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"SNS上でファンが暴走"被害を抑える方法

プレジデントオンライン / 2019年7月4日 15時15分

事務所が発表した運営方針は、男性を意識した内容だった。

■声優へ1日1000件のメッセージを送信する男性

『ばくおん!!』や『ゆるキャン△』といったアニメ作品のメーンキャラクターを演じる人気声優・東山奈央の公式ツイッターをめぐって、インターネット上で議論が起こっている。

事の発端は、2017年夏ごろから「奈央の未来の旦那」を自称する男性ユーザーが東山氏の公式ツイッターアカウントに対し、1日数百~1000件のリプライ(返信機能を使ったメッセージ)を送っていることである。

いまやアイドルや声優に対し、ファンがリプライを送ることは珍しいことではない。演者のリプライ欄はファンレター的メッセージを送ったり、ファンが同好の士を見つけたりするための場として機能している。

しかし、男性が送るリプライは多い日で1000件以上にのぼり、文字数に換算すると1万字を超えることもあった。東山氏のリプライ欄は彼の投稿で埋め尽くされ、東山氏もファンも彼以外の投稿を確認することが困難な状況となっていた。投稿内容も日を追うごとにエスカレートし、19年に入ってからは「今日は1日奈央が入るトイレの前にいます」「両親の前で奈央にキスをする」といった内容の投稿が見られた。

■「奈央と結婚できるまで絶対に諦めない」

この事態を受けてか、東山氏の所属する事務所は19年5月17日に大量のリプライを送る行為や公序良俗に反する内容の投稿、ストーカー等犯罪的な内容の投稿等を行ったユーザーをブロックすると声明を発表し、同19日には男性に対し、名指しで警告を行った。

しかし、男性はその警告ツイートに対しても100件以上のリプライを行い、とうとう公式アカウントからブロックされてしまう。その後、男性のツイッターアカウントはファンの通報によりツイッターの規約違反と判断され、凍結されるに至った。だが、彼はツイッターアカウントを作り直すばかりか、YouTubeでも活動を開始し、いまだに同様の投稿を繰り返している。

今回の騒動に際し、演者側は「迷惑を被っている」と判断したからこそ、前述の声明を発表し、ファンもまた迷惑だと判断したからこそ、通報を行って男性のアカウントを凍結させた。

しかし、男性の行動に変化は見られない。それどころか、男性は「何度ブロックしても奈央と結婚できるまで絶対に諦めない」といった内容の投稿を行っており、事務所側とファンからの働きかけは効果がなかったようにも思われる。

人気声優・竹達彩奈のストーカー被害などの前例があるにもかかわらず、事務所側の対応は後手に回り、迷惑ユーザーの増長を許した感もある。こうした対応の遅さを非難するのは簡単だが、実際問題として、SNS上でファンの暴走を抑制する有効な手立てが少ないということも無視できない。

事務所側はどう動くべきだったのだろうか。

■早い段階で弁護士から警告を出すべきだった

ライズアクロス法律事務所の青木健悟弁護士は「現行法下ではストーカー、SNSによる悪質な行為への迅速な対応は望めない」と語る。

例えばストーカー規制法に基づく対処を行う場合は、警察や公安委員会から出された警告や禁止命令が無視された後、ようやく逮捕が行える。「すみやかに迷惑行為をやめさせる」という観点から考えた場合、このステップは迅速とは言い難い面もある。

青木弁護士は「所属している声優を安全な環境で活動させるため、事務所側は早い段階で悪質な利用者に弁護士から警告を出し、改善がなければブロックするべきだった」と分析した。

事務所側はSNSでの情報発信を通じて、ファン側に演者を身近な存在だと認識させることに成功したが、その半面、ファンを野放しにすることで今回のような「好意からの暴走」を招いてしまった。

事務所側が手に負えなかったのは、今回のような迷惑行為を行ったユーザー個人ではなく、ツイッターというプラットフォームだったと言うべきなのかもしれない。

とはいえ、もはやビジネス上SNSでの情報発信は避けては通れない。アイドル・声優事務所は、この難題への解答を見つけられるのだろうか。

(髙橋 優)

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