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今春大注目「貼る花粉症薬」の長所と短所

プレジデントオンライン / 2019年3月28日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

花粉症の季節がやってきた。どうすれば厄介な症状を軽減できるのか。医師の筒井冨美氏は「2018年に初登場したテープ式の薬は、試す価値があるかもしれない」という。7つのポイントにわけて、花粉症対策の最新常識をお伝えしよう――。

■テープ式「貼る花粉症薬」はどれくらい効くのか

今年も花粉症のシーズンがやってきた。街にはマスクを着用した人も目立つ。

花粉症は、主に季節性アレルギー性鼻炎、季節性アレルギー性結膜炎、スギ花粉皮膚炎、気管支ぜんそくなどに分類され、鼻炎(くしゃみ、鼻づまりなど)、結膜炎(かゆみ、充血など)、皮膚炎(かゆみなど)、ぜんそく(咳)といった症状が出る。

今年はまだ発症していない人も「早めに耳鼻科で薬をもらって飲まなきゃ」と臨戦態勢かもしれない。もちろん、そうした旧来の薬もあるが、最近は新しい花粉症治薬・対策が出てきている。

【1:「貼る花粉症薬」登場】

花粉症治療薬には主に抗ヒスタミン薬を投与する内服薬・点眼薬・点鼻薬があるが、2018年に新タイプが登場した。貼る花粉症薬だ。「サロンパス」などのテープ薬に定評のある久光製薬が発売する初のテープ式の抗ヒスタミン薬「アレサガテープ」だ。

商品説明書によれば、貼るのは鼻ではなく、上腕部や胸部、腹部。1日1枚貼ると24時間かけてジワジワと浸透してゆく。一般家庭ならば脱衣所に置いといて、風呂上りに貼り替えるといいかもしれない。「貼る薬」という手軽さもあり、今春はその認知度が高まると思われる。

難点は、新薬ゆえに「1回の受診で処方される日数が14日分以内」という制限があることだ。ただ、「年末年始」「海外渡航(国内旅行は不可)」などの格別の事情があれば最大30日までの長期処方は可能である。そして「2019年のゴールデンウィーク10連休では長期処方可能」という通達が厚生労働省より発令済みゆえ、病院を受診する際には担当医と相談してほしい。発売1年を過ぎた2019年5月以降は、特に問題がなければ長期処方解禁になる見通しである。

少し残念なのは、現在、適用が成人に限られていることである。薬を飲むのが苦手な子供たちでもテープ薬ならOKというケースもあり、今後の適用拡大が望まれる。

【2:病院に行くヒマがなければ「スイッチOTC」】

「スイッチOTC」の花粉症薬をご存じだろうか。これを選べば、病院へ行く時間と費用が省かれるというメリットがある。OTCとはover the counter、「カウンター越しに指導を受けて買う薬」の略であり、市販薬・大衆薬とも呼ばれている。

ポイントは、もともとは医療用医薬品だったという点で、長く問題なく使用されたことで安全性が高いと判断され一般用に切り替えられた(=スイッチした)。それだけに概して効き目がいいと言われる。

この一般用医薬品はリスクに応じて「要指導、第一類、第二類、第三類」に分類されており、第二類・第三類はネット通販による購入も可能である。その第二類に分類されるスイッチOTCの花粉症薬の代表的なものは(商品名・主成分)、アレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩)、アレジオン(エピナスチン塩酸塩)、エバステル(エバスチン)、ザジテン(ケトチフェン)などだ。

病院を受診する手間ヒマが惜しい社会人ならば、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者と相談して、こうした薬品を選ぶといいだろう。また、より安価なものを求めるならばアレグラのジェネリック医薬品であるアレルビなど、成分は同じで価格控えめの後発品もある。

これらのスイッチOTC薬は、「セルフメディケーション税制」の対象になり、「一家庭で年間1万2000円を超えた額は税金控除」になるので、領収書は忘れずに保管しておこう。

■効く人には効く、漢方薬、養命酒、鍼、サウナ

【3:目のかゆみには冷却目薬、保冷剤】

目にくるタイプの花粉症には目薬を使用することになる。かゆみを克服するコツは、かきたくなる気持ちをこらえて、とにかく冷やすことである。目薬は冷やしておき、さらにかゆくてたまらないときには保冷剤などをまぶたの上から当てておけば、かゆみを紛らわせることができる。風呂などで体温が上昇した時にもかゆくなりやすいが、じっとこらえてシャワーなどで冷水をまぶたの上からあててしのいでほしい。

外出時にはゴーグル型眼鏡で花粉の侵入を防ぐことが効果的である。近年では格安メガネ店が増えたので、数千円で度付きの花粉症眼鏡を購入できる(写真参照、筆者私物)。見た目はあまりスマートとは言えないが、「花粉症眼鏡+マスク」で通勤していると周囲に同情されて労わってもらえるかもしれない。

花粉症対策メガネ(著者私物)
【4:漢方薬が効く体質の人も多い】

体質にもよるが、漢方薬が効くケースもある。漢方でアレルギー治療といえば小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が処方されることが多い。花粉症以外にも喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性の病気を持っているタイプにお勧めである。

一方、概して健康体だが、花粉症で鼻症状だけが強いタイプには葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)だ。かぜ薬でおなじみの葛根湯に川芎(せんきゅう)と辛夷(しんい)を加えたものである。「冬に風邪をひいたときに葛根湯を飲んだらよく効いた」という人向けである。

通販で購入することも可能だが、初回は薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談してほしい。

【5:人によってはすごく効く、養命酒・鍼・サウナ】

医学的なエビデンスはないが、「(人によっては)すごく効く」という民間療法もある。

例えば、薬用養命酒だ。「効能」は滋養強壮、冷え性、肉体疲労などをうたっているが、医師の中には風邪予防や花粉症対策として飲む者もいる。配合された生薬が免疫力を高める効果が期待できるという。小瓶ならば2000円未満なので、興味があれば試してもよいだろう。

鍼(はり)が効く人もいる。自律神経には、昼の活動時に活発になる交感神経と、夜の安静時に活発になる副交感神経があり、両者のバランスが乱れると花粉症などの不調が現れやすいと言われている。この自律神経のバランスを整えるとされる鍼で、「花粉症が改善された」という患者がいる。花粉症の症状の影響で固くなった肩や首が柔和になっただけかもしれないが、近くに評判の良い鍼灸院があれば試す価値はあるかもしれない。

花粉症対策のためにサウナに入る人もいる。サウナ愛用者は「高温サウナと水風呂を交互に入る温冷交代浴をすることで自然治癒力が高まった」「自律神経のバランスが整った」「花粉症にも効いた」などと話す。利用料は1回数百円なので気分転換がてら試してもよいかもしれない。

■鼻の粘膜をレーザーで焼く手術を受ける人も増えている

【6:花粉症の根本治療には免疫療法】

花粉症を根本的に治す方法はないのだろうか? スギ花粉・ダニアレルギー鼻炎については舌下免疫療法が確立されている。少量の原因物質を毎日なめることにより体を慣らせて、アレルギー反応を弱めていく治療法である。早ければ数カ月で効果が表れるが、トータルな治療期間が約3年と、根気が必要になる。

スギ花粉に対しては、従来のシダトレンというエキス剤に加えて、シダキュアという錠剤が2018年に発売開始になった。シダトレンは冷所保存で成人のみ適応だったのに比べて、シダキュアは常温で保管できて小児にも適応が拡大されるようになった。免疫療法の開始は花粉を避けた6月~11月になる。すべての耳鼻科で扱っているわけではないので、あらかじめ取り扱い医療機関をネットなどで調べたうえで受診しよう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TAGSTOCK1)
【7:スギ以外の花粉症にも効くレーザー手術】

花粉のシーズンオフに鼻の粘膜をレーザーで焼く手術を受ける人も最近増えている。正式には、下鼻甲介粘膜焼灼術(かびこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ)と言われ、レーザーで鼻の粘膜を焼く手術である。手術時間は10~20分程度、表面麻酔を使用するので痛みも深刻ではなく、入院の必要もない。保険適応になるので、3割負担でも1万円程度だろう。

治療時期としては、花粉シーズンの1~2カ月前(スギ花粉だったら1月か2月頃)がお勧めである。あらかじめ取り扱い医療機関をネットなどで調べたうえで受診して、次のシーズンに備えてほしい。

(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美 写真=iStock.com)

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