
ただ、倭寇の活動は「盗っ人」という生易しいものではない。時に戦争へと発展した。
あまり知られていないが、朝鮮は対馬を倭寇の根拠地と考え、これを攻めたことがある。1419年(室町時代の応永26年)、蒙古襲来の「元寇」から、およそ140年後のことだ。
朝鮮国王・太宗の命令で、朝鮮は2万人近い兵で対馬に上陸した。しかし、結果は600人ほどの対馬軍(日本軍)による鉄壁の守備に阻まれて敗退。甚大な被害を出し、つないでいた船も多く焼かれて大損害を被った。一説に朝鮮軍は4名の将軍と2000人以上の兵が討たれたという。これが「応永の外寇」である。
■「盗っ人」発言は文氏の本性
当然、対馬には海賊以外にも多くの住民がいた。そもそも「倭寇討伐」は口実で、朝鮮軍は実際には対馬占領を狙っていたという説もある。対馬の人にとってみれば、攻めてきた朝鮮軍から島を防衛したに過ぎなかったことになる。
しかし、現在の韓国人の価値観では「倭寇」とは日本人のことに他ならず、「応永の外寇」も正当防衛ではなかったと認識されているだろう。
「応永の外寇」当時、朝鮮の官僚は日本人を「倭奴(わど)」と文書に記した。いまでも韓国の政治家のなかには、身内同士で日本人をその蔑称で呼ぶ人もいる(趙慶泰=チョ・ギョンテ氏など)。
冒頭の文氏の発言も、普段から日本を「盗っ人」と考えているからだろうし、その身内言葉をうっかり公にしてしまったのかもしれない。日本人記者の質問には慎重に口をつぐむのも、その表れだろう。
■仏像の盗難、竹島問題から見えた韓国の性質
1990年代以降、壱岐島にある安国寺の経典(大般若経)や、対馬の観音寺などの仏像が韓国人窃盗団に盗まれ、韓国へ持ち去られる事件が相次いでいる。持ち去られたまま返還されていないものが多い。
日本側は返還を要求しているが、韓国側は「倭寇や秀吉の朝鮮出兵で略奪されたものを取りかえしただけ」と応じない。しかし、その根拠となる文献は存在しない。朝鮮半島から伝来したにしても、貿易で輸入されたものも多く、すべてを略奪品とみなすことはできないはずだ。
竹島の問題もある。日本政府は竹島を「歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土」としている。
しかし、韓国も1952年から竹島(韓国名:独島)の領有権を主張、それを占拠し続けており、司法解決の申し入れさえも拒否している。日本の船が島に近づけば拿捕(だほ)され、話し合いの機会すら持てない。
一体どちらが「盗っ人たけだけしい」といえるだろうか。
そもそも、韓国はすでに漢字文化を棄てた国家。本当にその意味を理解できているのだろうか? と首を傾げざるをえない。
■一連の問題から連想したかぐや姫
ここからは余談になるが、漢字文化圏の人間として考えたい。この「盗っ人たけだけしい」(猛々しい)という言葉は、いつごろからあったのか。
文献を調べると、江戸時代初期の俳諧集『玉海集(ぎょっかいしゅう)』に用例が出てくる。「藪きはの華ぬすびとやたけだけし」(藪のそばに咲く花を盗んでいく輩は、なんとも図々しいものだ)とある。
同じく『毛吹草(けふきぐさ)』には、「ぬすびとの昼寝もあてがある」(盗っ人が昼寝をするのは夜の稼ぎに備えてのこと、つまり、なにか思惑があってしているのだ)と、意味や用例は違うが、その言葉を使った一節がある。
ほかにも「盗人をみて縄をなう」「盗人の昼寝」「盗人に鍵を預ける」など、「ぬすびと」に関する言葉は、江戸時代にはすでに広く使われていたようだ。
だが、今回の韓国との問題で、私はそれよりずっと古い平安文学の『竹取物語』の一節を連想した。
お読みになった方はご存じかと思うが、ヒロインのかぐや姫は、言い寄ってくる5人の男に「私の望むものを持ってきた方に嫁ぎます」と条件を出す。
その望みは「釈迦が使った仏の御石(みいし)の鉢(はち)」「金銀玉でできた蓬莱(ほうらい)の玉の枝」「焼いても燃えない火鼠(ひねずみ)の皮衣」など。どれも絶対に手に入らないような無理難題ばかりだ。
しかし、なんとしてもかぐや姫を我がものにしたい――。男たちは無謀にもチャレンジするが、もちろん、ことごとく失敗した。
■その言葉を言えるだけの資格があるのか
そのうちの一人、大伴(おおとも)の大納言が頼まれたものは、龍の首に付いた珠(たま)だった。大伴は龍を探すため、勇ましく海へ漕ぎ出すが、やがて雷雨と嵐に見舞われて遭難。ほうほうの体で陸へ戻ってきた。
しかし、彼は哀れにも海上で病をわずらい、腹は大きく膨れ上がり、2つの目はスモモを付けたかのように大きく腫れあがってしまった。龍は水神である。その宝を奪おうとしたので、怒りに触れたのだ。
大伴は懲り懲りといった顔で従者たちをねぎらい、「あのかぐや姫とかいう“大盗っ人”は、我々を殺そうとしたんだ。もうあんな女の家に近づきたくもない!」と、悪態をついた。かぐや姫との結婚を夢見ていた彼は、離婚までしていた。そのこともあって彼は大きく評判を下げ、もの笑いの種となってしまう。
恋い焦がれた人を罵り、笑いものになった大伴の大納言だが、彼もそれ相応の努力はした。最初からその気(嫁入りする気)がなく、相手のことを慮らない要求をしたかぐや姫を「大盗っ人」と呼ぶぐらいは許してもいいと思う。
この『竹取物語』のことは連想であって、現在の日韓関係に当てはめるつもりは毛頭ない。
ただ、相手を「盗っ人」呼ばわりするのであれば、近代のみならず、日朝韓にまつわる歴史上の出来事をしっかりと認識し、問題解決に向けた努力を重ねてからにしてほしいと断固申し上げたい。
(歴史著述家/紀行作家 上永 哲矢 写真=時事通信フォト)
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