読書家が注目"最新ビジネス書"ベスト20
プレジデントオンライン / 2019年5月16日 9時15分
第2位:『世界最新の太らないカラダ』(ジェイソン・ファン著、多賀谷正子訳、サンマーク出版)
第3位:『OODA LOOP(ウーダループ)』(チェット・リチャーズ著、原田勉訳、東洋経済新報社)
第4位:『働き方改革』(小室淑恵著、毎日新聞出版)
第5位:『あたりまえを疑え。』(澤円著、セブン&アイ出版)
第6位:『紙1枚! 独学法』(浅田すぐる著、SBクリエイティブ)
第7位:『才能に頼らない文章術』(上野郁江著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
第8位:『熟睡の習慣』(西野精治著、PHP研究所)
第9位:『伝達の整理学』(外山滋比古著、筑摩書房)
第10位:『管理ゼロで成果はあがる』(倉貫義人著、技術評論社)
第11位:『RE:THINK』(スティーヴン・プール著、佐藤桂訳、早川書房)
第12位:『MiND』(ジョン・R・サール著、山本貴光/吉川浩満訳、筑摩書房)
第13位:『メモの魔力』(前田裕二著、幻冬舎)
第14位:『直感と論理をつなぐ思考法』(佐宗邦威著、ダイヤモンド社)
第15位:『東京大田区・弁当屋のすごい経営』(菅原勇一郎著、扶桑社)
第16位:『0から1をつくる』(本橋麻里著、講談社)
第17位:『14歳からの資本主義』(丸山俊一著、大和書房)
第18位:『コミュニティをつくって、自由に生きるという提案』(マツダミヒロ著、きずな出版)
第19位:『FACTFULNESS』(ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド著、上杉周作/関美和訳、日経BP社)
第20位:『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン著、入山章栄監訳、冨山和彦解説、渡部典子訳、東洋経済新報社)
※本の要約サイト「flier」の有料会員を対象にした、2019年4月の閲覧数ランキング
■やってはいけない「7つの悪い習慣」
2019年4月にフライヤーで最も読まれたのは、『7つの習慣』の著者スティーブン・R・コヴィー氏の三男であるデビッド・M・R・コヴィー氏らが執筆した『やってはいけない7つの「悪い」習慣』でした。
本書には7つの「悪い」習慣(=わな)が出てきます。どれも昔からあるものですが、現代社会ではより魅力を増しており、そこから逃れるのがますます困難になっているといいます。たとえば第三のわなである「焦点(フォーカス)のわな」は、家族や夢などといった本来大切にするべきことを犠牲にし、取るに足らないことにとらわれている状態を指します。
インターネットの普及により、私たちは世界中の情報にアクセスできるようになりました。その一方で、どうでもいいものが溢れる世界ともつながりやすくなっています。しかもこのようなわなは日常の至るところに潜んでおり、一度落ちたら抜け出すのは至難の業です。
■「環境を変える」では悪い習慣はなくならない
本書は物語調になっており、主人公のアレックスは「家族思いだが金遣いが荒く、悪友に影響されやすい」人物として描かれています。彼は見事なまでにすべてのわなにひっかかっているのですが、彼を心から笑い飛ばせる人はそう多くないはず。それほどまでに7つのわなは日常の至るところに存在しており、魅力的かつ巧妙なのです。ともすると私たちは、自分がわなにかかっていることにすら気づけていないアレックスなのかもしれません。
「誰もが成功できるやり方」はなかなかありませんが、「誰もが失敗するやり方」は明白です。「悪い」習慣をなくしたいのであれば、環境などの外部要因を変えるだけでは不十分であり、根本的にマインドセットを変えなければならない――。わなにハマって、エネルギーを失わないようにすること。そして蓄えたエネルギーを使って、少しずつでもいいから良い習慣を構築していくこと。『7つの習慣』を読んだことがある人にとっても、読んだことがない人にとっても、得るものが大きい一冊です。
■「PDCAサイクル」に代わるフレームワークとは
年度初めという時期が影響しているのか、4月は「働き方」に関する本がいつも以上に多く上位にランクインしました。
第3位の『OODA LOOP(ウーダループ)』は、「PDCAサイクル」に取って代わると期待されているフレームワーク。もともとは軍事戦略に用いられた意思決定理論をビジネスパーソン向けにアレンジしたもので、個人レベルでも組織レベルでも実践できるようになっています。
スピードを重視する「電撃戦」の有効性を指摘し、「外部の世界で起こっている、目まぐるしい環境変化に即座に対応し、自らの方向性や、進むべき道を変化させることができる能力」(=アジリティ)を重視する本書は、まさに大きな変化に直面している現代社会だからこそ読むべき一冊といえるのではないでしょうか。
■実績に結び付く「管理ゼロ」は実現できるのか
また制度面での「働き方」に焦点を当てた本としては、第4位『働き方改革』と第10位『管理ゼロで成果はあがる』にも注目です。
『働き方改革』は、ワーク・ライフバランス代表取締役社長である小室淑恵氏の、「働き方改革コンサルティング」の集大成ともいえる一冊。いま日本では「働き方改革」の実現が目指されていますが、「働き方改革」がなかなかうまくいっていないという企業も多いはず。本書は「働き方改革」がなぜ必要なのかというところから、具体的にアクションとして落とし込むところまでしっかりカバーしており、すぐにでも実践できるようになっています。「強制退社時間の設定」など、絶対にやってはいけないことも書かれており、「令和の時代の働き方」を築いていくうえで、ぜひチェックいただきたい内容になっています。
また『働き方改革』がマクロな視点で書かれているとしたら、『管理ゼロで成果はあがる』はよりミクロな視点から、働き方改革の実際について書かれた本といえるでしょう。著者の倉貫義人氏が代表を務めるソニックガーデンは、システム開発を担うエンジニア集団です。社員全員がフルタイム勤務で新卒採用も行っていますが、管理職も部署も評価もなく、売上目標すらありません。それが生産的だというのだから驚きです。ただの放任主義に陥らず、しっかり実績に結び付く「管理ゼロ」を実現するためにはどうすればいいのか。業種に関係なく、会社の生産性を高めるうえでのヒントが見つかる一冊です。
■「本当は何をしたいのか」を忘れていないか
ベスト10には入らなかったものの、フライヤー読者からの反響が大きかったのが『直感と論理をつなぐ思考法』です。公開してから日が浅いにもかかわらず、第14位にランクインしました。
本書が注目を集めた理由は、現代人の脳が「他人モード」になっていると指摘したことが大きいように思います。「お客様は神様です」という言葉が象徴するように、私たちはいつしか「自分がどう感じるか」ではなく、「どうすれば他人が満足するか」ということばかり気にするようになってしまいました。これはとりわけビジネスにおいてよく見られる現象です。顧客満足度はたしかに重要ではありますが、それだけを追い求めていると、ともすれば「本当は何をしたいのか」を忘れてしまいかねません。
本書を執筆した株式会社BIOTOPE代表・佐宗邦威氏は、「自分モード」の大切さをあらためて強調します。それは「本当に価値あるものは、妄想からしか生まれない」という言葉にも端的にあらわれています。妄想(=ビジョン)で動いている人ほど「同じビジョンを持つ人と一緒に何かを成し遂げたい」と考えており、逆にマーケットという「他人」を意識している人ほど「差別化を図って競争を出し抜きたい」と考えていると佐宗氏はいいます。だとすれば、どちらがより幸福を感じられるのか。その答えは明らかでしょう。
■妄想を実現するための「ビジョン思考」
とはいえ妄想だけでは社会で通用しないのも事実です。そこで佐宗氏が提示するのが、「ビジョン思考」(Vision Thinking)。これは妄想を実現するためのフレームワークであり、自分モードから生まれる「妄想」、イメージ脳を駆使する「知覚」、壊してつくり直す「組替」、プロトタイピングによる「表現」をまわしていく創造サイクルを指します。これを使いこなせるようになれば、ビジネスから日常生活まで、あらゆる景色が変わってくるのではないでしょうか。
その他にも2月の公開ながら、『メモの魔力』や『FACTFULNESS』といったベストセラーの要約は依然としてよく読まれていました(それぞれ第13位、第19位)。今後も動向をウォッチしていきたいところです。
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(flier編集部 写真=iStock.com)
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