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国民は安倍晋三首相を信任などしていない

プレジデントオンライン / 2019年7月25日 15時15分

参議院選挙から一夜明け、記者会見する自民党総裁の安倍晋三首相=2019年7月22日、東京・永田町の同党本部(写真=時事通信フォト)

■「国民からの力強い信任が得られた」と豪語

参院選は投開票翌日の7月22日、全ての当選者が確定した。自民、公明の与党は改選定数124の過半数を上回る71議席を得た。これで非改選を含めた与党の議席は141となり、定数245の過半数も超えた。

今回の選挙は、年金問題や消費増税の是非、憲法改正に向けた議論の有無などを争点に、これまでの安倍政権の在り方や成果を問うものだった。

参院選の結果を受け、安倍晋三首相は7月22日の記者会見で「国民からの力強い信任が得られた」と豪語したが、果たしてそうだろうか。

■6年前の圧勝65議席には全く届かない

安倍首相が総裁として率いる自民党は、今回改選で57議席を確保し、2016年参院選の56議席を1議席上回ったものの、圧勝した2013年の65議席には及ばなかった。しかも宮城、滋賀、大分など8つの選挙区では現職が落選している。

選挙結果から分かるのは、決して有権者は安倍政権を信任などしていない、ということである。国民は安倍首相に対し、「大丈夫なのか」と疑問符を付けたのである。そこを安倍首相は理解すべきである。

選挙の結果を謙虚に受け止め、まずは「安倍1強」から生まれる驕りや傲慢さを反省しない限り、国民の支持は得られないだろう。

■長期政権ゆえの慢心や驕りに厳しい視線

ここで7月23日付の読売新聞の社説を見てみよう。

「与党は、改選定数の半数を超え、一定の信任を得た形だ。だが、個別の選挙区を見ると、自民党は必ずしも盤石とは言えない」

安倍政権を擁護してきた読売社説らしく、表現は「必ずしも盤石とは言えない」と抑え気味ではあるが、国民の強い信任を獲得したわけではないことを指摘している。沙鴎一歩の指摘と同じとみていいだろう。

読売社説は「慢心」と「驕り」の問題にも言及し、安倍政権に忠告する。

「32ある1人区のうち、岩手、秋田、新潟などで競り負けた。防衛省の不手際や副大臣の失言などが響いたとみられる。長期政権ゆえの慢心や驕りに有権者は厳しい視線を注いでいる」

見出しも「安倍内閣再始動 慢心を排し政策課題に臨め」である。

■アベノミクスは富める者だけを富ませた

「安倍首相は記者会見し『令和の国づくりを進めていく』と強調した。自民党総裁の任期は残り2年余りだ。惰性に陥ることなく、政策で成果を出す必要がある」

「日本丸」の舵をとって大波を乗り越えていくのが、首相の役目である。政策で成果を上げるのは当然だ。安倍首相の強調する「令和の国づくり」とは、具体的に何を指すのか。聞こえのよい言葉だけが先走るようでは情けない。

読売社説は内政の舵とりをこう主張する。

「大切なのは、公約で掲げた『強い経済』を実感できる形にすることだ。景気は回復しているが、家計が潤い、消費が伸びる経済の好循環は生まれていない」

街中の大衆酒場は客の少なさに悲鳴を上げている。沙鴎一歩には強い経済などほど遠いと感じられる。アベノミクスは富める者だけを富ませた。いつになったら、富まざる人々が裕福になるのだろうか。その兆しはみえない。

■憲法を改正すると、日本の国はどれだけ良くなるのか

さらに読売社説は「消費税率の引き上げで、社会保障の安定財源を確保し、将来不安を払拭することも肝要である」と指摘する。だが、消費税を引き上げれば、生活苦にあえぐ人々をさらに苦しめることになる。軽減税率など一時しのぎに過ぎない。読売社説は私たち国民に背を向け、安倍政権を後押ししようとしている。

読売社説は後半で「参院選で、与党と、日本維新の会などの改憲勢力は、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を維持できなかった」と憲法改正の議論について書く。

「首相は憲法に関し、『議論は行うべきだというのが国民の審判だ』と語り、野党に建設的な議論を呼びかけた。改正のスケジュールにはこだわらない考えを示した。与野党は衆参両院の憲法審査会を早期に再開すべきである」

読売社説は憲法改正の議論が進まないことに異を唱え、苛立つ。

安倍首相は参院選の結果を「国民からの力強い信任を得た」と強調し、秋の臨時国会で憲法改正論議を求めていく考えを示している。しかし、憲法9条への自衛隊の明記など、自民党の改憲案のように憲法を改正すると、日本の国はどれだけ良くなるのだろうか。

■朝日は「与野党ともに敗北を喫した」と指摘する

7月24日付の朝日新聞の社説は「与野党ともに敗北を喫した。そう言われても仕方あるまい」と投票率の低さを指摘する。

「48.80%。今回の参院選の投票率は5割を切り、1995年の44.52%に次ぐ、戦後2番目の低さとなった」
「候補者すべての得票の合計を棄権が上回ったことになる。議会が民意を正当に反映しているか疑われかねない」

「戦後2番目の低さ」「得票の合計を棄権が上回る」というのは、国民が政治に期待していない表れなのか。それとも安倍政権を見限っているのだろうか。

安倍政権嫌いの朝日社説は「自民党は選挙区の改選数74のうち5割にあたる38議席を獲得した。しかし、棄権した人を含む有権者全体に対する絶対得票率は2割を切っている」と指摘し、こう主張する。

「安倍首相は『国民の皆さまからの力強い信任をいただいた』と胸を張るが、与党、野党の別なく、代議制民主主義の基盤を掘り崩す深刻な事態と受け止めるべきだ」

いまの国会は民意を反映しているとはいえない。民主主義の在り方が問われている。

■低投票率には「民主党の失敗」が尾を引いている

朝日社説はさらにこう書いている。

「投票しても政治は変わらない。投票したい候補者や政党がない。そもそも、政治に関心がない……。棄権の理由はさまざまだろう。なかには、現状維持でいいので、わざわざ投票に行くまでもないと判断した人もいるかもしれない」
「まず問われるべきは、有権者を引きつけることができなかった政党、政治家の責任だ」

「政党と政治家の責任を問うべし」という主張には賛成である。そもそも自民・公明という与党に、野党が太刀打ちできないところに大きな問題がある。それが分かっているから投票に行かない有権者が多いのだろう。

もっと言えば、自民勢力を抑えて政権を握ったあの民主党の失敗が尾を引いていると思う。民主党政権が誕生したとき、沙鴎一歩はアメリカのような2大政党が政策を競い合うことを期待した。だが、その期待はあえなく崩れ去ってしまった。

■与党に反対するだけでは、国民の支持は得られない

「『安倍1強』のもと、多様な民意に向き合おうとしない強引な政権運営が続いていることと無縁ではないだろう」

「強引な政権運営」という書き方は、安倍首相を嫌う朝日社説らしい。ただし、安倍政権を擁護してきた読売社説も「長期政権ゆえの慢心や驕りに有権者は厳しい視線を注いでいる」と戒めている。そのことを安倍首相はしっかりと心に留めるべきである。

「今回の参院選にあたっても、国会の論戦を回避し、『老後2千万円報告書』など不都合な現実にはふたをした。『安定か、混乱か』と、6年以上前の民主党政権をあげつらい、重要な政策課題について国民に問いかける姿勢は乏しかった」

選挙戦で重要な政策課題について訴えなかったから投票率が低くなった、というのが朝日社説の論理だろう。それもある。ただ、最大の問題は野党の力不足だろう。全国32の1人区すべてに統一候補を立てたが、明確な争点をアピールできなかった。朝日社説は「より多くの有権者を糾合するうねりは起こせなかった」と指摘している。

沙鴎一歩は実力のある2つの大きな政党が交互に政権を握って国を動かす。そんな2大政党による国家運営を望んでいる。そのためには、いまの野党では力不足だ。

遅くとも2021年秋までには必ず衆院選がある。与党に反対するだけでは、国民の支持は得られない。いまの野党は安倍政権を攻撃するだけでなく、次の選挙に備えて魅力的な政策を準備するべきだろう。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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