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前年比35億円増!母の日市場が伸び続ける理由

プレジデントオンライン / 2019年8月24日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/CatLane)

2019年の母の日市場は、前年に比べて推計約35億円も増加したと言われています。イマドキの親子関係は、母の日・父の日ギフトの売り上げにも影響を与えているのでしょうか。若者が親に贈るギフトの値段や親とのコミュニケーション手段、そして親子2人用の商品アイデアまで、原田曜平さんが6人の若者に聞きました。
座談会メンバー
塩田 亜多夢くん/慶応義塾大学3年生。実家暮らし。父は日本人、母は米国人でともに50代。よく母親の服選びに付き合う。男性
山本 果林さん(仮名)/専修大学4年生。一人暮らし。父は50代、母は40代で幼い頃に離婚。元カレの母親と仲よし。女性
岩下 虎太郎くん/東京通信大学1年生。実家暮らし。両親ともに40代。親との外出や旅行には抵抗感ゼロ。男性
井上 雄仁くん/法政大学3年生。一人暮らし。両親ともに50代。昨年も今年も母親と2人で海外旅行へ。男性
橋場 芽衣さん/早稲田大学2年生。大学の寮で一人暮らし。両親ともに40代。家庭では母親が一番強い。女性
堀井 優香さん/関東第一高校1年生。実家暮らし。両親ともに40代。母親とは何でも話す「友だち母娘」。女性

■母の日はプレゼント+手書きのカード

【原田】親子の距離が近くなっているためか、最近は母の日市場が大きく伸びているんだ。若者が、友だちにプレゼントをあげる感覚で親に贈り物をするようになったのかもしれない。皆は母の日や父の日に何を贈ったの? できれば、いくらぐらいだったかも教えてくれるかな。

【塩田くん】値段は覚えていないんですけど、母の日は花とローラアシュレイのギフトセット、それと手紙を贈りました。日頃の感謝と「おかげでこんなに成長しました」的なことを書いたと思います。父の日は、父親と一緒に居酒屋に行きました。

【原田】河島英五の歌に「野風増」というものがあって、「お前が20歳(はたち)になったら酒場で酒を飲みたいものだ」という歌詞なんだけど、あれはあくまでオヤジの願望であったはずなんだけど、今はこんな気持ちを歌詞にしなくても、子供の方が喜んでついてきてくれるようになっているんだね。

【井上くん】僕は、母親には4000円ぐらいのハーバリウム(ガラス瓶にオイルとドライフラワーなどを入れたもの)、父親には1万円ぐらいのテニスウェア。両親とも母の日・父の日と誕生日が近いので、毎年、誕生日プレゼントも兼ねて贈っています。誕生日に実家に着くように発送して、当日の24時を越えた瞬間にLINEでお祝いメッセージを送りました。

【原田】24時を超えた瞬間にLINEって……相当思い入れがあるんだね。また、男子でも親に手紙やLINEを出すんだ。バイト代からそれだけ出すってことは、両親へのプレゼントの優先度が高いんだなと思ったよ。

■新ワード「カレ親誕プレ」

【山本さん】私は自分の両親にあげたことはないんですが、元カレのお母さんには紅茶セットを贈りました。元カレとお金を出し合って買ったんです。

【原田】前回、「カレ親デート」や「元カレ親デート」って単語が出てきたけど、「カレ親誕プレ(誕生日プレゼント)」や「元カレ親誕プレ」なんてワードも今の時代は成立しそうだね。

【橋場さん】母の日・父の日や両親の誕生日に、何かプレゼントをしたことはないと思います。「お給料をもらえるようになったらでいいよ」って言われているので、それに甘えて(笑)。でも、私は毎年両親から誕生日プレゼントをもらっています。

「家族だけではなく、恋人同士でも手紙がブームになっている」と塩田くん

【原田】そっちの方が昔の感覚で言うと普通な気がしますけどね。

【堀井さん】母の日は花とスイーツで4000円ぐらい。父の日は、値段は覚えていないんですが扇子をプレゼントしました。両方とも手書きのメッセージカードと一緒に渡しました。

【原田】4000円って、高校生の堀井さんにとっては結構な値段だね。それにしても手紙は驚きだなあ。僕は親にメッセージを書くなんて恥ずかしくてできないよ(笑)。今の若者は全部スマホで完結して、手紙なんて書かないんだと思っていたよ。

【塩田くん】手紙は最近、ちょっとしたブームなんじゃないかな。僕の周りの子は、親にだけじゃなくて彼氏や彼女にもよく書いていますよ。

【原田】なるほど。今は世代を問わず手書き離れが進んでいると言われているけど、あらためて手書きやアナログのよさが見直されているのかもしれないね。

■LINEはするが、インスタは見られたくない

【原田】手紙の話が出たところで、LINEやSNSはどうなのかな。親とのコミュニケーションに使っているとか、家族のLINEグループがあるっていう人はいる?

【井上くん】うちは家族のLINEグループがあって、やりとりも結構活発ですよ。「昨日こういうことがあった」とか些細な話題が多いけど、それを見てると僕も近況報告しなきゃなっていう気持ちになります。

【原田】中年の僕は、父親や母親から些細な近況報告メールがくると未だに面倒な気持ちになってしまうけど、君たちは「僕も書かないと!」って思うんだね。凄く大人だなあ、と思いますね。

【橋場さん】家族のLINEグループはないですね。母親や父親に個人的にLINEすることはあるけど、家族全員で共有するような連絡はないので必要がないと思っています。でも友だちには珍しいって言われます。最近、親に送ったのは旅行先からです。親に許可をとって旅行に行ったので、タイについたことを報告しました。そしたら「おみやげは?」と返信がきたので、「ないよ」というやり取りをしました(笑)。

【原田】LINEグループがないのはやっぱり珍しいんだね。僕の時代の大学生なんか、勝手に海外にバックパッカーで行って、せいぜい絵葉書くらい出すってパターンだったんじゃないかな。いや、絵葉書も出さない人が多かったかな。

■LINEでタピオカ報告

【堀井さん】私も、父親と母親とでは別々のLINEを使っています。母親にはついさっき「今タピオカ飲んでる」って送りました。父親は仕事先からメッセージを送ってくることが多いですね。「おはよう」とか「ご飯食べた?」とか。大体適当にスタンプで返してる(笑)。

母親に“タピオカ飲んでる報告”をする堀井さん(左)と家族のLINEグループはないと話す橋場さん(右)

【原田】タピオカ報告(笑)。君ら女子高生はタピオカ飲みまくっているから、タピオカ報告も頻繁なんだろね(笑)。タピオカ報告を頻繁にされているママと、適当にスタンプで返されるパパの格差は男として寂しいけど、でも、思春期の女子高生がスタンプ返すだけ偉いよね。僕と同世代の女性たちは、高校生の頃はパパと話もしなかったという人が多いんじゃないかしら。

【塩田くん】うちはSMS(ショートメッセージサービス)で家族グループがあります。普段は「おはよう」って送り合ったりする程度ですが、僕は旅行先で撮った写真を送ることもあります。すごい景色を見たら、感動を家族と共有したいので。

【原田】大学生男子が家族と「おはよう」のやり取り……。景色を送るのは、友だちより先に家族と共有したいっていうこと? 友だちには送らないの?

【塩田くん】友だちはインスタグラムでつながっているので、わざわざ送ったりはしないですね。逆に、インスタでは家族とコミュニケーションを取りません。フェイスブックは改まった投稿が多いので家族に見られてもいいし、実際につながっているんですけど、インスタはくだけた投稿が多いので、家族に向けて投稿しているという感覚がありませんね。

【原田】そんなに家族と仲良しなのに、インスタは見られたくないんだ! やっぱり親子仲が良くなってきていても、見られたい領域とそうでない領域は存在するんだね。

最近は、塩田くんのように家族用と友だち用とでSNSを使い分けている若者も多いようだね。LINEは、家族グループの有無にかかわらず、親とのコミュニケーションに使っている人が多数派か。それだけ気軽に使えるツールだっていうことなんだろうね。返事をするのが面倒だったら、堀井さんみたいにスタンプだけ送ればいいし(笑)。井上くんや橋場さんは実家を離れているから、親にとってはスタンプだけでも安否確認ができてホッとするだろうね。

■斬新!若者が考える親子向け商品

【原田】皆の話を聞いていると、やっぱり今の親子関係は僕の若い頃とかなり変わってきているようですね。親子の距離は近くなっているし、母の日や父の日のプレゼントも、友だちや恋人に贈るのと同じように真剣に選んでいる印象を受けます。まして結婚しているわけでないのに、「彼親誕プレ」なんていう風習もできてきているようです。

こうした「新しい親子関係」に向けて新しい商品やサービスっていうのがマーケティング上、存在し得ると思うのだけど、皆は何かアイデアはあるかな?

【山本さん】「親子でトレーニングジム」はどうでしょう。友だちに頑張っている姿を見られるのは恥ずかしいけど、親なら大丈夫だし、ダイエットや健康維持など目的は違っても、親子で励まし合えればジム通いを続けられる気がします。それと、「親子で脱毛」もイケるのでは。母娘はもちろん、最近は男性の美意識も高まっているので、息子と父親という組み合わせもアリだと思います。

【原田】最近は中年でも若者でもジムに行く人が本当に増えていますね。中年は健康維持のためでしょうが、若者は主にダイエットのため。男子でも美意識が高まっていますね。脱毛も母娘なら成立するかもしれないね。若年男子でも脱毛に行く子が増えているから、ひょっとすると「母と息子の脱毛プラン」なんていうのも成り立つ時代になってきつつあるのかもしれないね。

【井上くん】「そうだ、息子のところへ行こう」というキャンペーンを考えてみました。子どもが実家を離れている場合、子が帰省することはあっても、親が子のところへ行く機会はあまりない。それって新幹線代が高いからだと思うんです。だから、そんな親が子の学生証のコピーを提示することで、学割がきくようになるといいなと思って。もう一つは、親孝行をしたいけれど何をすればいいか迷っている若者に向けた「親孝旅行(親孝行×旅行)」。20代の社会人にも手が届く価格なら、利用者は意外と多いかもしれません。

「親孝旅行プラン」を提案する井上くん

【原田】平成の名キャッチコピー「そうだ、京都、行こう」(1993年)じゃなくて、「そうだ、息子のところへ行こう」(笑)。親子仲の良くなった今は、一方的に子供が帰省するのじゃなく、親が子供のところへ行く時代になっている。だから、子供のところへ行く場合は割引が利く、という旅行プラン、斬新だね。

「親孝旅行」も確実に子供世代にニーズが生まれていそうだね。

【橋場さん】東京ディズニーリゾートへ行くプランで「父娘ディズニー」があったらいいですね。映えスポットで何度も写真を撮ってもらいたい女子は多いと思うんですけど、相手が友だちだと遠慮しちゃうと思いました。父と娘の距離が近づいている中で、逆に父親になら遠慮なくお願いできるという子もいるかもしれません。少し値段が張るレストランのディナー付きのプランだったら、特別感もあるので思います。あと、コンサートやスポーツ観戦の「父娘・母息子シート」も売れそうです。片方の親と趣味が同じという友だちもいるので、2人用の家族シートがあったら喜ぶんじゃないでしょうか。

【原田】カメラマンとしての父親をディズニーに同行させる「父娘ディズニー」(笑)。友達よりも遠慮なく自由に振る舞えるし、奢っても貰える。

コンサートやスポーツ観戦の「親子シート」もニーズは確実にあるだろうね。

■家族プランが2人用になる日

【堀井さん】私は母娘で映画を観に行くことが多いので、親子のうち息子や娘はチケットが3~5割引になる「家族デー」がほしいです。週に1度そんな日があれば、皆がもっと映画に行きやすくなると思います。それとファッションなど「親子でサブスクリプション」のサービスがあるとうれしい。親子割引があれば、2人同時に入会したくなります。

【原田】「レディースデー」じゃなくて「家族デー」と。今は思春期でも家族で映画に行くのが嫌じゃない子が増えているから、むしろレディースデーよりもボリュームがとれるようになってきているかもしれないね。

斬新なアイデアがたくさん出てきましたね。どれも君たちが話してくれた親子関係とマッチしていて、でも今のところはあまり見かけない商品やサービスばかりです。

昔は「家族プラン」といえば4~5人用が当たり前だったのに、君たちのアイデアは2人用が多く出てきているのも面白い。母と娘・息子、父と娘・息子などバリエーションはたくさんありそうで、今の親子のニーズをつかんだ、新しいコンセプトと言えそうだね。

近年の親子関係は、昔のような「縦の」主従関係ではなく、友達関係に近い「横の」関係になりつつありますね。

個人的には、子どもの自立心に悪影響はないのか、親はきちんと子離れできるのかなど、さまざまな疑問が浮かぶ面もあります。

しかし、その良し悪しは別にして、企業はこの親子関係の構造的な変化をしっかり押さえておく必要があるでしょう。すでに従来のファミリー層の枠を超えた、新しいマーケティング戦略が求められるようになっているのだと思います。

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原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。

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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村洋子 写真=iStock.com)

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