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コンタクト業界に価格破壊が起きないワケ

プレジデントオンライン / 2019年7月31日 17時15分

PIXTA=写真

■なぜ価格破壊が起こらないのか

コンタクト業界の現状について、公認会計士・税理士の柴山氏は次のように話す。

「新規参入企業が多く、業界の勝敗がわかりやすいメガネ業界に対し、コンタクト業界はここ20年ほど、ほとんど動きがありません。業界内で競争がなければ、価格は据え置きされたままですから、コンタクト使用者にとっては価格も高止まり状態が続いているのが現状です」

しかしコンタクトレンズは1枚の原価が5円から高くても30円程度といわれている。商品自体は30枚入りで2000円から3000円以上するものもある。ということは、利益は相当なはずではないだろうか。それなのになぜ新規参入が少なく、価格破壊が起こらないのか。

「たしかに原価率だけを見るとメガネより格段に低く、化粧品並みだと予測できます。ただ原価を除いたすべてが利益になるわけでは当然なく、そこにパッケージ代や管理費、販売費、諸経費、税金などさまざまな経費が上乗せされてくるのですね。コンタクトは有名俳優などを起用したCMも多く打ち出しています。それらを差し引くと、消費者が思うよりは利益が莫大というわけではないはずです。

特にコンタクトレンズの場合はメガネと違い、角膜に直接装着する高度管理医療機器という扱いです。高品質のレンズを衛生的に生産する工場管理、新たな製品を開発する研究費、そういったコストはかなり大きいのではないでしょうか」

近視用、乱視用、老眼用、さらにドライアイ対策や空気透過性、着け心地の良さなど、細やかな技術改良が求められる分野は、ノウハウのない新規参入企業が気軽に参入できる分野とはいえない。医療系の会社とタッグを組み、商品開発を行うためのコストは無視できない壁となっている。

■消費者にとってお得なのは

ただし、ビジネスチャンスはまだまだあると柴山氏はいう。

「うちの娘を見ていても、若い子の瞳に対する要求は生半可じゃありません(笑)。私などは視力がよくないならメガネをかければいいと安直に考えがちですが、どうもそういうことではないらしい。

メガネはファッションとしていくつも持ちつつも、コンタクトはコンタクトで別物らしい。まつ毛のエクステやら化粧やらが映えるそうで、カラーコンタクトはもちろん、黒目が大きく見えるサークルレンズなど、いろいろとこだわっているようです。そういうのを見ていると、まだまだ発展の余地はありそうだと感じています」

消費者側からすれば、メガネとコンタクトのどちらが経済的かと問われれば、圧倒的にメガネのほうが“お得”である。コンタクトレンズ代を日々支払い続けるコストや、毎日装着する手間もかかる。だがもしここに、現在は表面に出てきていない潜在的な需要が隠れていたら……。メガネ業界のような価格破壊も起こりうるかもしれない。

消費者のコスト負担を軽減し、選択肢を広げるビジネスチャンスが潜んでいる可能性は、十分にありそうだ。

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柴山政行
1965年生まれ。埼玉大学経済学部卒業。税務、コンサルティングの業務に携わりながら、会計教育を行う。『半分売れ残るケーキ屋がなぜ儲かるのか』『サバイバル会計学』など著書多数。
 

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(フリーランスライター 三浦 愛美 撮影=横溝浩孝 写真=PIXTA)

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