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サッカー選手の「生きる力」が超強いワケ

プレジデントオンライン / 2019年6月29日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ArtmannWitte)

一流のサッカー選手は、競技以外でも卓越した能力を発揮していることが多い。なぜなのだろうか。ジュニアサッカー保護者向けメディア「サカイク」編集部は、「サッカーには、生きるために必要な“ライフスキル”を育む効果がある」と指摘する――。

※本稿は、サカイク『自分で考えて決められる賢い子供 究極の育て方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■10個の「ライフスキル」

WHO(世界保健機関)が各国の学校の教育課程への導入を提案している、ライフスキルという考え方をご存知でしょうか。ライフスキルは、「人生で起こるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」と定義されています。もともとは1980年代にアメリカのカレッジスポーツの現場で考案された概念で、以下の10項目のスキルで構成されています。

・意思決定スキル
・問題解決スキル
・創造的思考スキル
・批判的思考(クリティカルシンキング)スキル
・効果的コミュニケーションスキル
・対人関係スキル
・自己認識スキル
・共感性スキル
・情動への対処スキル
・ストレス・コントロールスキル

これら10項目を技術として身につけることで、これからますます複雑化していく人生をよりよく、そして力強く生き抜いていこうというのがライフスキルの趣旨です。

■物事の本質を見極める「生きるための術」

自ら意思決定を行い、問題解決に取り組み、創造的に考え多面的な思考力を持つ。他者とのコミュニケーション力に長け、自分の長所や短所をきちんと把握したうえで周囲の意見や感情を受け止めることができる。喜怒哀楽といった感情に適切に対処でき、ストレスや緊張にさらされたときにも、心身に過度な影響が出ないようにこれに対処できる……。

知能やIQ、学力や偏差値といった指標だけではなく、物事の本質を見極めて、予想しなかったことが起きたときにも自ら考えて問題に対処できることを目指したライフスキルは、まさに「生きるための術」と呼べるものでしょう。

■今の職業の大半は200年前にはなかった

現代は人類の全歴史においても、産業革命と並ぶ一大変革期だといわれています。AIやIoTなどがもたらす一大革命により、ドラスティックに世の中が変わっていくと予想されているのです。この人類がかつて経験したことのない大きな変革により、頭脳労働の仕事までが機械に代替されるといわれています。

では、子供たちが大人になる頃には、社会は失業者であふれているのでしょうか。18世紀からはじまった産業革命を振り返っても自明のことですが、必ずしもそうとはいえないでしょう。それまで人力や動物の力に頼っていたことが、機械の力で代替できるようになったその当時、社会で起きたのは新たな仕事の創出でした。現在、世の中に見られる職業の大半が200年前にはなかったことを思えば、それは間違いないことでしょう。

■子供にはガイドブックではなく武器を与えよう

これからの時代にどんな仕事が生まれるのか。現段階でその答えを見つけるのは難しいといわざるを得ません。そのため、「いい大学に行って、いい会社に入ろう」……といって子供を導く時代はもはや過去のものになりました。そもそも親世代の“いい大学”や“いい会社”は、子供たちが大人になる頃にはいい大学でもいい会社でもない可能性もあり得ます。とするならば、親が自身の常識に基づいて子供を導いたところで、それが将来にわたって最適解である可能性はほぼゼロであると見積もっていたほうが健全でしょう。

なにより、そう遠くない将来、親がいなくなったあとの子供たちは、自分の力で考え、行動し、生きていかなければなりません。人生の道標をいつまでも親が示し続けられるものではないのです。親の導きの通りに歩んだとしても、いずれ軌道修正が必要になれば、子供たちは自らの力で新たな道を見つけ出さなければなりません。

そんな子供たちに親が与えられるのは、人生のガイドブックではなく、どんな状況でも生き抜けるための“武器”ではないでしょうか。そして、その武器となり得るのがライフスキルなのです。

■サッカーに求められる能力は多岐にわたる

実はこのライフスキル、サッカーをプレーすることでも身につけることができます。当然、「なぜサッカーなのか。ほかの球技ではダメなのか?」と疑問に思う方も多いことでしょう。

サカイク『自分で考えて決められる賢い子供 究極の育て方』(KADOKAWA)

サッカーに求められる能力は多岐にわたります。サッカーは数ある球技の中でも、最もシンプルなルールでゲームが構成されています。一方で、対戦相手や味方のクセ、位置関係、心理面などを考慮した技術や戦術に加え、天候などコントロール不可能な情報も考慮しながら、瞬時に判断を下さなくてはいけないという、複雑さを併せ持っています。サッカーというスポーツは、「考える力」が何より求められるスポーツなのです。

そして、手よりもはるかに不器用な足でボールを扱うサッカーは、「ミスのスポーツ」ともいわれています。どれだけ準備しても、ミスが起こるのです。

現代社会はあらゆる場面で「評価する・評価される」という関係性が構築されています。ミスをしたこと自体を責められてしまうため、チャレンジを恐れる社会では、ミスをする経験自体が貴重です。ミスが前提のスポーツであるサッカーをプレーすることで、ミスを恐れずに「チャレンジ」する姿勢、そして、ミスから立て直し、修正する力が身につくのです。

■目標達成にコミュニケーションが不可欠

さらに、チームスポーツのサッカーは、広いコート上で自チームの選手とゴールを狙ったり守ったりするという目標に向けて協力し合い、目標を達成していくことが必要となります。それには「コミュニケーション」が不可欠です。

加えてサッカーのゲームにはルールがあり、チームには規範や規律が求められます。それを選手間や選手とコーチ間で醸成していく過程は、社会のルール形成と通じるところがあり、サッカーを通してコミュニケーションを図りながら、社会のルールを学べます。

■ゲームの局面でリーダーシップが育つ

また、ゲームの局面に応じてすべての選手が声をあげ、身体を張り、自らの意思でよりよい選択をするために、主体性を持ってほかの選手をリードしたりフォローしたりする必要もあります。これには「リーダーシップ」が求められます。

最後に重要なのは、サッカーができることへの「感謝の心」です。サッカーの試合は対戦チームや審判があってはじめて成立します。そういう環境をつくってくれる周囲の人たちへの感謝の気持ちを持つことは、自然と自チームの選手への思いやりにつながります。さまざまな環境に配慮できる姿勢がそうさせるのです。ともに称え合い、相手の長所を尊敬する気持ちが大事であり、それが感謝の気持ちへとつながります。

■不確実な時代を生き抜くための力

サッカーをプレーするということは、これらのスキルを磨くということでもあります。そして、これらのスキルこそ、ライフスキルにほかならないのです。

本田圭佑氏や長友佑都氏はサッカースキルだけではなく、人間的にも非常に優れています。どんな状況でも自分の歩むべき道を自ら見つけ、邁進するその姿勢こそ、まさに非常に高度なライフスキルを身につけていることの証拠でしょう。それは、お二人がサッカー選手であることと無縁とは思えません。

先の見えない「不確実な時代」を生き抜くために必要な力、すなわちライフスキルを、多くの子供たちがサッカーを通じて身につけてほしいと願っています。

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サカイク
「サッカーと教育」をテーマにしたジュニアサッカーの保護者向けメディア。2010年12月に創刊。「自分で考えるサッカーを子どもたちに。」をスローガンに、子供が心からサッカーを楽しみ主体的に成長できる環境づくりを目指し、子供を見守り、自立を育む親子の関わり方について情報を発信。2016年より日本サッカー協会の「JFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度」メディアパートナーとしても活動している。『サカイク』。

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(サカイク 写真=iStock.com)

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