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大繁盛「退職代行業」野放しのツケは誰が払う

プレジデントオンライン / 2019年8月25日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pcess609

■代理人かメッセンジャーか

会社を辞めたいが、上司とは話したくない。そうしたニーズを受け、退職代行サービスの人気が高まっている。簡単に辞めさせてくれないブラック企業に勤める人には心強い。もっとも、利用にはリスクがあるようだ。住川佳祐弁護士は次のように指摘する。

「現在の退職代行業者は限りなく黒に近いグレー。非弁行為に当たる可能性が高く、かえって勤務先とトラブルになるおそれがあります」

非弁行為とは、弁護士にしか許されていない業務を、弁護士資格を持っていない人や法人が報酬を得る目的で業として行うこと。非弁行為を行うと弁護士法72条違反だ。ただし、憲法上の団体交渉権を持つ労働組合は例外だという。

「権利や義務を動かす法律行為の代行は、非弁行為に当たります。退職代行業者のサービス内容が雇用契約を解約する意思表示であれば、法律行為なので違法です。合法の可能性があるとしたら、メッセンジャーとして本人の意思を伝えるだけというケース。ただ、一般的に退職には有休の申請や離職票発行の要求など、関連する法的な交渉が伴います。それらについて代行やアドバイスするのも違法。業者が本当にメッセンジャー役だけに徹しているのか疑問です」

世の中にはサッカー選手の代理人のように、弁護士でなくても代理で交渉や契約を行う職業もある。違いはどこか。

「弁護士法72条の解釈については説が分かれていますが、事件性がなければ非弁行為にならないという説があり、サッカー代理人はこの説を前提としているように思われます。一方、退職は未払い賃金の請求や労災の申請など、紛争性が高い領域。事件性がなければ非弁行為にならないという緩めの説の立場を取ったとしても、退職代行は非弁行為である可能性が高い」

■非弁行為と同様、誇大広告が問題!?

弁護士法違反で罪に問われるのは業者だけだが、利用者にもリスクはある。業者から退職の申し入れがあっても、会社は申し入れが本当に本人の意思かどうか確認できず、手続きを進められない。そのまま会社に来なくなれば、無断欠勤で懲戒処分になるおそれもある。もちろん不当解雇だと争うことは可能だが、そうなると弁護士の出番。そもそも何のために退職代行業者を使ったのかわからなくなる。

ならば、最初から弁護士に依頼するのがベターだが、「退職に伴う諸問題の解決に手間がかかり、業者との価格競争になると割に合わない」(住川弁護士)と、弁護士側もこの領域に積極的でない。

「すでに退職代行市場ができあがっている今、実際に摘発される可能性は少ないでしょう。ただ、懲戒解雇リスクも含めて説明が不十分で、『即日退職可』と誇大広告を打つ業者も目立つ。現状では非弁の件と同様、不適切な広告も大きな問題。今後はガイドラインをつくるなどして業界を管理する方向にいくのではないでしょうか」

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村上 敬(むらかみ・けい)
ジャーナリスト
ビジネス誌を中心に、経営論、自己啓発、法律問題など、幅広い分野で取材・執筆活動を展開。スタートアップから日本を代表する大企業まで、経営者インタビューは年間50本を超える。

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(ジャーナリスト 村上 敬 コメンテーター=QUEST法律事務所 住川佳祐 図版作成=大橋昭一)

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