偏差値29から東大へ「頭のよさとは要領のよさ」
プレジデントオンライン / 2019年9月1日 11時15分
■「片付けない」「まとめない」大雑把学習術
「もともと地頭がよかったんでしょう」とよくいわれますが、そんなことはありません。進学校でもない地方女子校で、順位は常に180人中160位あたりをウロウロ。高3のセンター試験では、好きな科目のはずの日本史で、驚異の21点をたたき出しました(笑)。
そんな私が1年間の宅浪で東大理科II類に合格して、周囲からの評価は一変、「地頭のいい子」と称賛されました。でも、世の中に「地頭のいい人間」なんて存在しないんです。入学した東大で周囲を見渡しても、学生たちは普通の人ばかりでした。
ただ唯一違っていたのは、みんなが効率的な勉強法を確立していたということです。
いくら努力しても結果が出ないと嘆く人と、短期間で成果を出せる人、その違いは「時間対効果」に見合った努力をしているかどうかです。努力は「質×時間」で決まります。たとえ100時間勉強しても、やり方が悪ければ結果はついてきません。例えば、「予習に力を注ぎ、完璧な美しいノートをとり、真夜中まで必死に勉強する」。こんな勉強法は、かける時間と労力に対してリターンがあまりに少なすぎます。
■「頭のよさ」とは、「要領のよさ」
私は高校で芸術コースを選択していました。そのおかげで、いざ受験となったとき、必要教科のうち6教科も未習状態。マイナスから一気に巻き返しを図るには、徹底的に「時間対効果」の比率を上げるしかありませんでした。つまり「いかに効率よく、楽して結果を得るか」。「頭のよさ」とは、「要領のよさ」ともいえるのかもしれません。
まず気をつけたいのは、自分の基礎力に不安を感じても、基礎レベルからスタートしないことです。良質な参考書は基礎編をも網羅しているもの。最初からハイレベルなテキストからスタートしたほうが重複を避けられ、効率的に学べます。
そして、使う参考書を決めたら、最初から最後まで一通り目を通してください。真面目な完璧主義者ほど冒頭から丁寧に暗記していこうとしますが、それだと「木を見て森を見ず」状態になってしまいます。枝葉末節はさておき、学習の全体像を漠然とでも把握することがその先の習熟度を決めます。
未完のものに人は強く興味を惹かれる「ザイガニック効果」という心理学上の概念があります。テレビ番組で「続きはCMのあとで」と放送していると、不思議と続きが見たくなりませんか?
脳は空白を嫌いますから、完全に理解していない部分でも、気づくとそのことを考えてしまうんです。興味が湧けば、勉強していない際にも理解力は増し、記憶しやすくなります。
■「きれいにノートをとる東大生なんていない」
私は、従来式のノートや単語帳の類は一切つくりませんでした。美しいノートづくりは結局のところ単なる「作業」であって、たった一回書き写しただけでは何も覚えられません。にもかかわらず「勉強した」と達成感を得てしまう落とし穴ですらあります。私の周囲で、きれいにノートをとっている東大生なんていませんでした。まとまった情報が見たいなら、参考書に線を引いて読めばいいんです。時間をかけて、自分でまとめる必要はありません。
かわりに推奨するのは、「○△×復習法」と「書きなぐり記憶法」です。まず問題集で、「復習する必要のないほどわかりきった」設問や単語には○を、「大体あっているが復習が必要」なものには△を、「答えがまったくわからない」ものには×をつけます。
次いで×の問題の解答をチラシの裏やノートなどに書きなぐります。同時に発声して読んでください。こうすることで視覚、聴覚、触覚など五感に訴え脳にたたき込めます。やがて手が覚えている状態になり、ペンを握ったら手が動くようになれば成功です。
もし前述2つを経てなお覚えられない単語があれば、最強の「チラポイ記憶法」をおすすめします。これは東大からハーバード大学大学院の特待生に進学した秀才の友人から教わった秘伝中の秘伝。どんな苦手な単語も半永久的に覚えることができます。
■最強の「チラポイ記憶法」の実践方法とは
まずカードを用意し、表側には覚えられない単語や用語を、裏側にはその意味を書いていきます。カードをシャッフルしたら上から順に「チラ」と見て、条件反射的に解答できたカードはAの場所に、少し考えてわかったものはBの場所に、考えてもわからなかったカードはCの場所に置きます。全部終えたら、今度はCのカードだけ取り、同じことを繰り返す。すべてがAに収まったらその日のその作業は終了です。
たったこれだけですが、肝心なのは3日後に改めて同じことを繰り返すことです。
「人間は、覚えたことを1日後には74%忘れる」とは、ドイツの心理学者エビングハウスが証明した事実です。人が記憶した事柄はいったん海馬と呼ばれる短期記憶に一時保管されますが、1~2週間使われなければそのデータは廃棄忘却されます。それを長期保存するためには、大脳新皮質の側頭葉に移さなくてはなりません。それには「反復」しかないんです。
■机に座った瞬間、戦闘モードになるには
最後に「勉強する時間がない」「どうしてもやる気が起きない」という方に私の秘策をご紹介します。それは、整理整頓をしないこと。
机に向かったものの、参考書を手に取って広げるのが億劫で、やる気が出るのに時間がかかることがよくあります。そうならないため、勉強が終わっても参考書のページを広げっぱなしにしておく。パソコンであれば、必要なファイルを開いたまま、電源を落とさずにスリープ状態にしておく。すると、机に座った瞬間、「よし、やらなきゃ」という戦闘モードに入りやすくなります。
AI時代に必要なのは、暗記力より発想力や創造性豊かな人材だといわれていますが、どんな時代も勉強の9割は記憶力が左右すると私は思っています。単語を知らなければ外国語で会話はできませんし、歴史を知らなければ世の中を語ることもできません。知識が未熟な状態では創造すること自体、不可能なのです。
ぜひ「時間対効果」を意識しながら、自分なりの勉強法を見つけていってください。
1. 参考書は最初に一通り目を通す
2. ノートをきれいにまとめない
3. すぐに勉強を始めるため、あえて片付けない
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作家・心理カウンセラー
1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。近著に『偏差値29から東大理II合格 東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』。
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(作家・心理カウンセラー 杉山 奈津子 構成=三浦愛美 撮影=金子山)
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