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世界のエリートは"金曜日の夜"に働かない

プレジデントオンライン / 2019年5月31日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/blackred)

残業や週末出勤を繰り返して、「自分はがんばっている」と思ってはいないか。ベリタス代表の戸塚隆将氏は「外資系企業では、金曜日は仕事を早く切り上げて帰る人が多い。自分のリソースを効率よくつかって、オン・オフをしっかり切り替えてこそ成果が出せる」という――。

※本稿は、戸塚隆将『1%の違い 世界のエリートが大事にする「基本の先」には何があるのか?』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■意識的に仕事を切り上げる

私がかつて働いていたグローバルファームでは、1週間のうち、オフィスから人がいなくなる時間帯がありました。それは金曜日の夜です。連日遅くまで働いている人たちも、金曜日になると仕事を早めに切り上げて帰る人が多いのです。

彼らにとって、金曜日の夜は週末の一部です。その時間にオフィスに残って仕事をしていると、緊急性の高い仕事を除いて、オン・オフの切り替えが苦手なワーカホリックな人に見えかねません。

仕事は、つねに目の前にあるもので、すべてを片付けようとしても無理があり、キリがありません。そのため、意識的に自分の仕事を切り上げて、オフィスを早目に出るようにしないと、気分転換はできないものです。

さて、金曜の夜、グローバルファームで働く人びとは、次のように周りに声をかけてオフィスを出ます。

「Have a great weekend.」
「Enjoy your weekend.」

いずれも「よき週末を」という意味ですが、これらの言い回しからもわかるように、彼らは基本的に休日出勤せず、週末はプライベートをしっかりと楽しむことを前提としています。

■「週末仕事漬け」は自慢できない

週明け、月曜日の朝のあいさつはこうです。

「How was your weekend?」

天気や仕事のことより、週末をどう楽しんだのかということを真っ先に聞くのが、彼らの常識です。これが一種の決まり文句になっているのは、当たり前ですが「週末はプライベートの時間」という前提があるからです。

もちろん、仕事の状況によっては、休日もオフィスに出てきたり、自宅で書類仕事を片づけたりしなければならないこともあるでしょう。じつは私もそうでした。

ただ、週末に働いたからといって、月曜日の朝のあいさつで「この週末は仕事漬けだったよ」と答えるのは避けたいもの。「ワークライフバランスを自分でコントロールできていない人」という印象を相手に与えてしまう可能性があるからです。

実際に週末に働いていたとしても、会社のためにプライベートを犠牲にして働いたという意味ではなく、成果を出すために主体的に仕事をしたというポジティブな雰囲気をにじませるべきです。ここが、グローバルに活躍している人の仕事意識の「1%の違い」です。

「○○についていいアイデアが浮かんできたから、忘れないうちに日曜日に提案書をつくったんだ。あとで見てくれるかい?」

これくらいポジティブな姿勢を見せたら、周囲も理解してくれるかもしれません。つまり、「不本意ながら休日出勤して疲れた」という気持ちを出さないことが大事なのです。

■勤勉さが必要な場面を見極める

私たち日本のビジネスパーソンは勤勉だと、よく言われます。では、海外のエリートたちは、私たち日本人と違って怠惰なのでしょうか?

戸塚隆将『1%の違い 世界のエリートが大事にする「基本の先」には何があるのか?』(PHP研究所)

いいえ、そんなことはありません。違いがあるとすれば、ともに働いた海外の同僚たちの多くは、とにかく「どのような場面でも」全力で取り組むという種類の勤勉さは持ち併せていないことです。

それは彼らが不真面目だからではありません。手を抜くのは、一生懸命やっても効果がないと考える場面だけです。逆にいうと、がんばることが目標の達成につながると考えれば、私たちにも負けないくらいに、いやそれ以上に勤勉に働くのです。

彼らは、目標というものを強く意識していました。たとえば「いつまでにこれだけのアウトプットが必要」と目標を設定されれば、それに向けて全身全霊で取り組みます。

一方、たとえやることを決められていたとしても、状況が変わり、目標の達成につながらないと判断したことに関しては「ムダな努力」と見なし、ばっさりと切って捨てます。勤勉でないというより、勤勉さが必要な場面とそうではない場面を見極めて、自分のリソースを効率的に使っている、といったほうが実状に近いでしょう。リソースが有限であることを強く意識し、力を入れる勘どころをしっかり押さえ、リソースを効率よく使って最大限の成果を出そうとするのです。

■「がんばっているプロセス」に価値はない

ある企業買収案件のアドバイザリー業務に関わっていたときのことです。週1回、私たちはグローバルに事業を展開するクライアント企業の担当役員と国際電話による定例会議を行なっていました。毎回活発な議論となる、たいへん重要なミーティングでした。

ある日、いつものようにクライアントとの電話会議を始めると、先方から次のひと言が発せられました。

「今日のミーティングの目的は何でしたっけ?」

いつもどおりにミーティングを進めようとしていた私たちは、ハッとさせられました。というのも、この1週間は特段状況に進展がなく、長い時間話し合う必要もなかったからです。

「状況が状況ですし、今日は早めに切り上げましょうか」

クライアント側のそのひと言にその場にいた全員が納得し、その週のミーティングは早めにお開きとなりました。

私たち日本人の感覚からすると、クライアントの対応は一見、クールにみえるでしょう。しかし、彼らは結果の如何にかかわらず、「どのような場面でも」全力で取り組むということはしません。これも、グローバルに活躍している人の仕事意識の「1%の違い」です。

手を抜かないのはいいことなのですが、「がんばっているプロセス」に価値を見出しているために、ときにそれがムダを生み出し、仕事の生産性を下げている面は直視すべきです。

自分の仕事が終わったのに、上司が帰らないから残って仕事をするふりをしたり、残業が「がんばっているアピール」になると考えたり……。こうした姿勢は生産性を下げるばかりか、長時間労働の温床にもなってしまいます。

■「成果=質(生産性)×量(時間)」

たしかに、手を抜かない勤勉さは私たちの誇るべき美徳です。

しかし、力の抜きどころを押さえておかなければ、大事な局面で疲れ果ててしまい、仕事のスピードが落ちたり、モチベーションを下げたりすることになりかねません。そうなると、結果として生産性が低下し、せっかくの努力が水の泡となってしまいます。

こうした生来の勤勉さに、目標やゴールを強く意識する習慣が加わったらどうでしょうか。私たちはより素晴らしい成果を生み出せるに違いありません。

どんな仕事をするにしても、つねに目標やゴールを意識する。これまた、グローバルに活躍している人の仕事意識の「1%の違い」です。

外資系金融やコンサルティングの世界は、競争の厳しい業界として知られています。そのため、私が働いていたゴールドマンやマッキンゼーでは、ハードワークは求められる資質の一つに数えられます。

そして、彼らが実際にハードワークに身を投じるのも、成果を出すという明確な目標(ゴール)があるからです。

成果は「質(生産性)」と「量(時間)」の掛け合わせで決まります。まずは仕事の生産性を上げることが大切ですが、それだけではライバル企業に勝てません。成果を最大化するには、仕事に投入する時間も増やす必要があります。

しかし、ただひたすらにハードワークを肯定すればよいわけではありません。プロフェッショナルとして、自分にとっての仕事の質と量のバランスを的確に見きわめ、コントロールすることも必要です。

■自分の「成果の最大化」ルールを見いだす

たとえば、私の元上司は、「どんなに忙しい時期であっても、自身で定めた時刻を過ぎて、やみくもに残業をしない」というルールを大切にしていました。それは、自分にとっての必要な休息時間を確保して、翌日も朝から集中して働くためです。彼は成果を最大化するための退社時間のリミットを、明確に認識していたのでしょう。そのことを過去の経験で把握していたからこそ、残業時間も厳しくコントロールしていたのです。

人によって、「質」と「量」のバランスは変わります。そのあたりのバランスがわからず、やみくもに残業をしていた私からすると、成果を出すために自らをきっちりとコントロールしていた上司は、まさにプロフェッショナルでした。「成果の最大化」という視点で、改めて自分自身にとっての最良のバランスを見直してみましょう。

その意味では、どんなに忙しくても、金曜日の夜だけはオフィスを早く出ることから始めてみてはいかがでしょうか。

オンとオフをしっかり切り替え、心身ともにエネルギーを充電させることで、休み明けの職場に活気が戻りますし、仕事の成果もきっと上がるに違いありません。

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戸塚隆将(とつか・たかまさ)
ベリタス代表
1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼーを経て、2007年、ベリタスを設立し、プロフェッショナル英語習得プログラム「ベリタスイングリッシュ」をスタート。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(朝日新聞出版)等がある。

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(ベリタス代表 戸塚 隆将 写真=iStock.com)

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