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"人の顔と名前を忘れない"最も確実な方法

プレジデントオンライン / 2019年4月9日 11時15分

amana images=写真

人は忘れる生き物である。とはいえ、人の名前を間違って呼びかけたら失礼だ。一度会った相手の名前を確実に覚えるにはどうすればいいのか。一番効果的な方法を「記憶の専門家」に聞いた。「プレジデント」(2019年4月29日号)の特集「最強のマナー入門」より、記事の一部をお届けします――。

■なぜ日本人は、名前を覚えにくいか

「この人の名前、何だっけ?」

以前会っているはずなのに、名前がどうしても出てこない。誰でも1度はそういう経験をしているのではないでしょうか。

私たちの脳で短期的な記憶を司る「ワーキングメモリー」は容量が小さく、ある瞬間には覚えていた情報も、他に注意が向いたとたんに上書きされ、記憶から飛んでしまいます。つまり人は基本的に「忘れる生き物」であり、細部まで鮮明に覚えているほうが珍しいのです。

なかでも人の名前は、忘れてしまいやすい情報の1つ。それは人名が基本的に記号であり、その人の特徴とか現在の地位などとは関係がないからです。

しかも、うろ覚えでは役に立たないのが名前です。相手の出身地なら、大阪と神戸を取り違えても失礼ではないのに、もし木下さんにうっかり「山下さん」と呼びかけてしまうと気まずいですよね。ちゃんと名前を覚えていないと、「この人は私に興味を持っていないんだな」と取られてしまいます。

では、どうやって覚えればいいか。

記憶の基本は「繰り返し」。人間の脳は、ある情報を繰り返し入力されるとそれが重要な情報だと認識し、記憶にとどめるという性質を持ちます。名前を覚えるのも、いかに繰り返し脳に入力するかがポイントです。

5000人の客の顔と名前を覚えている、というホテルマンがいます。この人は特に天才的な記憶力や独特の記憶術を持っているわけではなく、「名前と会社名を書いたノートをつくって、それを繰り返し読み込む」という地道な努力を積み重ねているそうです。

名前を脳に入力するためには、できるだけ口に出して名前を呼ぶことです。実際、相手の名前をよく覚えている人は、意識して相手を名前で呼びかけています。

その点で日本人には不利なところがあります。欧米人のように互いにファーストネームで呼び合うのではなく、代わりに「専務」「部長」と役職名で呼ぶ習慣がありますし、日本語では主語を省略するのが一般的です。そのため、ふつうの日本人には相手の名前を繰り返し口にする機会が相対的に少なく、だから名前を覚えられないのです。

その習慣を変えてみたらどうでしょうか。最初に会ったときから名前で呼びかけるように心がければ、自分の脳に相手の名前が刷り込まれます。向こうも名前で呼びかけられて嫌な気はしないでしょう。

名刺をもらったときに、「ああ、お名前は◯◯とお読みするんですね」「どの地方に多い名字なんですか」などと、名前そのものを話題にして覚えるのも一法でしょう。

1度にたくさんの人と会ったときは、「最初はざっくり・だんだん細かく」の方法で覚えます。まずは男性と女性に分けてみる。次に、名字の最初の音を五十音順で分けていく。分類した名簿を繰り返し見ていると、自然に目に入ってきたり、楽に覚えられる名前が出てきたりするので、まずそういう覚えやすそうな名前だけを覚えながら全体を繰り返して読み、だんだんと覚える名前を増やしていきます。

しっかり覚えたいときは、見たものの「想起」、つまり「思い出す」ことの繰り返しが効果的です。

記憶力がいいと言われる人のなかには、「物事が終わった瞬間に想起する」ことを習慣にしている人が少なくありません。たとえば会議を終えたら、その瞬間にその会議に誰がいて何を話し、どんな結論が出たかを思い返して記憶にとどめておく。本を読み終わったらすぐ目次を見直して、内容を短時間でおさらいする。

そうした習慣を身につけるだけで、記憶に残る量は一気に増えます。

■情報を集めて「入り口」を増やす

名前を単独で覚えるのではなく、勤務先の社名はもちろん、その人の出身地、出身校、学生時代のスポーツなどさまざまな情報を次々に付加していき、思い出しやすくする方法もあります。

「覚える」とはすなわち「思い出せる」ということです。ひとかたまりのセットになった情報の何かが「フック」となり、自分の意識に引っかかれば、セットになった情報全体にアクセスできます。いわば思い出すための「入り口」を増やすやり方です。

営業先の人の名前を覚える場合なら、仕事関連の情報がいろいろあるでしょうし、「ご両親はなぜその名前を選んだのですか」と相手の下の名前について尋ねることでも、名前に関連する新たな情報が加わります。

情報を集める過程で相手が自分の知人の知り合いだったとか、自分と同じ趣味を持っていたといったお互いの関連性が深くなってくると、さらに記憶にとどめやすくなります。

「繰り返し」とともに記憶と関係するのがインパクト(情動)です。経験に感動や驚きがともなっていると、インパクトが強いため、記憶に残りやすいものです。

人がものを覚えるメカニズムには、自分の実体験として記憶する「エピソード記憶」と、本を読むなどして知識として覚える「知識記憶」がありますが、インパクトが強く覚えやすいのはエピソード記憶のほうです。

あえて「体験」の機会をつくることで、知識記憶をエピソード記憶に変えることもできます。名前なら相手の前で発音してみるのです。

記憶術でよく使われるのが、イメージを利用してインパクトを高める方法。たとえば「本田さん」ならホンダの自動車、「久保田さん」ならクボタのトラクターというように、こじつけでも何でもいいので、名前に何かのイメージ映像を結びつけて覚えてしまうのです。バカバカしかったり突拍子もなかったりするイメージのほうが、インパクトがあって効果的です。

いろいろやったけれどそれでも忘れてしまったというときは、空間記憶(場所の記憶)を利用すると思い出しやすくなります。

人間の脳は相対的な位置関係を記憶することが得意で、会議のとき右隣に誰がいたとか、どの方向に誰が座っていたといったことはよく覚えています。名前を忘れてしまったとしても、前の会議で会った人なら、「あのときあの場所に座っていたのは、どの人だったか……」というように、生の情景と位置関係をきっかけに記憶を探るとよいでしょう。

また、さりげなくスマートフォンでその人とのメールやメッセージのやりとりをチェックして名前を探すという手もあります。

ホテルマンの例でもそうだったように、「記憶力がいい」と言われる人ほど、「人は忘れやすいもの」と自覚し、大事な情報をしっかり記憶するための努力を続けているものです。「名前の記憶も試験勉強も、努力に勝るものはない」と胸に刻んでください。

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宇都出雅巳(うつで・まさみ)
トレスペクト教育研究所代表
「記憶」の専門家。1967年生まれ。東京大学経済学部卒、ニューヨーク大学でMBAを取得。コンサルティング会社、外資系銀行などを経て2002年に独立。『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』ほか著書多数。

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(トレスペクト教育研究所代表 宇都出 雅巳 構成=久保田正志 写真=津田 聡、amana images)

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