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知らないと大損する「相続大改正」の勘所

プレジデントオンライン / 2019年3月29日 9時15分

相続をあつかった週刊現代の特集誌面。タイトルには「死」という言葉がならぶ。(撮影=プレジデントオンライン編集部)

■「死後の手続きはこんなに大変です」がベストセラーに

相続ブームである。

きっかけは40年ぶりに相続法が大改正されたことだった。旧相続法が、高齢化社会や社会環境の変化に対応できなくなったためである。

いち早く相続法改正の特集を組んだのは『週刊現代』だった。だが、私を含む多くの出版関係者は、相続が読者増につながるとは、正直思っていなかった。それでも『現代』は、意固地に見えるほど相続にこだわった特集を毎週のように続けた。

今年の正月明けには「老親とあなたに降りかかる面倒な『現実』死ぬ前に用意しておくこと」(1/19・26号)という大特集を組んだ。それが対前年比130%増という“快挙”を成し遂げ、業界の話題をさらった。

これに驚いたライバル誌も遅れてはならじと追随した。『週刊文春』『週刊新潮』『週刊朝日』『サンデー毎日』、テレビのワイドショーも参入して、相続が大きな社会的関心事になったのである。

さらに相続問題の元祖『週刊現代』は、2月15日に『週刊現代別冊  死後の手続きはこんなに大変です』(980円)として発売したのである。3月16日の朝日新聞朝刊の広告で、「たちまち重版! 22万部!」と謳っているから、これも大成功といえるだろう。

■団塊ジュニアにとって「自分の取り分」は重大な関心事

この相続ブームはまだまだ続くはずである。なぜなら、この背景には今の日本が抱えている根深い“病根”があるからだ。

敗戦後に起きたベビーブームが産み落とした団塊世代も全員が高齢者になり、第2次ベビーブームで生まれてきた団塊ジュニアたちも中高年になって、定年、年金生活が目前に迫ってきている。

社畜といわれながらも、高度成長期からバブル崩壊まで会社に尽くし、色・カネ・出世を人生の目標として生きてきた団塊世代は、定年後も年金をもらって悠々自適とはいかないまでも、生きていける「勝ち逃げ世代」といわれる。

だが、団塊ジュニアたちは、バブル崩壊とソ連崩壊による「就職氷河期」に遭遇し、「不運の世代」とも呼ばれ、何とか就職できても、年功序列、終身雇用は崩壊していて、定年後に不安を抱える人たちが少なくない。

なかには、育児と親の介護をしなくてはいけないダブルケアに苦しむ者、介護離職する者もいる。彼ら、彼女たちにとって、親がどれぐらい財産を残してくれるのか、自分の取り分はどれぐらいあるのかは重大な関心事である。

■相続で揉めるのは「遺産5000万円以下」が多い

老親の死を待ちながら、ベットの横で現代の相続特集を貪り読む息子や娘たち。彼らの妻や亭主たちも一緒になり、「親父の貸金庫の暗証番号を聞いておかなくては」「生命保険には入っていたかな。あれは時効が3年だそうだから、探さなくては」などと、死後のカネを漏らさず手に入れる算段をしているのである。

私事で恐縮だが、私の両親はすでに亡くなっている。母親が先に逝ったため、相続手続きは親父が亡くなった時だけだった。

私は2人兄弟である。親父が亡くなる半年ぐらい前に公証人の面前で「家は長男に譲る」と言ってもらって、遺言書を作成した。家は私が譲り受け、現金は弟に渡すということで落着した。

煩雑な手続きは、私の友人の司法書士に依頼した。したがって、現代が特集しているようなことはやらなかったが、銀行預金や生命保険がどうなっていたかについては、記憶が定かではない。もしかすると見落としていたかもしれないと思わないでもないが、今更悔やんでも仕方ないと思っている。

相続で揉めるのは、遺産が1000万円から5000万円程度のケースが多いといわれる。

■同じ敷地内に別々に家を新築し、まったく話をしない姉弟

私の知人でも、こういうケースがあった。都内に母屋と離れのような形で、母屋に母親と長女夫婦、その子供たちが住み、離れには長男夫婦。連れ合いを早く亡くした母親は元気な人だったが、90歳を過ぎるころから認知症が始まったようだ。

たしか93歳ぐらいで亡くなったと思うが、死後、姉から、母親の遺言で、この家は私がもらうから、あなたたちはここから出ていってほしいと通告された。弟がいるが、彼は遺産を放棄することを承諾していた。ただ、長男は「そうですか」と出ていけるわけはない。

それに、亡くなる間際に書かせたという公正証書遺言はあったが、認知症が進んでいたため、そうした判断はできないはずだと主張し、ついには法廷闘争になった。

結局、長男の申し立てが一部認められ、遺留分以外に、今住んでいる土地の相続権を勝ち取ったのである。

同じ敷地内に別々に家を新築したが、一切行き来もしなければ話もしない。姉弟は他人の始まりである。仲の良かった兄弟姉妹が、相続をめぐり仲たがいしてしまうというのは、決してまれな話ではない。

■連続特集を通読した結論は「遺言書を書いておけ」

今回、この原稿を書くために、現代の新年合併号から連続特集している相続問題をじっくり読んでみたが、その手続きの煩雑さに頭が混乱してきた。繰り返しも多い。

結論は、自分の死後、兄弟姉妹、親族間で揉めてほしくなければ、やることは1つだということである。遺言書を書いておくこと、これに尽きる。

一方で、相続人のいない「おひとりさま」なら死後の準備は不要だと考えるのは大きな間違いだという。

独居の人が亡くなった場合、警察は住民票や戸籍をたどって6親等までの親戚に連絡をしてくれるそうだ。ここで、「長い間会っていないから」と断れば、役所が近隣住民や地域の民生委員に連絡をしたり、賃貸に住んでいた場合は大家さんに依頼したりすることになる。

では引き受けた場合どうなるのか。故人の死亡届や火葬許可証を提出して火葬するのだが、この費用だけでも20万円かかるという。

さらなる問題は故人の遺品の整理だ。親戚やアパートの大家などの利害関係者が、家庭裁判所に申し立て手続きをして、相続財産管理人として弁護士や司法書士を選任することになるが、監理・整理された遺産は、特段のことがない限り、国庫へ納められてしまう。しかも、遺産が少なければ管理人に報酬を数十万から100万円ぐらい前払いしなくてはいけないという。

■独身で、カネもない、親しい知人もいない場合

したがって、埋葬まではやっても、遺品整理はやらないことが多い。賃貸の場合は、大家が独断で遺産を処分してしまえるが、当然費用がかかるため、高齢者には家を貸さない大家も多いそうだ。

では、誰にも迷惑をかけないためにはどうするのか。遺産の整理を代行してもらう家族信託と、死後の手続きを代行してもらう死後事務委任契約を、司法書士などに依頼して契約を締結するのだが、費用がそれぞれ100万円、少なくとも200万円はかかるという。

それほどおカネがない場合は、親しい知人を遺言執行者に決め、死後の手続きを依頼できる。これだとお礼を含めて50万円程だが、知人が先に死んでしまうこともある。

『現代』が読まれているのは、ここで終わらないところだと思う。カネもない、親しい知人もいないときはどうするのか。

死後手続きを代行してくれるNPO法人がある。それでも50万円程度はかかるが、遺言書を作って、「遺産をNPOに寄贈する」としておけば、後払いできるという。

ここまでは、去っていく人がやっておくべきことだが、ここからは、残された人たちが知っておかなくてはいけない「間違いだらけの死後の手続き」について見ていこう。

■「葬儀の手配を病院に任せると大損する」

『現代』(3/2号)は、「葬儀の手配を病院に任せると大損する」と警鐘を鳴らす。葬儀社が病院に仲介料を支払い、霊安室にスタッフを待機させているところもあるから、葬儀費用を高く設定しているところが多いからだという。

亡くなる前に複数の葬儀社を当たって、いちばん良心的な葬儀社に決めておく。それができないときは、搬送と遺体の保全処置までを病院が紹介してくれた葬儀社に頼み、葬儀は別のところに頼むのがいいという。

私の場合は、近所にある葬儀社にすべてを依頼し、お寺も紹介してもらった。ただし、お坊さんは、私の家の墓があるお寺から来てもらった。

私の母は、突然家で亡くなってしまった。主治医に来てもらったが、その後、警察が来て、殺された可能性も含めて検視をした。もちろんそんなことはないのだが、なんとなく嫌なものだった。

医者に死亡診断書を書いてもらって、死後7日以内に役所に提出し、火葬許可書をもらう。ここで『現代』が口を酸っぱくして言っているのは、提出する前に死亡診断書のコピーを必ず取っておけということだ。一度提出すると戻ってこないので、10通ぐらいコピーを手元に置いておけというのである。

■受給停止と遺族年金の請求は同時にやると効率がいい

私の場合、葬儀で難しかったのは、お寺のどの広さの部屋を使えばいいのかということだった。私は現役のサラリーマンだったが、母親の友人、近所の人たちがどれぐらい来てくれるかがわからない。ようやく決まったのは、お寺から聞いた花輪の数が大体わかったときだったから、ギリギリであった。

お坊さんに渡すお布施の相場は40万円から50万円ぐらい。これには、通夜と葬儀2日間の読経料と戒名料が含まれている。

葬儀が終われば、14日以内と定められている健康保険と介護保険の資格喪失手続きと、保険証の返納がある。健康保険や介護保険は、払い過ぎれば後に再計算されて銀行口座に還付されるそうだ。

年金受給の停止をするには、役所→年金事務所→銀行の順がいいそうだ。年金事務所には予約が必要。役所は故人の住所地、戸籍謄本は故人の本籍地で取る。年金事務所では、受給停止だけならば年金手帳と死亡診断書でできるが、未支給年金や遺族年金の請求も同時にやったほうが効率がいいそうだ。

次に、私はやらなかったと記憶しているが、生命保険金の請求は早く済ませたほうがいいという。保険証書が見つからなくても、銀行通帳で確かめ、保険会社に問い合わせればいい。

■故人の郵便物は「1年間」は廃棄してはいけない

受け取るカネの算段が付いたら、次は故人が払っていたクレジットカードの明細から確認して、カードでの引き落としを止め、その後、個別に連絡して解除手続きをする。

これもやった記憶は、私にはない。両親ともに銀行カードは使っていたが、クレジットカードはほとんど持っていなかったからだが、大変な手間がかかる煩雑な仕事であろう。

携帯電話は、そこにしか連絡先が入っていない知人もいるから、1カ月程度は残しておいてもいいそうだ。たしかに、亡くなったことを知らない知人から電話がかかってくるというのは、よくある。

また故人の郵便物も、1年間は廃棄してはいけないそうである。証券会社からの残高報告や、固定資産税の納税通知書などが届くからである。

これからがいよいよ大仕事である。遺言書があれば比較的簡単に済むが、ない場合は、資産の合計を出さなくてはいけない。

■「準確定申告」の期限である4カ月などあっという間

まず自宅の土地や家屋。送られてきている固定資産税納付書で家屋、土地についてはインターネットで路線価を調べ、それに面積をかけて出すことができる。

証券口座は「死亡日の株価」を基に計算する。妻が生きていれば、家にそのまま住み続けられるし、配偶者の税額控除で相続税は無税になる。

だが、現金や株なども妻が相続すると、彼女が亡くなったときの「二次相続」では、優遇措置がなくなり、基礎控除も減るため、相続税額が高くなることもあるので要注意だ。

その後、遺産分割協議書にめいめいが署名押印しておく。

証券口座は、同じ証券会社に相続人が口座を開設して移す。不動産を名義変更する場合は、自宅に来ていた固定資産税納付書に掲載されていた所在地を確認したうえで、固定資産評価証明書と登記事項証明書を取得して、登記申請書を作成する。提出は不動産の所在地の法務局だそうだ。

遺産分割した後で遺言書が出てきた場合は、新たに分割協議をしなくてはならないが、分割協議のままでいいと相続人全員が同意すれば、そのままでいいそうである。

これだけ故人の死後手続きで忙殺されていると、被相続人の確定申告と納税を相続人が代わりに行う「準確定申告」の期限である4カ月などあっという間だ。

■最後の取引から10年以上経過した預金は移されてしまう

1月1日から死亡した日までの所得金額や税額を計算して申告するのだ。故人が確定申告していた場合は当然だが、高額な医療費を払っていれば、還付金が返ってくる。

そして、10カ月以内に相続税の申告をすることになる。相続する人間への3年以内の贈与はないかなど、故人の3年以内の通帳をチェックすることが大切だという。税務署はこうした動きを見逃さない。

基礎控除額は4800万円。これを超えれば相続税を納付する。相続税の申告書は全員で1通。細かい部分は税務署で無料相談することができるそうだ。

『現代』によると、ここに落とし穴があるという。相続税の申告と納付は別で、納付は現金一括。期限の10カ月を過ぎると延滞金が発生する。それに、誰かが相続税を払えない場合、連帯納付義務があり、他の相続人に支払い請求が来るそうである。

生命保険は3年が期限、ゆうちょ銀行以外の金融機関は最後の取引から10年以上経過した預金は休眠預金とされ、預金保険機構に移管されてしまう。だが、生保などは遅れても対応してくれるそうだから、諦めることはないようだ。

また、相続税の申告後、新たにマイナスの遺産が見つかった場合は、相続開始から5年10カ月以内に税務署に申告をし直すことができる。

ざっと見てきたが、突然死は別にして、まだ逝くのも、見送るのも余裕がある人は、『週刊現代』の別冊でも買って、じっくり勉強しておいたほうがいいと思う。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦 撮影=プレジデントオンライン編集部)

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