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作成者が語る"2000万円報告書"真の狙い

プレジデントオンライン / 2019年7月3日 17時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/juststock)

いわゆる老後資金2000万円問題が注目されるきっかけとなった金融庁の報告書。ワーキング・グループの委員として作成にかかわった著者が、報告書の本当の意図を解説する――。

■意図しない注目を浴びた報告書

金融審議会市場ワーキング・グループが作成した「高齢社会における資産形成・管理」と題した報告書が、作成側の意図しないところで注目され話題となっています。私は当該グループの委員のひとりとして作成に携わったため、報告書の作成当事者としてその本旨を世の中に正しく伝えるに至らず誠に残念な想いです。

とはいえ、報告書自体は世間の脚光を浴びて、これを読んだ諸兄姉からは「実にまともな内容だ!」との評価も広がっていて、結果として長期資産形成の必要性への関心が高まってきているとも言えましょうか。

■作成者が語る報告書2つのポイント

この報告書には2つの主題があります。

ひとつは、高齢社会の進展で各人がいや応なくこれまでの想定より長生きしてしまうことを前提にした、日本の生活者全体に向けてのメッセージです。公助としての公的年金に加えて自助としての長期資産形成へと世代を問わず正しく行動することで資産寿命も延ばして、自らが納得できる豊かな人生作りを自律的に考えていきましょう! という至極まっとうな提言です。

もうひとつは、生活者が高齢社会を能動的に生き抜くために必要とされる金融サービスを、「顧客本位の業務運営」にのっとって実践していくことの重要性を日本の金融業界に対して課題提起しています。金融機関の社会的存在意義に立脚した観点から言及していて、金融業界全体に新たな事業モデルの真摯な構築を求める内容になっています。

■いかに資産寿命を伸ばすか

この2つのテーマこそが当該報告書の主旨ですので、「人生100年時代」を真剣に考えて行動しなければいけないプレジデントウーマン読者の皆さんには、ぜひともこの報告書を読んでいただきたいと思います(金融庁HPからPDFで誰でもダウンロード可能です)。

この報告書では資産寿命を延ばすことを求めています。若年資産形成層に対しても早くから長期資産形成へと行動を起こすことを求めており、「iDeCo」と「つみたてNISA」の有効活用を強く勧奨していて「長期・積立・分散」投資という投資行動の実践を重ねて促しています。つまりは両制度で有効に成果を挙げるための投資行動3原則まで含めて、具体的な将来の資産作りを可能とする手段として提言しているわけです。

■「iDeCo」と「つみたてNISA」でつくるじぶん年金

読者の皆さんはすでにこれら両制度はご存じだと思います。

「iDeCo(イデコ)」は正式名称を「個人型確定拠出年金」という私的年金です。60歳まで毎月一定金額を拠出して自らの選択で適格な金融商品(主に投資信託)により運用した場合、60歳以降に受け取る運用成果等に対して税制優遇が付与された制度です。

「つみたてNISA」は、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。同じく一定の金額を積立投資によって適格な投資信託やETFで運用した場合、運用益に対する非課税期間が最長で20年となる制度です。

どちらも分かりやすくいえば、今国会で論争になっている国民年金や厚生年金などの公的年金に加えて、各人の自由意思で将来資金を育んでいく「じぶん年金」だと理解してください。これまで老後の生活を支えるための公助として役割を果たしてきたのが公的年金です。自助としての「じぶん年金」をプラスすることによって、一人ひとりが自ら納得できる豊かな人生を、自分の行動によっても実現してほしいという意図が色濃く反映されたのが「iDeCo」と「つみたてNISA」です。両制度は報告書でも再三にわたって国民参加を勧めている大変重要な非課税制度なのです。

■将来のために行動する

預貯金に励んでいれば利息でお金が増え、公的年金と貯蓄で人生を全うすることが可能だったのは20世紀まで。21世紀に入って以降、銀行預金にしても利息はずっと実質ゼロで、お金は新たなお金を産んでくれなくなって久しく、その中でどうやって豊かな将来に備えれば良いのか。「iDeCo」と「つみたてNISA」は、豊かな将来に備えるための資産を生活者自らも育てていくならば、その補助をするという政府からの意思表示です。両制度をしっかり活用してまっとうな長期資産形成を行うことは将来の自分のためなのです。

「つみたてNISA」の制度化に辣腕(らつわん)を振るった森信親前金融庁長官は、両制度を通じて300兆円規模の預貯金をまっとうな長期投資マネーに換えていきたい、と仰っていました。机上の計算ですが、ゼロ金利の300兆円が世界経済の中で育つと仮定します。世界の経済成長率は少なくとも3%程度は継続すると期待した場合、300兆円から年間3%のリターンが生み出されたなら、9兆円の新たな富が創出されます。「つみたてNISA」は現行制度でも20年継続するので、20年間の累計リターンは180兆円です。そして本来政府はそこからざっと2割を税金徴収するのですが、それが非課税で国民に還元されるとすると、36兆円もの税収を締めるほどの重要な制度なのだと気付くはずです。

大事なことは、こうしたリターンはすべて、これら制度に参加した生活者にのみに還元されて、参加しなかった人には一切享受できないリターンだということです。これに気付いたプレジデントウーマン読者の皆さんは、しっかりと行動を起こしてくださいね!

(セゾン投信代表取締役社長 中野 晴啓 写真=iStock.com)

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