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連敗でピンチの安倍首相が解散を狙うワケ

プレジデントオンライン / 2019年4月24日 9時15分

記者会見を終えて退室する自民党の二階俊博幹事長(手前)と萩生田光一幹事長代行(右)=4月22日、国会内(写真=時事通信フォト)

政権復帰以来の敗北だ。4月21日の衆院2補選で、沖縄3区は野党系の屋良朝博氏、大阪12区は維新の藤田文武氏が勝利。自民党が2012年以降、国政の補欠選挙で同日に2敗するのは初めてだ。自民党と安倍首相はピンチにある、との見方も広がる。ところが永田町では早期の解散論が高まっている。なぜなのか――。

■「敗者の弁」の二階幹事長は憔悴しきっていた

「大変残念な結果だ。わが党の候補者に支援をいただいた皆さまに心から感謝を申し上げたい。結果は謙虚に受け止めて敗因の分析を急ぎ、今後に備えたい」
「参院選への影響はないとは言えないが、この結果を受けて皆さんが緊張感を持って臨むだろう。次なる選挙に雪辱を果たしていきたい」

21日夜、二階俊博幹事長は憔悴した表情で記者団に敗者の弁を語った。涙ぐんでいるようにも見えた。

確かに衝撃的な結果だ。2012年に自民党が政権復帰して以降、国政の補欠選挙で自民党が同日に2敗するのは初めてだ。

沖縄3区は米軍普天間飛行場の移設先となる名護市を含む選挙区。玉城デニー氏が知事選出馬のため辞職したのに伴って行われた。多少の足並みの乱れはあったが野党統一候補として元新聞記者の屋良氏が出馬。自民党から出馬した元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏は最初から敗色濃厚だった。

■本来、解散を決断するのは「今なら有利だ」と踏んだ時

一方、大阪12区の方は自民党議員の死去に伴い、その甥にあたる北川晋平氏が出馬した「弔い選挙」。本来なら必勝パターンだった。しかし4月7日に行われた大阪府知事選、同市長選で連勝した維新の勢いが自民党をのみ込んだ。

プレジデントオンライン編集部では3月21日の「地方選で安倍自民党の足並みが乱れるワケ」で、大阪府知事選、市長選、衆院大阪12区補選で自民党が3連敗する可能性を指摘した。1カ月後にそれが的中したことになる。「最悪でも1勝」というもくろみが外れたのだから、自民党の傷は深い。

それだというのに、永田町では衆院解散風が吹き始めた。首相が衆院解散を決断するのは「今なら有利だ」と踏んだ時だ。衆院補選で連敗した時に解散論が出るのは不思議ではある。

しかし視野をもう少し広げると、安倍晋三首相が解散を決断するタイミングとして、今はそんなに悪くないことが分かる。

■今月に入ってから内閣支持率はむしろ上昇傾向にある

衆院補選は惨敗したが、自民党は統一地方選前半戦の41同府議選で過半数を維持し、議席占有率では前回を上回った。知事選では福岡、島根などで自民党が推す候補が敗れたが、勝った候補も、もともとは自民党と近い。保守分裂したダメージはあるが野党に敗れたわけではない。野党の議席は総じて伸び悩み、地方選では自民党が独り勝ちだったといってもいい。

今月に入ってからの報道各社の世論調査をみると、内閣支持率は40%台後半から50%程度で安定しており、むしろ上昇傾向にある。国土交通副大臣だった塚田一郎氏が「忖度発言」、五輪相だった桜田義孝氏の一連の問題発言で辞任するなどのマイナス要素はあるが、「新元号」「改元」「新札」によるポジティブな情報発信の方が、勝っているのだろう。

5月にはトランプ米大統領が来日。6月には大阪G20首脳会合が開かれて華やかな首脳外交が繰り広げられる。外交でポイントを稼ぐのは安倍氏が最も得意とするところだ。

■さらにスキャンダルが露呈する前に解散してしまう

自民党幹部の1人は、こうつぶやく。

「大阪と沖縄で負けたといっても、両府県とも自民党は野党の所。他の45都道府県が同じということにはならない。そう考えれば今、解散のタイミングとしては悪くない」

今の政治状況は2014年11月に衆院解散した時と似ている。この時は経済産業相だった小渕優子氏、法相だった松島みどり氏が「政治とカネ」の問題で辞任。自民党に逆風が吹いていたが「さらにスキャンダルが露呈する前に、野党の準備が進まないうちに」という判断で安倍氏は衆院を解散。そして勝った。

より悪くならないうちに勝負に出る。安倍氏はそういう判断をする傾向がある。

解散風を最初にふかせたのは萩生田光一党幹事長代行。18日、インターネットテレビ番組に出演して消費税増税の延期の可能性に触れ、その場合は「信を問う」と語った。萩生田氏の発言の読み方については「消費増税凍結を発言させた安倍首相の狙い」で詳しく紹介しているので、参考にしていただきたい。

■秋に衆院を解散するという「時間差ダブル論」も

萩生田氏からバトンを引き継ぐように菅義偉官房長官も22日の記者会見で衆院解散の可能性を聞かれ「衆議院の解散は総理の専権事項ですから、総理がやると言えばやるし、やらないと言えばやらない」と発言。否定せずに憶測を楽しむような言い方に、永田町はさらにざわついている。

今、政治家や秘書、そして政治記者たちは時候のあいさつのように衆院解散についての意見交換から会話を始める。

参院選は7月4日公示、21日投票の線で進んできた。しかし今は、衆院を解散する場合は国会を2週間ほど延期して8月4日ごろに同日選を行うとの見方がある。

また参院選は7月21日に単独で行っておいて、秋に衆院を解散するという「時間差ダブル論」も出ている。「時間差ダブル」は、同日で衆参の選挙を行うのを嫌う公明党に配慮したアイデアで、衆院選は新天皇の即位の礼が終わった後の11月ごろとの観測が広がる。

■ようやく野党は「反自民」で結集に走り始めたが……

一方、野党は浮き足だっている。

立憲民主党の枝野幸男代表は23日午前、国民民主党の玉木雄一郎代表、無所属の岡田克也元副総理と相次いで会談。参院選に加えて衆院選の小選挙区でも候補者調整を急ぐことを決めた。

会談で枝野氏は「同日選挙に備えて野党の議席獲得を最大化し、安倍政権を倒すために各野党が協力をより強化したい」と協力を呼びかけた。同日選説を利用して、遅々として進まない野党協力を進めようという思いもあるのだろうが、衆院解散が近いとの警戒感がピリピリ伝わってくる。

■小沢一郎氏に振り回される野党陣営

枝野氏は参院の1人区と衆院の小選挙区は野党で一本化し、それ以外の部分では各党がそれぞれ独自に戦うという緩やかな共闘を目指す。

しかし、野党共闘については4月30日の「平成最後の日」をタイムリミットにして国民民主党と、小沢一郎氏が率いる自由党の合流問題も議論が進んでいる。どちらも「反自民」で野党が協力するという最終目標では一致するが、枝野氏の構想と小沢氏の考えでは手順が違う。このあたりで不協和音が聞こえてくると、自民党側からは「今なら勝てる」と解散論がさらに高まるだろう。

「令和」は冒頭から選挙で明け暮れることになるのだろうか。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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