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世の中に男と女がいる「意外すぎる理由」

プレジデントオンライン / 2019年4月13日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/adyaillyustrator)

なぜ世の中には、男と女がいるのだろうか。静岡大学の稲垣栄洋教授は「生物がオスとメスにわかれている理由は、異業種交流会にたとえるとわかりやすい。業種ごとに違う色のリボンをつけていたほうが、交流が効率的に進むのと同じだ」だという――。

※本稿は、稲垣栄洋『敗者の生命史38億年』(PHPエディターズ・グループ)の一部を再編集したものです。

■「なぜ、男と女がいるの?」と子供に聞かれたらどう答えるか

どうして世の中には、男と女がいるのだろうか。

男と女がいるがために、私たちは相当のエネルギーと時間を費やしている。子どもの頃から異性を意識して、男子はカッコつけてみたり、女子はかわいくおしゃれをする。思春期の頃は、好きな人のことを思って、眠れぬ夜を過ごしたり、何度も何度も書き直してラブレターを書いたりする。バレンタインデーやホワイトデーともなれば、お金も必要だ。

恋をすれば、勉強が手につかなくなったり、部活に集中できなかったりする。大好きなアイドルのテレビにくぎ付けになったり、コンサートに出掛けたり、CDや写真集にお金を使う。

大人になれば男はデートも奮発しなければならないし、女はおしゃれにお金が掛かる。それなのに失恋すれば、何日も落ち込まなければならない。それもこれも、男と女という存在があるからなのだ。

男と女というのは、本当にエネルギーと時間の必要な無駄なシステムである。しかし、人間だけではなく、動物にも鳥にも魚にもオスとメスとがある。虫にさえもオスとメスとがある。植物にだって、雄しべと雌しべがある。どうして、生物には雌雄という性があるのだろう。

■専門家は答えに窮する中、子供が納得した「名解答」とは

子どもたちの素朴な質問に、専門家がわかりやすく答えるラジオの電話相談室では、ときどきドキッとするような質問が寄せられる。あるとき、小さな子どもから、こんな質問があった。

「どうして、男の子と女の子がいるの?」

世の中には、男と女がいる。大人にとっては当たり前のようにも思えるが、よくよく考えてみれば、別に生物にオスとメスがいなければならないというものでもない。オスとメスとがいるというのは、じつに不思議なことなのである。幼い子どもたちの「なぜ?」や「どうして?」は他愛もないものに聞こえるが、ときに本質を突く。

ラジオの電話相談室では、科学の質問に対する専門家の先生がわかりやすい説明が魅力だが、ときに専門家の先生が子どもたちの素朴な質問の前にやり込められてしまうのも面白い。

専門家の先生はタジタジだ。「○○くんは、X染色体とY染色体ってわかるかな」と説明していたが、幼い子どもにそんなことがわかるはずもない。子どもがチンプンカンプンな様子が伝わってくる。

何となく気まずい雰囲気が続いたとき、司会のお姉さんがたまらずこう語りかけた。

「○○くんは、男の子だけで遊ぶのと、男の子と女の子とみんなで遊ぶのは、どちらが楽しいかな?」
「みんなで遊ぶ方が楽しい……」
「そうだね、だからきっと男の子と女の子がいるんだね」

「うん」と男の子ははじけるような元気な声で返事をして、電話を切った。私はラジオのお姉さんの回答に心から感心した。

「男の子と女の子とがいると楽しい」。これこそが、生物の進化がオスとメスとをうみだした理由なのである。

■オスとメスがいるのは「子孫を残すため」は不完全な回答

オスとメスとがいるのは、子孫を残すためだと思うかもしれないが、別にオスとメスとがなくても、子孫を残すことはできる。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/rusm)

その昔、地球に誕生した単細胞生物には雌雄の区別はなく、単純に細胞分裂をして増えるだけだった。実際に、今でも、単細胞生物は、細胞分裂で増えていく。ただし、細胞分裂をして増えていくということは、元の個体をコピーしていくことである。そのため、どんなに増えても元の個体と同じ性質の個体が増えるだけである。

しかし、すべての個体が同じ性質であるということは、もし環境が変化して、生存に適さない環境になると、全滅してしまうことも起こりうる。

一方、もしさまざまな性質の個体が存在していれば、環境が変化しても、そのうちの、どれかは生き残ることができるかもしれない。そのため、環境の変化を乗り越えて同じ性質の個体が増えていくよりも、性質の異なる個体を増やしていった方が、生き残っていくには有利なのである。

■なぜ、自分の遺伝子と他の個体が持つ遺伝子を交換するのか?

それでは、どのようにすれば自分とは異なる性質を持つ子孫を増やすことができるのだろうか。生命は遺伝子をコピーしながら増殖していくが、正確にコピーをするわけではない。

生命は、あえてエラーを起こしながら、変化を試みているのである。しかし、エラーによって起こる変化はとても小さいし、エラーによって起こった変化が、よりよくなる変化である可能性は大きくない。

稲垣栄洋『敗者の生命史38億年』(PHPエディターズ・グループ)

環境の変化が大きければ、生物もまた大きく変化することが求められる。それでは、どのようにすれば、自分を大きく変えることができるだろうか。自分の持っている手持ちの遺伝子だけで子孫を作ろうとすれば、自分と同じか、自分と似たような性質を持つ子孫しか作ることができない。そうだとすれば、もし、自分と異なる子孫を作ろうと思えば、他の個体から遺伝子をもらうしかないのだ。つまり、自分の手持ちの遺伝子と他の個体が持つ遺伝子を交換すれば良いのである。

たとえば、単細胞生物のゾウリムシは、ふだんは細胞分裂をして増えていく。しかし、それでは、自分のコピーしか作れない。そこで、ゾウリムシは、二つの個体が出会うと、体をくっつけて、遺伝子を交換する。こうして、遺伝子を変化させるのである。

■オスとメスの「異業種交流会」で効率よく遺伝子を交換する

自分にないものを求めて遺伝子を交換するのだから、せっかく手間を掛けて交換しても自分と同じような相手と遺伝子を交換したのではメリットが少ない。

たとえば、人脈を広げようと異業種交流会に参加したときのことを想像してみよう。会場に出向けば、みんなネクタイにスーツ姿。業種も仕事もわからない。張り切って名刺を交換してみたが、集まった名刺を見るとみんな同じ業界の人ばかりだった。

これはこれで、同業者の人脈としては活かせるかもしれないが、異業種の人と出会おうと交流会に参加した意味はない。それならば、見た目でわかるようにしてはどうだろう。たとえば、飲食店関係は赤いリボンをつける。建築関係は黄色、IT関係は緑色というように、リボンの色を変えてみる。そして、違う色のリボンの人と名刺を交換するようなルールにするのである。そうすれば、異なる業種間で名刺を交換するという目的を効率良く果たすことができるだろう。

つまり、やたらと他の個体と交わるよりも、グループを作って、異なるグループと交わるようにすれば効率が良いのである。

ゾウリムシは、二つの個体が接合して、遺伝子を交換すると紹介したが、ゾウリムシには、いくつかの遺伝子の異なるグループがあり、その間でだけ接合して遺伝子を交換することが知られている。

単細胞生物のゾウリムシは細胞分裂をして増えていくため、自分のコピーしか作れない(写真=iStock.com/NNehring)

オスとメスという二つのグループも、同じ仕組みである。

リボンの違うグループが交流して異業種交流が成功するように、オスとメスというグループを作ることによって、より遺伝子の交換が効率的になるのである。オスとメスというグループ分けは、こうして作られたのである。

(植物学者、静岡大学教授 稲垣 栄洋 写真=iStock.com)

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