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"夫に内緒"ママ友間で投資詐欺がはやる訳

プレジデントオンライン / 2019年4月29日 11時15分

▼妻が自己啓発で浪費

■「すごくいい話があるから、聞くだけ聞いてみない?」

「妻が百万単位の金を使い込んでいた」「妻が返しきれないほどの借金を抱えていた」……。こんな話は珍しくありません。私たちの事務所でも最近、こんな相談がありました。

その方は専業主婦でしたが、ママ友の1人に、「すごくいい投資の話があるから、聞くだけ聞いてみない?」と誘われたそうです。そのママ友の知り合いという男性に会って話を聞いてみると、「有望な未公開株があるから、お金を預けてもらえれば、何倍にもして返します」と言われます。

「自由になるお金はないから」と断ると、消費者金融から借りればいいと言われたそうです。「消費者金融の利率よりも、こっちの利回りのほうが大きい。マイナスなのは最初の数カ月だけで、あとはもう増えていくだけだから」と説得され、そこでうっかり借りてしまったのが最大のミステイクでした。

実はごく初期の段階で、消費者金融からお金を借りさせるのが彼らの常套手段。その額は少なくとも200万~300万円、多くて500万~600万円。被害者がお金に困って返済が滞るようになると消費者金融も貸してくれなくなるので、そうなる前にまとまった金額を借りさせるのです。

悪質な場合、「私は無職だから審査が通らない」と言う被害者に対して、「こういうふうに書類を書けば通るよ」と架空の職業をでっちあげて審査を通す方法を指南したりする。こうなると被害者自身も私文書偽造などの犯罪に加担したことになるので、あとで自分が騙されたことに気がついても警察に相談しにくくなってしまう。これも詐欺師がよく使う手口です。

相談に来たその主婦も夫に内緒で消費者金融からお金を借り、その男に預けました。さらに、「人が集まれば集まるほど儲けも大きくなるから、知り合いにもどんどん声をかけて」と乗せられ、5~6人のママ友を誘い入れてしまった。数カ月後にその男はお金を持って行方をくらまし、ママ友たちは全員芋づる式に自己破産に至ってしまったのです。

■騙されたことにはなかなか気づかない

なぜ彼女たちが騙されたことにすぐ気づかないかというと、お金を預けた直後はちゃんと配当が返ってくるからです。たとえば100万円の投資に対して月10万円の利子が返ってくる。こういう状態が半年ぐらい続く。儲かっているうれしさで、相手をすっかり信用しきっているので、騙されたことにはなかなか気づかないのです。

しかし配当は徐々に途切れがちになる。そこで問い合わせると、「いま、ちょっと事情があって現金に換えられない状況なんだよね」などと説明されて、その場は納得。しかしやがて完全に配当が途絶え、気づいたら相手と連絡が取れない状況になっている。そこでようやく騙されたと認めざるをえなくなり、夫に窮状を打ち明けたり、弁護士を訪れることが多いようです。

これは「ポンジ・スキーム」と呼ばれる典型的な投資詐欺の一種で、過去に何度も似たような事件が起きているのですが、騙される人が後を絶ちません。最近はその入り口が「自分の価値を高めましょう」というように、自己啓発セミナーの形をとって人々を誘い込んでおいて、実際に参加すると、いつの間にか投資や情報商材の話に誘導されてしまうケースもあります。

このように主婦が騙されて大金を失うケースには、私の経験上では、2通りのパターンがあります。1つは冒頭で挙げたママ友の例のように、主婦が儲け話に目が眩んでしまうケース。

彼女たちの多くの世帯年収は500万~600万円ぐらいで、生活に困窮しているというわけではないけれども、子どもの将来などを考えるともっと余裕がほしい。そこで妻は「自分がうまく稼げば、余裕のある暮らしができる」と考えて手を出してしまう。

もう1つは、妻が悩みを抱えていたり、現在の自分の状況に不満を感じていたりするケースです。かといってべつにドラマ「昼顔」のような不倫をしたいわけでもない。そこで心の癒やしや精神的な救いを求めて、新興宗教やスピリチュアル系の霊感商法などにすがってしまう。この場合、奥さんの心がその人に依存してしまっているケースが多く、お金は断てたとしても、解決には相当時間がかかります。

もっともこのケースは、「最近、妻がおかしい」ということが、目に見えてわかりやすい。なぜなら数珠、指輪、お札、仏像などの「グッズ」が家のなかに増えていくからです。モノ自体は百円ショップでも売っているようなものなのに「これは教祖様がパワーを込めたもので、身につけているとあなたを悪いことから守ってくれる」と言って、10万円くらいの値段で売りつけていたりします。

このようなモノがある場合は異変に気づきやすいのですが、そうでなければ、基本的に旦那さんは、奥さんがあやしいものに手を出していても気づきにくいでしょう。

■妻が詐欺に遭ったら、すぐにやるべきこと

では、妻の浪費を未然に防ぐにはどうすればいいでしょうか。実は、法的には夫が妻の浪費に制限をかける方法はありません。旦那さんが稼いだお金であっても、家計が破綻するほどの金額でなければ妻は自由に使う権利があるからです。

仮に奥さんが専業主婦でも、夫が働けるのは妻のサポートがあってこそ生活が成り立っているので、夫の収入は夫婦で稼いだお金とみなされ、2人の共有財産になる。共有ということは妻のものでもあるわけですから、自由に使っていいというのが原則です。

PIXTA=写真

したがって妻の浪費を防ぐには、たとえば「5万円以上の買い物をするときは、お互い許可を取ろうね」という約束をしておくなど、日頃から話し合っておくしかありません。あるいは生活費はすべてクレジットカード払いにして、現金での支払いはしないというのも1つの手です。

カード払いにすればすべて記録に残ります。それを見れば何に使っているかが一目瞭然ですし、異変に気づいたときも傷が浅くて済む。もし詐欺被害に遭っているような場合には、カード会社に支払いを取り消す「チャージバック」という制度も使えます。そもそも悪事をはたらいている会社はカード会社と契約ができないので、クレジットカード決済ができないことが多いのも利点です。

仮に旦那さんが奥さんの異常に気づいた場合、もしくは本人から打ち明けられた場合には、すぐに弁護士に相談してください。なぜなら冒頭で紹介したような詐欺の場合、早い段階ならお金を取り戻せる可能性があるからです。

詐欺師は仮に10人くらいからクレームがあったとしても、カモがどんどん増えているときなら、元金を返して訴えた人たちを黙らせたほうが得だということに気づいています。これがどこかへ逃げたあとでは、回収するのは難しい。ですからできるだけ早く動いて、弁護士に交渉を依頼するのが得策なのです。

打つべき一手:早い段階で弁護士に相談。お金を取り戻せる可能性も

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刈谷龍太
弁護士
グラディアトル法律事務所代表弁護士。中央大学法科大学院修了。2012年弁護士登録。離婚・労働・ネット・消費者被害など一般向けのトラブルから、企業法務や経営サポートなど幅広く担当。

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(弁護士 刈谷 龍太 構成=長山清子 撮影=研壁秀俊 写真=PIXTA)

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