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資料管理が超ラクになる"ほんのひと手間"

プレジデントオンライン / 2019年7月26日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Jae Young Ju)

クラウドに溜め込んだ資料を、楽に引き出すにはどうしたらいいか。「超整理法」シリーズなどで知られる野口悠紀雄氏は、「膨大な量のデータを使いこなすには、的確な検索が欠かせない。あらかじめ少しだけ準備することで、検索精度を上げることができる」と説く。そのやり方とは――。

※本稿は、野口悠紀雄『「超」AI整理法 無限にためて瞬時に引き出す』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■検索ワードも音声入力で済む

AIのパタン認識技術とデータのクラウド保存、そしてスマートフォンによるコンピュータの小型化、という3つの技術が使えるようになって初めて可能になった「超」メモ帳は、「AI時代のメモ帳」です。「無限」と言える量の情報を扱うことができるため、これまでのメモ帳とは比べ物にならないほど強力なものとなります。

無限と言える量の情報を扱うためには、「検索」が鍵を握ります。スピーディで的確な検索ができなければ、「超」メモ帳は、ポテンシャルをまったく発揮できないのです。

「超」メモ帳で目的のファイルを見いだす基本的な方法は、キーワード検索です。キーワードとしては、まず、ファイル名と本文中の言葉があります。この他に、本文中に検索用のキーワードを書き込んでおけば、検索の効率を向上させることができます。グーグルドキュメントの場合、このキーワードは音声で入力できるので、簡単に書き込めます。

ファイル名と同じキーワードを書いても検索の効率が上がるわけではないので、別のものを選びます。また、本文中に入っている言葉は、もともと検索の対象となっているので、キーワードとして新たに設定する必要はありません。

■「属性キーワード」を設定する

検索用のキーワードとして新たに設定すべきものは、本文には入っていないが、その文書の性格を示す、ある程度一般的な言葉です。これを「属性キーワード」と呼ぶことにします。

私の場合には、日付とそのファイルの使い途を示す言葉です。例えば、「2019年4月1日 原稿メモ」というようなものです。なお、音声入力アプリは日付を誤変換することなく常に正確に認識してくれます。そこで、日付だけでなく、長めにして年月も入力するのがよいでしょう。

このほかに、つぎのような属性キーワードを使っています。原稿資料、原稿データ。本を書いている場合には、仮のタイトル。あるいは出版社名です。

利用を拡大した場合には、それぞれのカテゴリー名を属性キーワードとします。つまり、「新聞見出し」「TODOメモ」「携帯品メモ」「日記」「リンク集」などを属性キーワードとします(ただし、こうした言葉は本文中にもあるので、キーワードとしてうまく機能しない可能性があります)。

会社で仕事をしている方なら、定例会議資料、企画書資料といった属性キーワードが使えるでしょう。プロジェクト名も有効です。あるいは、連絡先の部局名や企業名であってもよいでしょう。

■何でも残し、後から引き出すためのフックをつける

キーワードを書く場所は、文書中のどこであってもかまいません。トップに書けば見やすいでしょうが、邪魔になるようなら、文書の最後でもかまいません。最初に文書を作るときに属性キーワードも一緒に書き込んでおきますが、後で閲覧したときに追加することもできます。

野口悠紀雄『「超」AI整理法 無限にためて瞬時に引き出す』(KADOKAWA)

検索をする場合は、本文中にあると考えられるキーワードと「属性キーワード」を組み合わせます。例えば、「フィンテック 2019年4月1日 原稿メモ」をキーワードとします。

属性キーワードはいくらでも設定できます。1つのファイルに複数あってもかまいません。そのほうが目的のファイルを探し出しやすくなる場合が多いでしょう。

ただし、属性キーワードをあまりたくさん作ると、そうしたキーワードを作ったことを忘れてしまうので、実際には役立たないことになります。これを避けるためには、属性キーワード一覧のファイルを作っておくとよいでしょう。

「超」メモ帳では、書いたこと自体を忘れてしまった原稿の下書きや、メモなども引き出すことができます。こうしたことができるのは、驚きであり、快感です。

不要になったものを捨てようとするのではなく、あるいは後で必要となりそうなものだけをメモするのではなく、とにかくなんでも残す。ただし、後から引き出せるようなフックをたくさんつけておく。これが、「超」メモ帳の基本思想です。

■重要でないファイルにキーワードはつけない

「超」メモ帳を使いこなす最も重要なポイントは、キーワードの設定です。これをうまく設定しないと、使いたいファイルを引き出せなかったり、重要なファイルを見失ったり、という混乱状態に陥ります。

厄介なのは、あまり重要でないファイルにやたらとキーワードを書き込んでおくと、検索するときの雑音になってしまうことです。例えば、原稿執筆用には役立たないファイルに「原稿メモ」という属性キーワードを書き込んでおくと、「原稿メモ」で検索したときに、このファイルも引き出されます。ところが、これは雑音でしかありません。したがって、重要でないと判断したファイルには、属性キーワードは書き込まないことにします。

重要なファイルにはたくさんのキーワードをつけて、どれかで引っかかるようにします。それに対して、重要でないファイルにはキーワードをつけません。そうすれば、捨てたのと同じようなことになるのです。

■紙の書類を整理する際の分類法は「カスケード方式」

私は、情報量が爆発的に増えているデジタル時代の整理においては、「分類」をしてはいけないと考えています。「超」メモ帳のキーワード検索では分類を行っていますが、これは矛盾するわけではありません。なぜなら、分類には2つの異なる方法があるからです。

分類方法の第1は、上位概念から下位概念に向けてつぎつぎに分類していく方式です。生物の分類は、この方式で行われます。まず生物を動物と植物に分け、次に動物は脊椎動物と無脊椎動物に分け、前者は哺乳類、鳥類、爬虫類などに分けるという方式です。紙の書類や図書館の書籍などの整理も、普通はこの方法によって行われています。この方式を、「カスケード方式」または「フォルダ方式」と呼ぶことにしましょう。

紙のメモ帳の場合にも、この方式に従って分類している人が多いでしょう。例えば、まず仕事用とプライベート用を区別し、つぎに仕事用であれば業務内容別等に分類するということです。

■とにかく時間順に並べることを徹底する

広く使われているカスケード方式ですが、問題もあります。

まず、分類項目を適切に設定しないと、ある対象が複数のフォルダに属するという事態が生じます。例えば、「IT企業に対する課税」についての原稿は、「税」フォルダにも入りうるし、「IT」フォルダにも入りえます。これを「IT」のフォルダに入れることにすると、「税」のフォルダをいくら探しても見つかりません。

また、仕事の内容が変わってくると、古い分類項目では適切に機能しなくなります。例えば、従来は「日本経済」に分類していた人口高齢化に関する原稿が増えてきた場合、新しく「人口高齢化」という分類項目を立てるほうが便利です。しかし、すでに「日本経済」のフォルダに入ってしまっているものを移すのは、面倒です。

そこで、内容による分類項目を一切廃止し、時間順にファイルを並べて、「MTF(Move‐to‐front:使用したデータをリストの先頭に送る)とLRU(Least recently used:最後に使われてから時間の経ったデータから捨てる)の原理」によって文書を整理するというのが、「超」整理法の考え方なのです。紙のメモ帳の場合にはMTFを実行できないので、時間順にメモを書いていくしか方法がないでしょう。

■「超」メモ帳で用いる分類法は「キーワード方式」

分類方法の第2は、文書にキーワード(ないしはタグ)をつけ、それを用いて検索するという方法です。これを「キーワード方式」あるいは「タグ方式」と呼ぶことができます。「超」メモ帳では、この方式をとっています。

一般に、デジタルな文書や資料は、この方式によって分類することができます。この場合には、1つの対象に複数のタグをつけることができ、しかもそれらの間に上下関係(あるいは前後関係)がありません。したがって、1つの文書が複数の属性を持っていたり、仕事の内容や問題意識が変わることに対して柔軟に対応できるのです。

例えば、「IT企業への課税」の原稿は、「税」と「IT」のどちらのキーワードで検索してもヒットします。ヒット件数が多い場合には、“and検索”すれば対象が絞られます。また、高齢化社会の原稿が多くなれば、これまで書いた原稿は「高齢化社会」というキーワードを付け加えることで対処できます。

■とにかく「クラウド」を活用しよう

紙の書類の時代には、カスケード方式をとらざるをえませんでした。『「超」整理法』を書いた1993年には、デジタル情報は使われていましたし、PCにあるファイルの検索も可能であったのですが、and検索ができないなど検索機能が十分でなかったために、カスケード方式をとらざるをえなかったのです。

ところがその後、データをクラウドに上げて高度な検索を利用することが可能になったため、キーワード方式による分類が可能になりました。

デジタル情報であっても、PCやスマートフォンなどの端末に置いてある情報をキーワード方式で管理するのは困難です。キーワード方式を利用するためには、データをGメールやグーグルドキュメントなどのクラウドに上げる必要があります。これらは、誰でも利用できるクラウドストーレッジです。

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野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。近著に『入門 AIと金融の未来』『入門 ビットコインとブロックチェーン』(PHPビジネス新書)など。
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(一橋大学名誉教授 野口 悠紀雄 写真=iStock.com)

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