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バカほど「バタバタ」「要するに」と言う

プレジデントオンライン / 2019年7月5日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/lionvision)

具体性に欠け、まともな情報伝達にならないのに、しばしば使われる「ビジネス用語」がある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「そうした言葉を多用すると、相手に『この人、バカだ』と思われる可能性がある」と指摘する。中川氏が特にモヤモヤする12個のビジネス用語とは──。

■見聞きするたびにモヤモヤする「言葉」とは

仕事をしていると、会議やメールで「うわっ、イヤな言葉……」と思わずにはいられないフレーズに出くわすことがある。それらは大抵、「ちゃんと意味があるようなことを言っているようで、実は何も伝えていない」や「ノリでテキトーなことを言っているだけ」、「曖昧過ぎる」といった感覚を抱かせる言葉たちである。

以下、私がモヤモヤする言葉を挙げていく。これらの言葉は、具体性に欠けていたり、人によって解釈が異なったりするため、まともな情報伝達にならないものばかりだ。多用すると「この人、バカだ」と相手に思われる可能性があるので、使うにあたっては注意するほうがいい。

・バタバタしてる
・忙しいですか?
・パッツンパッツン
・まだ予定が見えない
・てっぺん
・朝イチ
・午後イチ
・展開します
・アジェンダ
・検討します
・要するに
・一瞬だけいいですか!

■「お前は鳥か!」とツッコミたい

それでは、上記の言葉に対する違和感をひとつずつ解説していこう。

【バタバタしてる】

「忙しい」の意味であることわかるのだが、この言葉を見聞きするたびに「お前は鳥か!」とツッコミたくなる。そして「いま、猛烈に忙しくて、まだ作業に取り掛かれません」「他にやらなければならないことがあるので、できません(行けません)」と素直に言えばいいのに……といつも思う。

「バタバタ」と言われてしまうと、昼食はデスクでおにぎりを一口で飲みこみつつ、キーボードをガシャガシャと打ち続け、Enterキーを「ターン!」と強くたたいたかと思ったら、返す刀で受話器を取って電話応対し、さらに空いたほうの手で書類に何かを書いている、といった光景を想像してしまう。

さらには、そうしてオフィスの仕事を猛スピードでさばいた後、乱暴にジャケットをはおって、両手をバタバタと鳥のように動かしながら走って移動。時計に何度も目をやりエレベーターをイライラと待つ、なんて殺伐とした(それでいて滑稽で、哀れな)姿を思い浮かべてしまうのだ。

「バタバタ」の解釈については「いろいろと煩雑な業務が控えており、精神的にこれ以上予定を増やせない」「今日はアポが5件あり、まったく余裕がない」「出張から帰ってきたばかりなので普段より忙しい」「死ぬほど業務が立て込んでいて、今日の仕事が終わるのは午前3時を過ぎる見込み」など、さまざまなケースが考えられる。

「バタバタしてるんです」というだけでは、その忙しさが具体的に見えてこないため、こちらも仕事を振っていいのか、飲みに誘っていいのか、まったくわからない。

■「はい、忙しいです」と返答され、相手は言葉に詰まる

【忙しいですか?】

エレベーターなどでバッタリと会った別部署の人や取引先の人に対して、何も言うことがない場合によく使われる言葉だ。「お元気ですか?」だったら中身のない会話としてはアリだろう。同じスポーツチームが好きな人であれば「わが軍、最近好調じゃないですか!」なんて話しかけるのも悪くない。だが「忙しいですか?」は、正直どう答えていいのかわからない人が多いのではなかろうか。

「いやぁ~貧乏暇なしってやつですわ、ガハハ!」みたいな答えが模範的なのだろうが、やることがあって忙しいから今こうしてエレベーターに乗っているわけだし、あいさつの言葉として、この「忙しいですか?」がここまで市民権を得ている理由がよくわからない。

私はこの質問をされたら「はい、忙しいです」とシンプルに答えるようにしている。すると相手は「(えっ、これ、どうやって返せばいいの……)あぁ、そうですか……」と以降の言葉に詰まったりすることが多い。恐らく「いやぁ~、○○さん(質問者)ほどじゃないですよ!」といった答えが期待されているのだろうが、実際、相手がどの程度忙しいのか、いまどんな業務に追われているのか、私は知らないケースが大半なのだ。そのうえで自虐や謙遜の言葉をいちいち考えるのも面倒なので、そのまま「忙しいです」で済ませている。中身のない世間話も人間関係に必要なのはわかるが、できれば他のテーマでお願いしたい。

■30分程度の時間、調整する気があれば空けられる

【パッツンパッツン】

前出の「バタバタ」と似た言葉だが、これもスケジュールが埋まりまくりで、時間的余裕がないことを意味している。ただ「バタバタ」よりはもう少し具体的な会話になることが多い。

たとえば、この言葉を多用する人に打ち合わせの相談をすると「イベント本番まではパッツンパッツンで一切時間は取れませんねぇ~。3週間後だったらおそらく大丈夫ですが、まだ予定が見えないところもあるので、改めて連絡してください」などと言われてしまう。

とはいえ、長期出張などで確実に不在な場合を除いて、たかだか30分程度の時間を空けることくらい、調整しようと思えば数週間も置かずにできるはずだ。「パッツンパッツン」とは、「当面、あなたのためにスケジュールを調整して、時間を取る気がありません」と言っているに等しい。「実際忙しいし、他のことに気を取られたくないのだから、仕方ないだろ!」という向きもあるだろうが、頻用されると相手はなえてしまう。

■「予定が見えない」はマウンティングの言葉

【まだ予定が見えない】

打診された日程で5個以上の予定を調整している状況なら、この言葉は理解できる。あるいは、長期出張が入るかどうかの決定を待っている状態であるとか、取引先など相手の都合次第で予定がひっくり返る可能性が高く、さらには何時間拘束されるかもわからないなんて場合であれば、文字どおり「予定が見えない」に違いない。

だが、平時にこの言葉を多用してしまうと、「パッツンパッツン」と同様、相手は「あなたとの約束は優先度が低い」と言われたように感じるだろう。

ビジネスの基本は恨みを買わないことであり、相手に「見下された」「軽んじられた」と思わせないことが重要だ。しかし「まだ予定が見えない」というフレーズからは、相手に対してマウンティングをするようなニュアンスが醸し出されてしまうことも少なくない。

予定なんてものは、グーグルカレンダーだろうが手帳だろうがなんでもいいが、お互いスケジュールを照らし合わせて空いている時間を見つけ、「じゃあ、ここにしましょう」と即座に決めてしまえばいいのである。後は「先約優先」というルールを順守するだけでいい。

■「朝イチ」「午後イチ」とは何時なのか

【てっぺん】

時計の長針、短針ともに真上(てっぺん)を指している状態ということで、要するに「午前0時」という意味なのだが、若い頃は私も「おぉ! てっぺんを超えてしまった!」などと言っていた。新卒で入った広告代理店に勤めていた当時、会議で「てっぺん」を超えると、皆が途端に興奮しだす感覚があった。「オレらは2日間にわたって仕事をしているんだぞ!」という高揚感からだろうか、たとえそれが無駄な会議であろうとも“人々が寝静まるなか、わが身をささげて世界を救う勇者”として活動をしているような気分になったものだ。まあ、明らかに誤解だったが。

【朝イチ】

「朝一番」の意味で、「朝イチで打ち合わせをしよう」や「朝イチまでに送ってください」などと使われる。たとえば、職場での打ち合わせであれば「始業時刻に集まり始めて、15分もすれば全員がそろうだろうから、そこから打ち合わせに入れるな」といった解釈ができるのだが、「朝イチまでに送ってください」は、あまりに漠然とし過ぎている。というのも、人により「朝イチ」の解釈は違うからだ。

受発注の関係性で用いられた場合、発注側は「わが社の始業時刻である午前9時ごろまでに提出物を送ってくれ」と暗に意図しているのだろうが、受注側は「朝イチというのは8時ぐらいから11時ぐらいまでのことかな」などと思っていたりする。なかには「オレにとっての朝イチは11時59分までだ!」なんてことを主張する者もいる。

よって、人により解釈が異なる言葉で時間を決めるのは「バカ」と言わざるを得ない。「10時までに送ってください」と、明確な時間を示すべきなのだ。恐らくは「朝イチ」という言葉を使うことによって「私はあなたに対して、厳しい要求をしているわけではないのですよ~」という配慮をにおわせているつもりなのだろうが、正直、締め切り時刻は具体的に設定してほしい。

【午後イチ】

昼休みを挟んで、午後の業務の開始時間──13時ごろを意味している場合が多いようだが、これも「朝イチ」と同様にあやふやな言葉だ。とはいえ、長めに見積もっても「13時59分」が限界だろう。解釈の幅は狭いのでまだ救いようがある。

■謎の広告業界用語──「展開します」

【展開します】

これについてはわからない方もいるだろうが、広告業界(もしかしたら某社だけかもしれない)でよく使われる言葉である。企画書などをメールの添付ファイルで送ったりすると、「展開しておきます!」と返事が来るのだ。

恐らくは「関係者全員に共有しておきます」「これをもとに作業を進めます」といった意味なのだろうが、「展開」だけではあまりに曖昧である。「展開」した後、果たして自分は何をすればいいのかもわからない。「展開した後、フィードバックを明後日までにはお伝えできると思うので、その後さらにブラッシュアップしてください」などと書いてあれば、以降の業務について算段がつくのだが、大抵は「展開します!」で終わりだ。

この言葉も“解釈がいろいろあり過ぎて、どう受け取るべきなのか、これから何をすればいいのかがわからない表現”の典型といえる。「社内の関係者で確認したあと、すぐにクライアントへ提出します。○日までには意見を集約する予定なので、その結果を踏まえて、いくつか修正をお願いすることになるかもしれません」などと具体的に書いてほしい。ちなみに先日、出版業界のメールでも「展開します」が用いられているのを初めて見つけた。ついにブーム到来か?

■会議に関連する“モヤモヤ”ワード

【アジェンダ】

「議題」や「検討課題」といった意味だが、見聞きするたび「日本語でいいじゃないか」と毎回思う。「アジェンダ」と言われると、途端に軽薄な感じがするのだ。「本日のぷろぐらむだよ~ん」と悪ふざけしながら言われたような感覚すら覚える。平易に言い換えるにしても「今日の会議で議論する課題と、そのうえで決めるべきこと」と端的に言ってほしい。そのほうが、気が引き締まる。

【検討します】

1980年代後半、アメリカに進出した日本企業とアメリカ企業の会議の映像を見たことがある。テーブルの両側に日米両サイドの従業員が座っているのだが、アメリカ人が何かを言うと日本人は互いに顔を見合わせて、こう返答する。

“We will discuss.”(検討します)

ほぼすべての質問に対してこの回答をしており、10分も過ぎたあたりからアメリカ人はあきれ顔になった。それでも日本側は延々「ウィー・ウィル・ディスカス」と言い続け、アメリカ人の困惑の表情はいつしか諦めの表情になっていった。

会議の本来の意味とは「決めること」だ。伝書鳩のごとく、相手に言われたことをただ聞いて、上の立場の人間に伝えることが目的ではない。その場で双方の主張を擦り合わせ、判断するために設けられるものなのである。もしも自身の立場が下っ端で「検討します」と言わざるを得ない場合は、その会議に参加する人選が間違っている。権限を持っている人間をその場に同席させなくてはいけないのだ。

■何も要約しない「要するに」。一瞬で終わらない「一瞬」

【要するに】

この言葉を使うのなら、後に続くのは非常に重要な結論や示唆、的確な要約、わかりやすい言い換えであるべきだろう。だが、往々にして「要していない」のだ。

「要するに」の後に、「今回は予算が足りないので実行できない、ということですね」などと簡潔に結論を示すならいいのだが、大抵の場合は「要するに、これって予算についてもう少し議論も必要だし、今日は結論が出せないから互いに持ち帰ってまた検討しましょうか、って話ですかねぇ」といった調子で、どうにも要領を得ない会話になる。

一応、結論じみたことは言っているものの、ここまで中途半端で長いフレーズが後に続くのなら、「要するに」は「えぇと」や「まぁ」程度の意味合いしか持たない。

なお、要していない「要するに」の類義語には「つまり」もある。さらに付け加えるなら、「逆に言うと」に続く発言は、まったく逆になっていないことが多い。

【一瞬だけいいですか!】

電話や立ち話の際に使われる言葉だが、これも「一瞬」の解釈が人によって異なるため、使い勝手が悪い。でも、つい使ってしまう。

使う人間としては、忙しそうな相手に配慮する気持ちから、「貴重な時間を奪ってしまい申し訳ない。でも、手短に済ませるから」というニュアンスで口にしているのだろう。ただ、「一瞬」が本来意味する時間は、せいぜい1秒~5秒程度のはずだ。そして「一瞬だけ」と前置きして始まった話が、本当に数秒で済んだことなど、私には皆無である。

さすがに「一瞬」は短すぎると思ったのか、人によっては「1分だけいいですか!」や「2分だけください!」などと言うこともある。が、やはり1分や2分で終わったためしはない。こうした言い回しよりも「ちょっと(少し)いいですか? あまり時間はかかりません」のように表現するほうが意図を正しく伝えられると思う。

■用いる「言葉」がもっとも雄弁に自分を表してくれる

以上、私が違和感をおぼえる言葉を思いつくままに列記してみた。

人は日々、洋服やヘアスタイル、持ち物、香水などを吟味して、セルフプロデュースに励んでいる。ただ、そんなものよりも「言葉」のほうがはるかに雄弁に自らをプロデュースしてくれる。言葉の使い方ひとつで自分を賢く見せることも、バカっぽく見せることも可能なのだ。実は最もラクで安上がりなセルフプロデュース方法なのに、とかくおざなりにされている。実にもったいない。

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【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・ビジネスの世界で常套句のようになっている言葉のなかには、曖昧なもの、ノリだけで安易に使われているもの、意味が取りづらいもの、人により解釈が異なるものも多い。そうした言葉を頻用すると、相手に「バカだ」と思われるリスクがある。
・さまざまなセルフプロデュース術が存在するが、最も低コストで簡単に実践できる方法は「どんな言葉を使うか」に気を付けることである。

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中川 淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。

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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎 写真=iStock.com)

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