昭和上司が男性部下を引き上げたがる理由

プレジデントオンライン / 2019年5月8日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

研修シーズン真っただ中。女性の中には、研修や仕事、昇進の機会に不公平を感じる人もいるかもしれません。人事と組織の専門家である中原淳先生が、日本企業の研修の問題点と仕事の機会に男女の不公平が起きるメカニズムを解説します。

■日本はなぜ新人研修ばかりやるのか

女性社員の中には、男性社員に比べて「研修の機会が少ない」「仕事の機会が与えられない」といった不満があるようです。実態はどうなのか、違いがあるとしたら何が原因なのかを考えてみましょう。

まず、研修の機会についてです。私は、研修機会はそれほど男女差があるとは思っていません。むしろ問題は、日本企業の場合、異常と言えるほど新入社員研修に力を入れ過ぎていることです。新入社員研修以外の研修機会は極端に少ないのです。もっと実務担当者の研修に力を入れないと、社員のモチベーションが維持できず、離職にもつながっていきます。

新入社員研修が不要とは言いません。しかし、組織の一員になるにあたっての意識面の研修などはなくてもかまいません。それに、どんなに豪勢な新入社員研修をやってもすぐに忘れられてしまいます。

企業が力を入れるべきは実務担当者の研修です。自分で学びたいメニューを選べるカフェテリアプランや、学びたい人には5万円、10万円の費用を肩代わりする方法で支援すればいいと思います。

■海外の学び方は全然違う

ちなみに海外では新入社員研修はあまり見かけません。社会に出る準備はインターンやNPOで体験してくるので、日本のような新入社員研修の概念がないのです。

ホワイトカラーは基本、専門知識・スキルを持っている人たちとみなされます。専門知識・スキルは大学院で学びます。それも、大学から大学院へストレートに行くのではなく、大学を卒業してある程度働いた後、転職する際や管理職に上がるタイミングで、いったん仕事を辞めて大学院で学び直すケースが多いのです。そしてMBAや理科系の修士課程であるマスター・オブ・サイエンスを修め、再び就業するのが一般的です。海外の大学院で学ぶ場合はすべて自腹ですし、日本よりもずっと学費が高くなります。

■社外で学ぶほうが効果的

ここで考えてみたいのは、自分の学びやスキル向上は誰の責任であるかです。海外では自分の教育費は自分で払うのが当然であることを踏まえれば、組織の中に研修機会がないのであれば、外に求めればいいのです。

ところが、日本では「自腹で学ぶ」カルチャーが決定的に欠けています。小学校から中学、高校、大学まで、国あるいは親が学ぶ費用を払ってくれて、会社に入ったら当然、会社が払ってくれるものだと考えています。ほかの国からはかなりおかしく見えるでしょう。学びたいことに対して自費で学ぶカルチャーをもっと持つべきだと思います。

その点、男性より女性のほうが自分の学びは自分の責任であるという意識が強いように思います。積極的に自分で学んだほうが、会社から与えられる研修機会を待っているよりもずっと学びの効果が期待できるでしょう。

■無意識の思い込みが昇進の男女差をもたらす

私は、研修機会はさほど男女差がないと思う一方、上司が部下に重要な仕事を任せたり、上位のポストに引き上げたりといった“スポンサー機能”には差があると見ています。

男性部下のほうが女性部下よりもスポンサー機能が強く働きます。そこに影響を与えているのは、上司の「女性って仕事はそこそこっていう人が多いんじゃないの」といった思い込みです。最近よく耳にする無意識のうちの思い込み(アンコンシャス・バイアス)が原因となっているのです。

アンコンシャス・バイアスは統計的差別から生まれてきます。たとえば、これまで10人の女性を見てきて「女子に欲が乏しい」から、11人目も同じだろうという思い込みです。

今の時代、あからさまに男女差別をする上司はいません。しかし無意識のうちに、なんとなく女性を引き上げることが少なくなります。そういうメカニズムを知るためにこそ、管理職研修が必要です。アンコンシャス・バイアスが男女のフェアな仕事配分を阻害していることを自覚しなければ、スポンサー機能のゆがみを正すことはできません。

■3年先の希望を上司に伝えよう

女性が男性と同じスポンサー機能を得るためには、日頃からアピールしておくことが大事です。「自分のキャリアはこう描いている」「次はこんなポストに就きたい」といった思いをふだんから上司に話しておくのです。

結局、スポンサー機能は上司、部下のコミュニケーションの量に相関するところがあります。自分の気持ちを常に伝えておけば、上司の頭の中に残ります。新しい仕事を振るとき、「ああ、そういえば彼女はこんなことを言っていたな」という記憶が頭をよぎって声をかけてくれるのです。

自分がどんな仕事をしたいのか、どういう方向に進んでいきたいのかを上司にどんどん話しておいたほうがよいと思います。女性の中には、そういう態度が「男性はいいけど、女性がそれをしたら野心的に見えないか」と心配する人もいます。

「ふだん」からアピールしておけば問題はありません。課長のポストが空いたとき、急に「私はそのポストに就きたいんです」と言い始めると、「野心的」「狙っているのかな」と捉えられかねないのです。

上司にしても、急に「このポストに就きたい」と言われると困ってしまいます。それこそ、「急に彼女を選んだらひいきしていると思われないか」と不安になるからです。

「私は3年後にこういうポストに就きたいのです」と、前々から伝えておけば、それが上司の頭に残って、実際にポストが空いたときに、「彼女に打診してみるか」という流れになるでしょう。

(立教大学経営学部 教授 中原 淳 写真=iStock.com)

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