橋下徹「丸山穂高氏の失敗・4つの理由」
プレジデントオンライン / 2019年5月22日 11時15分
(略)
■上西小百合氏があーなってしまったのと同じ構造
丸山穂高氏は、2012年の12月に日本維新の会から出馬して初当選した。大阪の南、泉南地域の大阪19区選出である。28歳という若さで当選した。勉強熱心で、政治家として頑張っていたところがあったことも確かだ。
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しかし、丸山氏が今回のような事態に陥ったのは端的に以下の理由からだ。
1、丸山氏が維新の会の看板の力を過小評価し、自分の力を過大評価した
2、永田町の生活で、どんどん自分の力を過信するようになった
3、維新の会の中に支えてくれる仲間がいなかった
4、ネットの中の、有権者全体からみればごく一部なのに、声は非常に大きい応援団に依存し過ぎた
これは上西小百合氏があーなってしまったのとまったく同じ。今、丸山氏は「国会議員は絶対に辞めない」とか、「維新がロシア大使館に謝罪したことは意味不明だ」とか、少し前には「国会が辞職勧告決議をするなら、国会議員の世界に存在する様々な問題を公にする!」などと騒いでいる。この様子は、維新を除名処分された後の上西氏の態度とそっくりだ。自分の正当性を主張するばかりで、維新にどれだけ迷惑をかけるか、についてはまったく意識がいかない。
維新は6月9日に、大事な堺市長選挙を迎える。その後7月21日には参議院議員選挙を迎える。特に堺市長選挙は、大阪都構想の実現にとっては負けられない選挙であるし、これまで2敗しており、「今回ばかりは必ず勝つ」と大阪維新のメンバーたちが気合十分で準備にかかっているところだ。丸山氏はそこへの影響などまったく気にもしていない様子で、これは2015年4月の統一地方選挙や5月の都構想住民投票前に、テレビカメラ前での大失態が報道されたにもかかわらず、大阪維新への影響などをまったく気にもかけなかった上西氏とまったく同じだ。
■国会議員を続けるうちに大きな勘違い
丸山氏や上西氏が2012年に初当選できたのは、維新の看板があったからである。彼、彼女は大阪において何の政治実績もなかったし、有権者の誰も、両名の名前など知らない状況だった。当時、大阪においては維新の会という政党は確たる力を持っていた。前年2011年に僕が大阪市長に当選し、松井一郎現大阪市長が大阪府知事に当選した大阪ダブル選挙は、既存の政党とガチンコでぶつかった壮絶な選挙だった。その半年前の統一地方選挙においては府議会では維新が過半数議席を獲得し、大阪市議会でも圧倒的な多数の第一党になった。
このような選挙の大勝利を収める1年前に大阪維新の会を結成し、夥しい数の街頭演説や住民説明会を繰り返した。この大阪維新の会という政治グループを結成できたのも、その前から続けてきた大阪改革の成功が主な要因であり、そのために莫大なエネルギーを費やしてきた。
金も組織もないところから、既存の政党とガチンコでやり合える政党を作ることがどれだけ大変なことか。今の国政の野党は、安倍自民党にまったくかなわない状況だが、大阪においては自民党・公明党どころか、そこに旧民主党や共産党までがひっついても維新にはかなわない。維新がこのような存在になるまでには、それはそれは維新のメンバーのひたむきな努力が積み重ねられてきたんだ。このような経緯を丸山氏や上西氏は十分に認識していない。
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維新の会以外の他の政党は国会議員が頂点に立つ。その下に地方議員が連なるという形だ。ゆえに政治の世界では国会議員が「偉い」ということになる。
しかし、維新の会においては、府議会議員、市議議会議員と国会議員はまったく同じ並びだ。議員という立場で同じ。ただ携わる仕事が異なる、という感覚だ。
ゆえに維新の大阪本部で行われる全体会議では、国会議員だけがちょっとVIP的な席に座るなんてことはない。
ここは、大阪維新の会の府議会議員、市議会議員から国会議員になった者はよく分かっている。もともと同僚としてやってきた大阪維新の会のメンバーに対して、国会議員になったからといって偉そうにすることはない。
しかし、地方議員を経ずに国会議員になってしまった者は大きな勘違いをしていくことになる。
新人一期生といえども、東京の永田町においては、いっぱしの国会議員として扱われる。国会においては、大臣やさらには総理大臣に直接質問をすることができる。夜の会合では、テレビで見たことのある国会議員が集まる場所に顔を出すことができる。海外に行けば、大使館がもてなしてくれる。
こういう生活を続けていくと、何となく自分は偉くて、力のある存在だと思ってしまうのだろう。自分は日本の国を守るため、立て直すための存在だと思い込み、大阪維新の会の府議会議員、市議会議員の地方議員のことなどすっかり忘れてしまう。維新の会の力というよりも、自分の力によって今があると思い始めてしまう。
そのような態度が、大阪維新の会のメンバーにも伝わるのだろう。丸山氏も上西氏も、大阪維新の会のメンバーからすこぶる評判が悪かった。それを候補者として選んでしまったのは僕の不徳の致す限りだ。
改めて言うが、丸山氏、上西氏は維新の会の看板があったから当選できた。
しかも丸山氏の19区は、大阪維新の会の幹事長であり、日本維新の会の副代表でもある今井豊氏の地盤でもあり、維新の会がやたらめっぽう強い地域である。今井さんのみならず、19区に存在する大阪維新の会の地方議員は、とにかく選挙に強い。だから、特に丸山氏は、大阪維新の会のメンバーによって当選できたと言い切れる。
にもかかわらず、丸山氏にはその意識がめっぽう弱く、自分の力で当選したと思い込んでいる。ゆえに維新の会というブランドを築き上げてきた大阪維新の会のメンバーへの敬意もへったくれもない。
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■松井代表を茶化したツイートには僕も大激怒!
前回2017年10月の衆議院議員総選挙の後、丸山氏は日本維新の会の代表選を求めてきた。代表選を求めるのは何ら問題ではない。しかし、松井さんへのその言い方が大問題だ。何もへりくだって、崇め奉るように言えと言っているのではない。
「若造に言われんでも代表(橋下注・松井一郎氏のこと)は言うだけの人ちゃうし、ちゃんとやりまっせですね、失礼をば」とのツイートに、「松井さんに向かってこの言い方はないやろ!」と僕は怒った。
今考えると、丸山氏はこのときも酒を飲んでツイートしていたのかもしれない。
僕はツイートで反撃して、「ボケ!」の連発をかましてやった。
丸山氏にも、振り上げた拳を降ろす機会を与えてやらなきゃいけないので、僕はわざと一線を超えるようなツイートをして、先に僕から謝りのツイートを打った。大阪維新の会の幹部がその機会を捉えて、丸山氏と僕の間に入り、電話を繋いだ。
丸山氏は神妙に自分の非礼な態度について謝ってきたので、僕も自分の一線を越えたツイートについては謝った。代表選を求めるのはまったく構わないが、やはり維新を築いてきた先輩たちの努力には一定の敬意を示すべきだと伝えた。
丸山氏は分かりました、と真摯に答えたんだよね。
だから僕はそれで手打ちができたと思っていたんだ。そしたら数日後の新聞に、丸山氏の「和解をしたつもりはない。自分から謝る理由はない」とのコメントが載っていた。これで僕の怒りは大爆発(笑)
彼は、「表では絶対に引かない」という強気の姿勢にこだわっているんだろう。
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(ここまでリード文を除き約3000字、メールマガジン全文は約1万1000字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.152(5月21日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【沸騰・丸山穂高氏問題(1)】一部ネットの声をバックに過激主張。維新の除名処分、国会の辞職勧告は是か非か?》特集です。
(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)
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