小沢氏にぶっ壊された国民民主党の残念さ
プレジデントオンライン / 2019年4月28日 17時15分
■規模もインパクトも「小玉」な平成最後の新党
平成最後にデメリットしかみえないという新党が誕生した。合併を念頭に交渉を続けてきた国民民主党と自由党は、曲折を経て合流の合意に達したのだ。「平成最後の合併」は実現したが、この政党は、きたる令和の政治決戦で、安倍1強を脅かす存在になるようには見えない。
プレジデントオンラインではこの政党について、国民民主党の玉木雄一郎代表、自由党の小沢一郎共同代表の名字から1文字ずつとって、「小玉」民主党と名付けたい。規模もインパクトもまさに小玉。迫力不足の政党としての船出となる。
■「小が大をのみ込む」構図にしか見えない
合併問題を協議するために開かれた国民民主党の両院議員懇談会と議員総会は、4月25日午後6時半に始まり、結論が出た時は26日になっていた。
玉木氏と小沢氏が共同記者会見に臨んだのは26日午前2時。民主党政権の「決められない政治」の時代は、決定が翌日にもつれ込むことも少なくなかったが、最近では珍しい光景だ。
疲れを隠せない玉木氏は会見で、声を絞るように「自民党に代わるもう1つの政権を担いうる選択肢をつくる第一歩だ」と語った。
存続政党は国民民主党。党名も国民民主党。基本理念、政策、規約なども、すべて国民民主党のものを踏襲する。自由党は解党し、小沢氏は主要なポストにはつかない。国民民主党の所属議員は58人。自由党から国民民主党に加わるのは6人。数の差も圧倒的だ。
形式的には国民民主党が自由党を吸収合併した。国民民主党の圧勝にみえる。ところが永田町では、誰もそう思わない。自由党に小沢氏がいる以上「小が大をのみ込む」構図にしか見えないのだ。
■小沢氏の代表就任を招いた「民由合併」とそっくり
小沢氏は会見で意見を求められると「私は大した能力がありませんので、玉木代表のもとで命じられたことを一生懸命やりたい」と殊勝に語った。この光景は、16年前の「民由合併」の時とそっくりに見えた。
2003年、党勢が低迷していた民主党の菅直人代表は、小沢氏が率いる自由党との合併を決断する。その時も党名は民主党のままで自由党を吸収する形だった。そして小沢氏は自ら「一兵卒」宣言し、無役として民主党に加わった。
ところが、いざ合併してみると、小沢氏の存在感は絶大で瞬く間に実権を握り、3年後の2006年には自ら代表に上り詰めた。
自らポストを求めず背後でトップを操り、いつの間にか権力を握る手法を得意とする小沢氏。永田町関係者の間ではその記憶が鮮明だけに、玉木氏を小沢氏が操る政党という受け止めにしかならない。今回は「小が玉をのんだ」ということか。
■6人増えたが4人マイナスで「差し引き2増」の恐れ
それにしても、この合併は何の意味があるのだろうか。先ほど自由党から国民民主党に加わる人数は6人と書いた。わずか6人である。
一方、国民民主党内で自由党との合流に反対した議員は4人いた。特に小沢氏と同じ岩手県を地元に持ち、今は小沢氏と反目している階猛(しな・たけし)衆院議員は、合併反対の急先鋒。合併が決まった後、離党するかどうか聞かれると「コメントは差し控える。仲間の意見を聞いて最終的な結論を出す」と答えている。暗に離党する可能性を認める発言だ。
もし、4人が抜けたら差し引きで国民民主党は2人増えるだけだ。そのために、これだけの精力を使い果たすのはあまりにも効率が悪い。
離党者が出れば党のイメージはダウンするので、差し引きマイナスになるかもしれない。支持率が1パーセントに達するかどうかだった2つの政党の合併は、マスコミの注目度も高くないので、好感度が上がるとも思えない。小沢氏は「政界の壊し屋」との異名で知られる。今回の再編劇はまさにその異名を想起させる。
■むしろ野党共闘を遠のかせてしまっている
全体の野党結集に向けての動きが遠回りになるという副作用も生んでしまった。バラバラの野党が少しでも結集しなければならないから、まず合併できるところから一緒になるという理屈は、一見もっともらしい。しかし今回の合併話の出発点は、国民民主党と立憲民主党による野党の主導権争いだった。「野党第1党」を目指し、少しでも多くの議員数を確保しようとして国民・自由は結集に動いた。
当然ながら立憲民主党などは不信感を募らせている。合併決定を受けて立憲民主党の枝野幸男代表は、26日の記者会見で「他党のことはコメントする立場にない。立憲民主党は離合集散、他党との合併を行わない。昨日の党首会談でも小沢代表に伝えている」と語った。決別宣言のようにも聞こえる。
この思いは社民党や旧民主党系の議員たちも同じ。社民党党首の又市征治氏は「私自身は、そのことによって何かプラス面が出てくるのかなあと懸念をします」。衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」の野田佳彦元首相に至っては「もう動いたことを今更どうこう言ってもしかたない」と投げやりな表情で語った。
「小玉」民主党と、その他の野党の間には、確実にすきま風が吹いている。
■本当にメリットがデメリットを上回るのか
今、永田町では衆院解散風が吹き始めている。その危機感が「小玉」民主党をつくりあげるきっかけになったのは事実だ。今後、加速度的に野党結集が進んでいけば、今度は与党側が焦る番となる。安倍晋三首相が衆院解散を見送る決断をすることになるかもしれない。
しかし現状では、安倍氏は「小玉」民主党の誕生後の野党の混乱を予見してほくそ笑んでいることだろう。
25日深夜から未明にかけて行われた国民民主党内の会合で、合併に反対する階氏は何度も「本当に合流によるメリットがデメリットよりも上回るのか。それをきちんと説明してほしい」と執行部に尋ねたという。結果として明確な回答のないまま合併が決まったのだが、何カ月か先、「小玉」民主党の幹部たちは、階氏の問い掛けをかみしめることになるのではないか。
(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)
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