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文系人間が読むべき"STEM入門"良書 4選

プレジデントオンライン / 2019年7月1日 9時15分

AI時代の生きる力として教育現場ではSTEMが注目されている。一方で社会人は何を学ぶべきか、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授に話を伺った。

■AI時代のビジネス新潮流

自分は文系だからSTEM(科学・技術・工学・数学)やプログラミングは関係ないと考えている人は多いでしょう。たしかに、ビジネスパーソン全員がSTEMやプログラミングを学ぶ必要はありません。ただ、テクノロジーに関しては別。基礎的な知識を持っていないと、ビジネスの潮流がわからなくなるおそれがあります。

なかでも知っておくべきテクノロジーは、やはり人工知能(AI)です。なぜいま急にAIが浮上してきたのか。大きいのは、ディープラーニングの進化です。従来は、人間に指示された着目点によって学習を行っていましたが(マシンラーニング)、いまのAIはビッグデータをもとに学習を繰り返し、そこにある規則性や関連性を自律的に見つけ出します。

では、AI時代にビジネスをリードするのはどのような企業でしょうか。じつはAIのアルゴリズムや、それを開発する優秀なエンジニアだけでは決定的な差別化の要因になりません。AIの成長に大きな影響を与えるのは、学習のもとになるビッグデータの量です。つまり、大量のビッグデータを有する企業がAI時代の勝ち組になるわけです。

その観点を持つと、米中メガテック企業の競争の行方も見えてきます。現在、世界はGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)が支配的立場で、それを中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)が追う勢力図になっています。これらの会社は当然AIの開発に力を入れており、その点では甲乙つけがたい。

しかし、将来的なビッグデータ量はどうでしょうか。アメリカでは、利用者の知らないうちに企業が個人情報を利用する例が相次ぎ、それに対する反発が強まっています。その流れを受けて、アップルやマイクロソフトは個人情報の利活用を制限することを発表しています。一方、中国は国策としてビッグデータ活用を進めているので、パーソナルなデータをどんどん取得できます。この点ではBATHが有利。いずれBATHがGAFAを逆転する可能性は十分にあるのではないでしょうか。

■算数レベルの知識から始める

冒頭で述べたとおり、テクノロジーの知識は、混沌化するビジネスの世界を理解するヒントになります。文系であっても、最低限の知識は身につけておくべきです。

では、それ以外のSTEMやプログラミングはどうでしょうか。いずれも知識があって使いこなせるのに越したことはありませんが、いままで理系の教育をあまり受けてこなかった文系の社会人がいきなりSTEMやプログラミングに飛びついても、なかなかものにならないと私は思います。

■クリティカルシンキングを身につける

文系の人はいきなり理系の勉強に手をつけるのではなく、まず客観的に物事をとらえるクリティカルシンキングを身につけるところから始めましょう。クリティカルシンキングは文系でも求められますが、理系ではなお重要で、論理的な思考ができないと話になりません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/nd3000)

次に学びたいのは戦略です。中核は経営戦略ですが、営業、マーケティング、財務、人事など、いま自分が携わっている機能の戦略から学ぶと入りやすいでしょう。

戦略的思考までは文系でも必須の教養ですが、もし先に進むなら、入り口になるのは会計や財務、あるいは定量分析や統計です。このうち会計や財務の基礎で求められるのは算数レベルの知識で、ハードルはそれほど高くありません。定量分析や統計になると数学を使うので、中高で数学を苦手としていた人は復習が必要になるでしょう。

数学を復習するといっても、すべて学び直すのは大変です。経営や実務に使う可能性を考えると、「微分積分」「ベクトル・行列」「確率・統計」の3分野で十分です。数学の基礎教養を身につければ、財務や定量分析を数式で表現して思考できるようになります。ただ、数式はあくまでも机上の世界。現実の問題を解決するには、数式をプログラムで表現し直してコンピュータを動かす必要があります。ここで初めてプログラミングが出てくるわけです。

こうした体系的な流れを無視してプログラミングを学ぶのは本末転倒。一見遠回りに見えても、文系としての自分の専門性や必要性から出発して積み上げていったほうが、STEMやプログラミングが“使える教養”になるでしょう。

プログラミングまでは必要ないという人も、プログラミング的思考を磨くことをおすすめします。プログラミング的思考はプログラミングを行うときに使う思考のこと。ひらたくいうと、客観的に最適解を導くクリティカルシンキングと、全体像のデザインから考えるデザインシンキングを組み合わせたようなものです。プログラム的思考はエンジニアとのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、ビジネスの課題解決にも役立ちます。

文系の人がSTEMやプログラミングを効果的に学ぶときの鍵は、やはり必要性です。理系の人は数式をいじったり、プログラミングをすること自体を楽しめますが、文系の人の多くはそうではないでしょう。モチベーションの支えになるのは、学ぶものと実務のつながり。たとえば「微積分は在庫管理に使われている」と聞けば、身近に感じられるはずです。自分の仕事にかかわる理系の知識や技術は何なのか。そこから始めることが理系の教養を身につけるコツなのです。

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▼STEM入門書 おすすめ4選
『微分・積分を知らずに経営を語るな』
学びのモチベーションを高められる一冊。経営に数学が必要だと気づかせてくれる。


『プログラミング教育はいらない』
プログラミングそのものというより、「プログラミング的思考」が身につく入門書。
『データ分析をマスターする12のレッスン』
統計データ分析の基本を習得できるようになる。大学院の田中ゼミでも使用している。
『文系プログラマーのためのPythonで学び直す高校数学』
AI分野で利用されるプログラミング言語と一緒に、数学を学べる一石二鳥の本。

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田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。上場企業の社外取締役や経営コンサルタントも務める。近著に『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』。

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(立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授 田中 道昭 構成=村上 敬 撮影=研壁秀俊 写真=iStock.com)

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