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"心の知能指数"を訓練で伸ばす4つの方法

プレジデントオンライン / 2019年5月29日 9時15分

あらゆる職種において、成果の58パーセントはEQによって生み出されている。※写真はイメージです(写真=iStock.com/drian825)

仕事で成功するために必要な能力とはなにか。IQ(知能指数)よりも重要だといわれているのがEQ(心の知能指数)である。コンサルティング会社タレント・スマートの共同創業者の2人は「EQとは自分自身と他者の心の動きに気づき、それを理解する力だ。この能力は訓練で後天的にも高めることができる」と説く――。

※本稿は、トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・クリーブス『EQ 2.0 「心の知能指数」を高める66のテクニック』(サンガ)の一部を再編集したものです。

■後天的に強化できる「心の知能指数」

EQとは自分自身と他者の心の動きに気づき、それを理解する力である。また、その気づきを使って自分の行動や人間関係を上手にマネジメントする力でもある。その力が、行動をコントロールできるか、複雑な社会の中をうまく進めるか、賢い判断によって前向きな結果を出せるかを左右する。

「EQ」は「Emotional Intelligence Quotient」の略語で、「心の知能指数」と呼ばれる。それは人間の行動の土台になる要素だが、知性とは違う。

認知的な知性、つまり知能指数(IQ)は、生まれながらに決まっている。知識や情報を蓄えても、IQが上がるわけではない。IQとは学習能力で、15歳でも50歳でも同じだ。しかし、EQは違う。EQは後天的に身につけられるスキルだ。もちろん、生まれながらに高いEQを持つ人はいるが、そうでない人も高いEQを身につけることはできる。そこで、EQを鍛えることが重要になってくる。

■EQと仕事の成功の関係

EQは仕事の成功にどのくらい影響するのだろう? 端的に答えれば、「ものすごく影響する」。EQを高めることで、ひとつの方向に力を集中でき、最高の結果が生まれる。EQとその他の33のスキルを検証したところ、時間管理や意思決定やコミュニケーション力といったほとんどのスキルは、EQに含まれることがわかった。さまざまな重要なスキルの土台になるのがEQである。

あらゆる職種において、成果の58パーセントはEQによって生み出されている。「職場で成果を出せるかどうかはEQによって決まる」と言っていいだろう。リーダーシップと個人の成功の原動力になっているのも、EQだ。

今のEQスコアが高くても低くても、訓練によって高めることができる。また今のスコアが低い人も、同僚に追いつくことができる。オーストラリアのクイーンズランド大学経営大学院で行われた研究では、EQが低く仕事の成果が上がらない人たちも、訓練によってEQを上げるだけで優れた同僚に追いつけることがわかった。

わたしたちが調査した人々の中で、仕事で高い成果を上げている人の90パーセントはEQも高かった。反対に、仕事の成果が低い人のうち、EQが高いのは20パーセントだけだった。

EQを伸ばせた人は仕事でも成功する可能性が高い。仕事の成功とEQは固く結びついている。だからEQの高い人は、当然報酬も高くなる。EQの低い人たちに比べると、平均年収で2万9000ドルもの違いがある。EQはそのまま年収に結びついている。EQスコアが1ポイント上がるごとに、年収は1300ドル上がる。これまでの調査では、EQと成果が結びついていない仕事はなかった。

■EQの四つのスキルを理解する

EQを伸ばすためには、まずそれを構成する4つのスキルを知る必要がある。。四つのスキルは大まかに二つのカテゴリーに分けられる。一つは個人的なスキル。もう一つは社会的なスキルだ。

個人的なスキルには自己認識スキルと自己管理スキルがある。自分の心の動きを認識し続け、行動や傾向をコントロールする力である。一方、社会的スキルには社会的認識スキルと人間関係管理スキルがある。この二つは、他者の気持ちや行動や動機を理解して、人間関係を改善させる力だ。

これら四つのスキルを、もう少しくわしく紹介しよう。

1.自己認識スキル

自己認識力とは、一瞬一瞬の自分の心の動きを正しく把握し、さまざまな状況における自分の「傾向」を理解する力である。特定の出来事や問題や人に対し、自分がつい取りがちな対応を知る力も、この中に含まれる。自分の傾向を正確に知っておくことは、特に重要だ。そうすれば、自分の心の動きがすぐに察知できるようになる。

2.自己管理スキル

人が行動を起こすときや、あえて行動を起こさないときに表に出るのが、個人スキルの第2の側面である自己管理力だ。

自己管理スキルの高さは、自己認識力に左右される。自分の心の動きを的確に把握することが、柔軟性を保ちつつ行動を前向きな方向に変えられる能力につながるからだ。それはつまり、状況や人に対する感情的な反応をコントロールする力だ。

例えば、恐れにとらわれて何も考えられなくなり、どう行動したらいいのかわからなくなってしまうことがある。そんなときに不確実性を受け入れ、自分の心と向き合い、選択肢を探すことができる力が自己管理力である。自分の心の動きを理解し、それをきちんと受け止められれば、どう行動したらいいかはおのずと明らかになるだろう。

3.社会的認識スキル

社会的なスキルの一つ目の要素は、人間関係の土台となる社会的認識力である。他者の感情を正確に読み取り、相手の心の中で何が起きているかを理解する力をさす。他人が考えていることや感じていることが自分と違っていても、相手の立場に立てる能力と言ってもいい。自分の感情にとらわれて、つい他の人たちの視点に立てなくなることはある。社会的認識スキルがあれば、周囲への目配りと気配りができ、重要な情報を読み取ることが可能になる。

4.人間関係管理スキル

社会的スキルのもう一つの要素が、人間関係管理力である。これには、ここまでに述べたEQの三つのスキル、すなわち、自己認識、自己管理、社会的認識のスキルが必要になる。人間関係管理力とは、自分と他人の感情を理解し、その理解を活用して人との関わり合いをうまくマネジメントする力だ。自分の意図を相手に明確に伝え、争いを上手にハンドリングするために、このスキルが必要になる。

人間関係の管理とは、時間をかけて他者と絆を築くことでもある。人間関係の管理に優れた人たちは、自分の気に入らない人とでも絆を築くことの利点をよく知っている。他者と良好な関係を保つことを目標にし、それに向けて努力するのはいいことだ。あなたが他者をどのくらい理解しているか、他者をどのように扱っているか、あなたが自分の経験をどこまで共有できるかによって、人間関係管理力は決まる。

■理性と感情の間で行き来する情報

あなたの脳内では、理性をつかさどる領域と感情をつかさどる領域のあいだで、大都市の通りを車が往来するように、大量の情報が双方向に流れている。EQスキルを身につけると、どちらの方向にもスムーズに情報が流れるようになる。情報量が増えれば、理性と感情の結びつきも強くなる。情報の往来をスムーズに保てるかどうかによって、あなたのEQは左右される。心の動きを理解し、その感情に前向きに対処できるようになれば、情報の往来もよりスムーズになる。

あなたがEQを伸ばすにつれ、脳内の理性をつかさどる部位と感情をつかさどる部位をつなぐ道路上にある数十億もの極小ニューロンが、小さな触手を伸ばして他の細胞に結びつく。一つの細胞は1万5000もの触手を伸ばして、隣の細胞と結びつくことができる。このように結合が次々と生まれることで、思考から行動への通り道も太く強くなり、行動がコントロールしやすくなるのである。

■新しいスキルは6年で定着する

トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス『EQ 2.0 「心の知能指数」を高める66のテクニック』(サンガ)

もちろん、これらのスキルは繰り返し訓練しなければ身につかない。新しい行動を起こすにはたくさんの努力が必要になる。しかし、脳を訓練することで、新しい行動を習慣にできる。

例えば、怒りを感じるといつも怒鳴ってしまうようなら、怒鳴らず怒りに反応できるようにした方がいい。怒鳴りたくなる衝動を抑えられるようになるには、別の反応を何度も訓練する必要がある。最初はつい怒鳴りたくなってしまうはずだが、それを抑えるたびに、脳の新しい通路が強化される。

そのうち、衝動は収まって、怒鳴らずにいられるようになる。新しいスキルを取り入れてから6年以上経つと、変化が定着することが、研究でも証明されている。

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トラヴィス・ブラッドベリー(Travis Bradberry)
タレント・スマート共同創業者
臨床心理学と組織心理学の両方で博士号を取得。EQの世界的権威であり、インテル、コカ・コーラ、マイクロソフトなどの企業や公的機関でも定期的に講演を行っている。
ジーン・クリーブス(Jean Greaves)
タレント・スマート共同創業者、CEO
組織心理学の修士号および博士号をカリフォルニア大学にて取得。心理学の学士号はスタンフォード大学にて取得。産業・政府・教育機関及び非営利団体全般にわたり、リーダシップ育成や人材管理における必須要素としてのエモーショナル・インテリジェンスの提案を行っている。

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(タレント・スマート共同創業者 トラヴィス・ブラッドベリー、タレント・スマート共同創業者、CEO ジーン・クリーブス)

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