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「QR決済」が好きな大学生の4つの特徴

プレジデントオンライン / 2019年5月23日 9時15分

座談会の収録の様子(撮影=プレジデントオンライン編集部、以下すべて同じ)

各社が一斉に参入した「キャッシュレス決済」。普及のカギを探るべく、今回6人の若者の座談会を収録しました。世界の「キャッシュレス社会」に関して研究を行っているサイバーエージェント次世代生活研究所・所長の原田曜平さんは「若者たちの間では小さな財布やバッグが流行している。小銭を増やさずに済む点をアピールすれば、普及に弾みがつく」と指摘します――。(後編、全2回)
【座談会メンバー】
法政大学国際高校3年・赤峰沙枝、早稲田大学3年・牧之段直也、中央大学2年・小川莉歩、日本女子大学2年・千葉愛子、青山学院大学3年・浅見悦子、青山学院大学2年・里村萌恵。

■「キャッシュレス派」はお金に余裕のある人

【原田】前回、若者のキャッシュレス決済の使用状況について皆で議論したんだけど、それを踏まえて、周りにいる「キャッシュレス派」と「現金派」のタイプの違いを教えてもらえるかな。

【浅見】キャッシュレス派、特にQRコード決済やプリペイドカードを好む人の特徴は、①小銭が増えるのを嫌う人、②会計を早く済ませたい人、③現金の盗難を警戒する人、④お金遣いが荒い人ですね。

【原田】①の「小銭が増えるのを嫌う人」は、財布やバッグが小さい。つまりオシャレな人の傾向があるという話だったね(※前回参照)。

②も③も分かるけど、④はどういう意味かな?

【浅見】私がお金遣いが荒いと感じる人の傾向は、大学の学費を両親が全額を払い、本人はバイトをしていないなど、お金に困ったことがない友人の中に多い印象です。この人たちは、買い物の際も財布や口座にいくら残っているか心配にならない人が多く、使用金額や残金を目で現金を見て確認する必要性をあまり感じていない人が多いんです。

【原田】家庭環境や収入などに恵まれているので、そもそもお金への関心が周りよりも薄く、どんな形でもお金はお金というドライな考え方を持っている、ということなのかな。

【浅見】彼らは現金を目で見て確認できなくても良いので、現金以外の支払い方法で払うことに抵抗がありません。だから、使用額の現金を目で見てその都度確認したい現金派よりも、キャッシュレスに抵抗がないようです。現金を確認するよりも、支払いが早く楽な決済方法であるキャッシュレスを好む傾向にあるんだと思います。

【原田】なるほど。では、現金派はどんなタイプの人たち?

【浅見】はい。一方の現金派は、①家計簿もノートに記入するようなアナログ好き、②デジタルをそもそも信用してない人、③お金の使い方が慎重な人、④新しいものより使い慣れている物を好む保守的な人、という感じです。

【原田】アナログで慎重で新しいモノが嫌いな保守的な人、ということだね。まだ若者の間でキャッシュレス決済がまだまだ普及していないことを考えると、日本には若者なのにこのタイプの若者が意外と多い、ということなんだろうね。しかも、財布やバッグが大きい、言い換えるとオシャレじゃない人もこのタイプの中に多い、と。

【里村】私、現金派だし財布も大きいから、ダサい人だ……。

■キャッシュレス派は「面倒くさがり」が多い

【原田】(笑)。他に意見はあるかな?

【里村】キャッシュレス派は「面倒くさがり」が多いと思います。小銭をいちいち数えたくない、リュックからいちいち財布を出したくないという声がありました。そういう人はプリペイドカードもいちいちチャージするのが面倒だからオートチャージにしたり、クレカと連動させたりしていますね。

【原田】まあ、現金派の君の視点から見たら「面倒くさがり」という表現になるんだろうけど(笑)、逆に言えば、「便利さを求める人」という表現でも表せるよね。

ちなみに、実は僕はまだバリバリ現金派なんだ。理由は東京でさえ、まだまだ現金しかダメ、っていう飲食店が多いから。巣鴨の焼き鳥屋なんて大体そうだよ(笑)。でも、そんな現金派の僕でさえ、本当は完全キャッシュレスにしたいと思っているんだけどね。

【牧之段】僕の周りのキャッシュレス派は、情報収集力があってすぐ実行に移す気質の人、いう感じです。

【原田】「能力のある人」。あるいは、「ミーハーな人」とも言えるかもしれないね。

【牧之段】あとは、現金派には、「そもそもクレジットカードを持っていない人」も含まれると思います。

【赤峰】私たち高校生の場合、クレカどころか自分の銀行口座すら持ってない子も結構いるので、完全キャッシュレス派はゼロです。現金チャージという方法もありますけど、チャージするほどそもそもお金がないですし、こまごまチャージするのも面倒くさいので。

【牧之段】QRコード決済の場合、クレカを持っていなくても銀行口座と連携できるはずなんですが、銀行口座と連携できること自体を知らない若者もまだまだ多いはず。

【小川】「詳しいことを知らないからキャッシュレス化していない」という現金派は、たしかに多いですね。使ってみたら意外と便利だということも知らない。

【原田】高校生・大学生の中には、現金派にならざるを得ないでなっている人もたくさんいるわけだ。

【牧之段】あと、浅見さんの出した現金派の特徴である「③お金の使い方が慎重」は、裏返すと使いすぎを防ぐために現金で管理したいということでもありますね。学生だと収入が少ないですから、現金の減りを日々目視することで自己管理しています。

【原田】キャッシュレスにした方がデータで明確に残るので、本当は現金よりもちゃんとお金の管理ができるはずなんだけど、残金を現物で見て確認した方が安心、ということなんだろうね。日本はいまだに現金信仰の強い保守的な若者が多いんだろうね。

【千葉】私がインタビューした若手社会人たちは、私の周りにいる学生たちと違って、全員がキャッシュレス派でした。だから、社会人になって、比較的お金に余裕ができるとキャッシュレス派になる人が多いのでは。

お金に余裕のない学生でキャッシュレス決済をよく使っている人は、大人と関わることが多い人です。社会人の先輩とかがQRコード決済しているシーンに居合わせて、「これなんですか?」「便利だよ」みたいに説明を聞いて使いはじめるんですよ。

【原田】クレカを作れない高校生や大学生を狙うか、お金に少し余裕のできる若手社会人を狙うか、キャッシュレス決済サービス業者は、ターゲットとタイミングとインサイトをしっかりと見定めないといけませんね。

皆の意見を総合すると、キャッシュレス派の若手社会人には総じて「できる人」という良いイメージがあるようだから、「できる社会人の身だしなみ」みたいな訴求の仕方は若手社会人には効くかもしれないね。

■割り勘はキャッシュレス決済向き?

【原田】ここらでキャッシュレス決済向きのシチュエーションと現金決済向きのシチュエーションを整理してみたいと思います。みんなの意見として一致していたのは、小銭のやりとりが煩わしいコンビニではキャッシュレス決済が向いている、ということだったよね。

【浅見】列が長い時に早く会計が済みますし、店員さんの立場からしても釣り銭ミスが減るのは良いことだと思います。

【原田】多人数で食事をしたあとの割り勘はどうかな? 「LINE Pay」は割り勘機能を売りにしているらしいけど。

【赤峰】全員が「LINE Pay」を使っていなければ割り勘ができませんし、今はファミレスなどでも個別会計のできる店がほとんどなので特に必要性を感じていません。

【原田】そうか、アメリカでは「Venmo(ヴェンモ)」という個人間送金アプリで割り勘をするのが若者の間で定着しているのだけど、そもそも割り勘が昔から根付いており、個別会計してくれる店が多い日本では、少なくともアメリカに比べると必要性自体が少ないんだね。

【千葉】そうですね。割り勘はなんとなく現金のほうがいいかな。

【小川】私は割り勘機能って便利だと思いますよ。計算してる時間がもったいないし、1円単位で割り勘するから、飲み会に行く前にお金を細かく崩しておく必要があるから現金はとっても面倒。小銭が多くなって財布が重くならないためにも、割り勘こそキャッシュレス向きでは?

【里村】私も割り勘機能はキャッシュレス向きだと思います。

【牧之段】僕も「LINE Pay」の割り勘機能に憧れはあります。使ったら便利だろうな、って。

でも、現状のLINE Payは少々若者ニーズとずれている点があるようで……。

LINE Payの割り勘機能は、LINE上で「割り勘グループ」を作成し、割り勘する友達にそのグループに入ってもらいます。グループに入る人は、現金で支払うのか、LINE Payで支払うのかを選択してグループに入ります。全員がそのグループに入ったのを確認した後、グループの代表者一人がLINE Payを通してお店に支払います。そして、代表者が、グループに参加している一人ひとりの携帯に送金してほしい金額をリクエストします。合計金額を人数分で割った金額が設定されますが、この際に金額の調整は任意でできるそうです。

参加者一人一人には、代表者が決済した合計金額と、自分にリクエストされた金額のどちらも確認できます。そして、代表者に対してLINE Payを通して送金する、という流れです。

ちなみに、合計額はわかっても、お互いそれぞれがいくら払っているか、というのはわからないようです。代表者は金額を設定するため、全員の支払額はわかるようですが。

となると、例えば女子とのデートの場合、かかった総額と女子に払ってもらう金額が女子に分かってしまうことになり恥ずかしいなと思います。

■ディズニーランドに行く時はマスト

【原田】男子が多く払ってないことが女子にバレるから? 女子の分を完全におごるか、男が多めに出すといった気概がもはや日本男児にはないんだね(笑)。

でもさ、現金会計だって、個別会計したら「あ、こいつ、割り勘するんだな」って相手に分かっちゃうから結局は同じことなんじゃない?

【牧之段】現金の個別会計だと、ひとりずつレジに対面して払うじゃないですか。それだと、女の子と同額なのは自分の責任じゃないみたいな気がするんですよ。だけどテーブルで二人のスマホ上に金額が出ちゃうと、気まずいというか、そこに流れる空気が嫌というか……。

【原田】あまりに小さいなあ(笑)。でも、言いたいことはなんだかわかる。

じゃあ他にキャッシュレス向きだと思うシーンは? きっと主に荷物を減らしたいと思うシーンだよね。

【赤峰】ディズニーランドに行く時はマストですね。極力荷物を減らしてパークを回りたいので。ディズニーは今のところQUICPay、交通系IC、idとクレジットカードしか使えないようなので絶対にニーズは強いと思います。ディズニーでの荷物はスマホとカードと「持ち充(もちじゅう)」だけにしたい。

【原田】持ち充?

【赤峰】持ち運び式充電器のことです。

【千葉】え、私たちはモバ充(モバイル式充電器)って言いますけど。

【牧之段】僕はモババ(モバイル式バッテリー)です。

【原田】なんでもいいよ(笑)。

【千葉】赤峰さんの意見はよくわかります。ディズニーランドはポシェット1個だけで行きたいから、小銭はないほうがいい。ディズニーランドが全部キャッシュレス化してくれたらうれしいですね。

【原田】ハロウィンという今や国民的イベントが、まさにディズニーとUSJの仕掛けから一般社会にも普及していったように、若者の多くが行くディズニーとUSJが完全キャッシュレス化を実施したら、一気に日本のキャッシュレス化が進む、少なくとも若者の間ではキャッシュレス化が定着するきっかけになるかもしれないね。

■現金は「不衛生」

【浅見】お祭りの露店は現金向きだと思います。コンビニと違って300円とか500円とか金額の区切りがいいので、お釣りを間違えませんし。キャッシュレス決済だと、露店が端末を導入するのが大変そう。

【原田】中国の大都市部では路上のタバコ屋でも端末が導入されているから、露店に普及させるのも不可能ではないと思うんだけどね。

あと、浴衣を着ているシーンだと、できるだけ財布は軽くしたいんじゃないの? そうなるとスマホだけでいいキャッシュレス決済がありがたかったりするんじゃない?

【里村】衛生面でもキャッシュレス決済のほうがいいですよ。私、デパートのケーキ屋でバイトしてるんですけど、一人のお客さんに対して必ず一人の店員がケーキを箱に入れて、会計もする決まりなんです。

ただ、会計を必ず最後にするなら現金決済でも良いんですけど、時々先にお金を渡してくる人がいるんですよ。そうなると、お金を触った手って汚いから、いちいち手をきれいにしてから箱詰めしなきゃいけなくなる。余計に時間がかかるんですよ。

これがスマホのキャッシュレス決済なら、衛生的だし時間も短縮できます。お祭りの露店もたいてい一人の人が全部やっているから、キャッシュレス決済化で喜ぶ女性は多いんじゃないでしょうか。

【小川】たしかに、現金は汚い。寝る前にもお金は触りたくないですね。

【原田】スマホの画面も相当汚いけどね(笑)。若者の間で恐らく増えているであろう潔癖症的な感覚を、キャッシュレス決済普及に役立てるという新しいストラテジーが必要だね(笑)。

【里村】コンビニのおじさん店員にお釣りを渡される時、お釣りを釣り銭トレーに入れて返すのではなく、手渡しの人がいるじゃないですか。ああいうのも嫌で……。

【原田】女子に特にそうしたニーズは多いかもね。おじさんとしては大変悲しいことだけど、日本中のレジをおじさんだらけにしたら、若年女子を中心に、日本のキャッシュレス化は進んでいくかもしれないね(笑)。

あとはさっき浅見さんから出た、「③お金の使い方が慎重」な人にとって、特に高額の買い物をする時は現金決済のほうが向いているのかもしれないね。この人たちは保守的な人だから、電子マネーで物理的に大量のお金が知らず知らずの間に動くことに抵抗がある。本当は慎重派であればこそ、お金の出入りが明確に管理しやすい電子マネーのほうが向いてるんだけどねえ……。

■どこでも絶対に使える現金の安心感は、どうしても捨てがたい

【千葉】本当はそう思います。チャージ式のキャッシュレス決済なら、月のはじめに「これだけしか使わない」と決めてその金額だけチャージできますから。

【原田】決まった額の現金を月初に財布に入れても同じことなんだけど、それだと財布が重くなる。キャッシュレス決済の方が、節約と利便性を兼ねると思う。

【里村】私は現金派なんですけど、どこでも絶対に使える現金の安心感は、どうしても捨てがたいです。具体的に言うと、旅なんですけど。

【原田】旅先で?

【里村】先日三重県の志摩スペイン村に友達と旅行に行ったんですが、泊まった旅館が現金決済だけで焦りました。私以外の友達はクレジットカード決済ができると思っていたから手持ちの現金が少なかったんですけど、私はたまたま現金で5万円くらい持っていたので、なんとか全員分の支払いができたんです。まだ地方では現金しか使えないところも多いなと痛感しましたね。

【原田】僕も先日、三重の伊勢で伊勢エビの懐石を何人かで食べに行ったんだ。飲み物入れて一人1万円ちょっとのコースだったんだけど、カードが一切使えなくて超びびりました。この単価設定のお店でもカードが使えないんだ、って。接待とかでこのお店を使う人は、常に数万円を持ち歩いていないとこのお店に来られない、ということですもんね。防犯上も実はかなり危ない。

いずれにせよ、三重はキャッシュレス決済を普及させたい業者にとっては鬼門のエリアだね(笑)。

ちなみに、先日、ニューヨークの大学生たちに話を聞いたら、キャッシュレス化の進んだニューヨークでもごく一部、現金しか使えない店がいまだに存在するらしい。昔からやっている老舗のバーとか。だから、クレジットカードやデビットカードを基本の支払い手段としながらも、プラスして何かの時のために一応20ドルくらいの現金を持っている大学生が多かったです。

日本がずっと5万円を持ち歩かないといけない社会のままでないことを願う(笑)。

■20%還元よりスタバ1杯

【原田】じゃあ、キャッシュレス決済、なかでもQRコード決済をやっていない若者にキャッシュレス決済を利用してもらうには、どうすればいいと思う?

【牧之段】「PayPay」を使い始めた友達は、行きつけのタバコ屋店員に直接勧められて登録したそうですよ。目の前でスマホ画面を指さしで「そこをタップして」とか指示されて。登録が面倒という話が出ましたけど(※前回参照)、よく知っている人や友達に手取り足取り教えられたら、結構背中を押されるなと思いました。仲間うちに一人詳しいやつがいたら教え合うようになるんじゃないかな。

【千葉】私も、この調査をするにあたって友達に無理やり「LINE Pay」を登録させたんですよ(笑)。彼女、やる前は「信用できない!」とか言ってたのに、後で聞いてみたら「めっちゃ便利!」だって(笑)。

【原田】キャッシュバックキャンペーンより、身近な人の勧めのほうがインセンティブ効果が大きいのかもしれないね。やっぱり、お金という信頼性が関わるサービスだから、信頼性が高い身近な人からのススメが効くのかもしれないね。ネズミ講みたいだけど、友達に登録させたらキャッシュバック、みたいなキャンペーンもやったらいいかもね。

【赤峰】私としては「20%還元」って言われるより、直接モノがもらえるとか、わかりやすく「500円くれる」のほうが惹かれます。高校生は暇なので、サーティーワンのシングルコーンを無料で手に入れるために1時間とか並んじゃいますから(笑)。

【原田】ソフトバンクの「SUPER FRIDAY」ね。吉野家やミスドでもやってて、毎回長蛇の列ができてたやつだ。そうか、QR決済を体験させるためにQR決済でキャッシュバックするキャンペーンばかりだっただけど、案外、現物や現金でキャッシュバックした方が若者たちには響く、ということもあるかもしれないね。

【赤峰】たとえば「PayPay」がスタバと組んで、「スタバのドリンク1杯無料キャンペーン」とかやったら、いいんじゃないですか。

【里村】「PayPay」の20%還元はたしかに魅力的だと思いますけど、Amazonも割引期間中だったので、「欲しいものがAmazonのほうが安かったからやらなかった」という人がいました。

また、「500円もらえる」だと、むしろ小さい額だからこそ逆に安心できたりします。Pay Payに登録して使うだけなのに20%など大きな利益があると、裏側には情報漏洩などのデメリットもあるのではないかと心配になってしまいます。でも、500円程度だったら「登録者数を増やしたいからちょっとだけサービスしてるだけなんだろうなぁ」と気軽に考えられて登録に踏み込みやすいです。

【原田】そうか! 還元し過ぎても逆に不信感が募ることもあるんだ。登録動機になり得るちょうどバランスの良い金額設定が大切なんだ。今の若者たちは本当に現実的になってきているね。

■現状の日本は、業者だけが盛り上がっている

【千葉】さっきも出ましたけど、QRコード決済に関しては使えない店が多いとか、どの店が使えるかわからないという声が多いんですよね。

【浅見】だから使える店の拡大は絶対必要ですし、どこで使えるかの情報拡散も絶対必要。

【牧之段】好きな古着屋さんがインスタのストーリー(24時間で消える画像・動画機能)で店までの道順を動画で教えてくれてるんですけど、そんな感じで動画で支払い方法を紹介してくれるといいと思います。

【原田】キャッシュレス決済サービス側も、若者に人気のインスタのストーリーを使って積極的にアピールしていくべきだよね。若者にとってはテレビ広告をがんがんやられるより、もっと普段から使っていてなじみのあるストーリーズでの施策の方がありがたいと思うのかもしれないね。

ところで、キャッシュレス決済業者は多額のお金を投資して躍起になっているのは分かるんだけど、実際のお店側はどこまで必死になっているんだろうね。キャッシュレス決済業者は、消費者へのキャッシュバックキャンペーンや啓蒙活動のみならず、お店側へのキャッシュバックや啓蒙をしていかないといけないかもしれないね。

「業者、お店、消費者」が「三位一体」となって盛り上げて始めてキャッシュレス化は成功するもので、どうも現状の日本は、業者だけが盛り上がっている状況に見えてしまうね。逆に言えば、業者が「お店」と「消費者」のインサイトをきちんと把握しておらず、うまく彼らを巻き込めていない、ということもできるかもしれない。

■私たちが行く店で導入してほしい

【赤峰】私たちが日常的に行く店でQRコード決済を導入してくれると、使う動機になりますね。学校の購買とか食堂とか。自販機で使えるだけでも使うきっかけになります。最近はプリクラでも、クレカやICのプリペイドカードが使えますし。

【小川】韓国系のファッション通販のような、マニアックだけどファンがいるようなオンライン通販で使えるようになると利用者が増えると思います。私が調査した大学生の「電子マネーを使わない理由」として、利用したいオンライン通販が対応していないから、という回答が多かったので。

【原田】なるほどね。若者の「消費の動線」をキャッシュレス決済業者はしっかり理解し、そこでサービスを導入していかないといけないね。ただ無作為にキャッシュバックキャンペーンをやり続けても効果が薄いということだね。先ほどのディズニーでのキャッシュレス化のアイデアはまさにこれと同じ話だよね。

欲しいものがない店でどれだけキャッシュバックされたところで、若者にとっては大した魅力にはならないと。

あと、店でどのキャッシュレス決済が使えるかどうかをわかりやすく表示するというのも必要だったね。レジまでどれが使えるか分からないのは嫌だ、ということだったよね。

【牧之段】はい。店に行って、探しても探してもどれが使えるかの表示がないから、結局ネットで調べるなんて手間が出てきてしまう。これじゃあ絶対に使わない。

【小川】QRコード決済が普及しない一番の理由は、「登録がめんどくさい、めんどくさそう」に尽きると思います。めんどくさいから、やらない。やらないから仕組みも良さもわからない。わからないからなんとなく怖い。さらに周囲でもやってないから、余計にやる理由がない。

(全員、うなずく)

【原田】QRコード決済は使ってみれば結構便利なのに、かなり入り口のところで普及が阻まれてしまっているね。かといってキャッシュバックでも一回やって終わってしまうケースも多い。たった一回ではなく、もっと利便性を感じるまで使わせるキャンペーンが必要かもしれないね。

【牧之段】「わからない」で言うなら、決済手段が多すぎてよくわからない、という人もいました。

【浅見】そうですね。電子マネーと呼ばれるものだけでも、プリペイドのICカードやスマホのQRコード決済など、種類が多すぎます。

■日本のキャッシュレス化の未来

【原田】そこが「Alipay(アリペイ)」と「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」の2つのサービスに集約されている中国の現状とは違うところだね。中国も初期は乱立していたようだけど、日本も早く今の中国のようにいくつかに集約されるべきだね。これだけ乱立していると、若者としては「たくさんあるし、よくわかんないから別にいいや」となってしまう。

ただ、「荷物を軽くしたい」とか「会計の煩わしさから脱したい」とか「割り勘を気軽にしたい」といった若者たちの志向とキャッシュレス決済の親和性は本来高いはずなので、若者たちにはキャッシュバック以外のインセンティブで「とりあえずある期間以上体験させる」機会を作ることが、キャッシュレス決済業者には求められていることなんだろうね。

今日の高校生、大学生の皆の意見には、日本のキャッシュレス化を進めたいと思っている日本政府やキャッシュレス決済業者にとって大変多くのヒントが含まれていたと思うけど、彼らがどこまで本気で若者を見て、彼らがどれだけ本気でこの文章を読解できるかに日本のキャッシュレス化の未来はかかっていると思いますね。

やっぱり、多くの変化は、変化を受容しやすい若者世代から起こることが多いので、日本全体が高齢化する中、政府も業者もちゃんと若者と向き合えるといいですよね。

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原田曜平(はらだ・ようへい)
サイバーエージェント次世代生活研究所 所長
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』『ヤンキー経済』『これからの中国の話をしよう』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。

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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=稲田豊史、撮影=プレジデントオンライン編集部)

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