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「日本憎し」で軍事協定まで破棄する韓国の異常

プレジデントオンライン / 2019年8月26日 18時15分

2019年8月23日、ソウルの韓国外務省を後にする長嶺安政駐韓大使(正面左から2人目) - 写真=時事通信フォト

■日本は自国の正当性を国際社会に強く訴えるべき

韓国が日韓の軍事情報協定「GSOMIA(ジーソミア)」を破棄した。日米韓3カ国の安全保障協力が後退するとの見方が広がっている。しかし日本はここであわててはならない。

一方的に破棄してきたのは韓国である。韓国は元徴用工訴訟の問題についても、何ら具体策を示さず、見て見ぬふりをしてきた。その結果が日韓関係の悪化だ。

まだ時間はある。今回の韓国のGSOMIA破棄を契機に、関係各国と新しい安全保障体制の枠組みを作り上げるべきである。そうすれば必ず、韓国もその枠組みに入ってくる。日本は自国の正当性を国際社会に強く訴えるべきだ。

■韓国は「アメリカの意向を無視」という墓穴を掘った

8月24日、フランス南部のビアリッツで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開幕した。日本の正当性を伝えるのに絶好の機会だ。26日の閉会までの3日間が勝負である。

日米韓3カ国の安全保障協力の問題について、G7では特にアメリカにしっかりと主張してほしい。トランプ大統領と親密さをアピールしてきた安倍晋三首相が、これまでの“トランプべったり外交”の成果を私たち国民に見せるべきだ。

もっともアメリカはGSOMIAの重要性を強調しながら韓国に破棄しないよう求めてきた。そのアメリカの意向を韓国は無視したわけだ。墓穴を掘ったことにもなる。韓国は今後アメリカに対し、どのように説明するつもりなのか。

■8月24日の北朝鮮のミサイル発射は“祝砲”だ

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の軍事情報を日韓で交換し合う。これがGSOMIAの目的である。それだけに最大の問題は北朝鮮対応だ。

アメリカの有力紙ワシントンポストは8月22日の記事で、韓国がGSOMIA破棄をちらつかせていることについて「最大の勝者は北朝鮮だ」と指摘していた。

北朝鮮は短距離弾道ミサイルの発射を繰り返してきた。8月24日には午前6時45分ごろと7時2分ごろの2回、それぞれ1発ずつ日本海に向けて発射した。北朝鮮の反発する米韓合同軍事演習が20日に終了してから発射するのは初めてで、これで7月25日から8月24日までに計7回発射したことになる。

24日の発射はアメリカとの非核化協議に入るに前に、アメリカや韓国を牽制する狙いがあるという指摘がある。しかし、この沙鴎一歩には韓国がGSOMIAを破棄したことへの“祝砲”に思えてならない。

■結果的に中国やロシアを利することになる

北朝鮮だけではない。韓国のGSOMIA破棄は、結果的に習近平(シー・チンピン)国家主席の中国やプーチン大統領のロシアを利することになる。中国とロシアはアジアの安全保障に強い影響力を持とうと虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。安倍政権にはそうした情勢を十分に把握して外交に努めてほしい。

韓国外交省が日本の長嶺安政・駐韓大使を呼び出し、GSOMIAを破棄することを文書で正式に示したのが、8月23日だった。長嶺大使はその場で抗議した。同協定は11月22日にその効力を失う。

GSOMIAは2016年11月に日本と韓国の間で結ばれた。北朝鮮の核・ミサイルについての情報を共有する際の秘密保全手続きなどを定めている。これまでに約30件の情報を交換してきた。今後、韓国はGSOMIAの前身に相当する日米韓の防衛当局による取り決め(2014年12月締結)に基づき、アメリカを介して日本に情報を提供するとしている。

■「北朝鮮や中国を喜ばせる愚挙」と書く産経

日韓関係の悪化で歯切れのいい社説(主張)を書くのが産経新聞である。8月23日付の産経社説はこう主張していた。

「北朝鮮に核・ミサイル戦力を放棄させなければならないのに、破棄はそれに逆行する。日米、米韓同盟の不安定化を望む北朝鮮や中国を喜ばせる愚挙で、極めて遺憾だ。日本政府が文政権に抗議したのは当然である」
「北東アジアの安全保障に責任を果たすつもりなら文政権は翻意し、協定を更新すべきだ」

見出しも「韓国の協定破棄 北朝鮮を喜ばせる愚挙だ」である。

韓国は核・ミサイル開発を止めようとしない北朝鮮をどう考えているのか。産経社説は「文政権は翻意し、協定を更新すべきだ」と訴えるが、賛成である。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領はGSOMIA破棄を強く反省すべきだ。

■産経の主張は日本政府と同じだが…

産経社説は「韓国大統領府の高官はGSOMIA破棄の理由について、日本が輸出管理の優遇国から韓国を外したことを挙げ、安全保障協力の環境に重大な変化をもたらしたからだと語った」と指摘し、こうも主張する。

「だが、これは破棄の合理的な理由になっていない。日本が対韓輸出管理を強化したのは、日本製品が不当に兵器転用される恐れが拭えないからである。優遇措置を得たければ、日本の信頼を取り戻す具体的行動をとれば済む話だ」

この主張、日本政府の言い分とほぼ同じだ。表面的には兵器転用の危険性の問題が介在するが、真相は違う。日本が韓国向けの輸出を厳しく管理したのは、明らかに徴用工訴訟の問題を無視し続けた韓国の文政権に対する抗議なのである。

■感情的に反発しているだけではないのか

読売新聞の社説ほどではないが、同じ保守の産経社説も時に安倍政権寄りに偏ることがある。読者あっての新聞だ。政府のためにあるのではない。担当の論説委員には新聞の公器性を自覚してほしいと思う。

産経社説は「感情的に反発しているだけではないのか。GSOMIAを一方的に破棄するようでは、日本は、韓国に対する安全保障上の懸念をさらに募らせるだけである」とも訴えているが、これには同感である。

■北朝鮮の軍事的な脅威は何も変わっていない

次に8月24日付の朝日新聞の社説を見てみよう。冒頭部分で「今回、その協定の維持は『国益に合わない』と判断したという。だが現実には、破棄こそが国益を損ねるのは明らかだ」と書くが、朝日社説が「国益」という言葉を持ち出して韓国を批判しているところがおもしろい。

どちらかと言えば、朝日社説は韓国の肩を持って安倍政権を批判することが多かった。それが今回は違う。それだけGSOMIAの破棄にインパクトがあったわけだ。朝日社説は続けてこう指摘する。

「文在寅大統領は北朝鮮との融和をめざしている。その平和的な努力は評価できるが、希望と現実を混同してはならない。南北間や米朝間の首脳対話が実現しても、北朝鮮の軍事的な脅威は何も変わっていないのだ」

「希望と現実の混同」「南北間や米朝間の首脳対話」「北朝鮮の脅威」と並んだ言葉を見ても朝日社説の韓国批判は強いことが分かる。

「脅威に立ち向かううえで最も肝要なのは、米韓日の結束であり、3国政府はそのための調整を長年重ねてきた。今回の日韓協定もその財産の一つであり、両国の防衛当局がこれまで双方に有益だと認めてきた」

「脅威に立ち向かう」「米韓日の結束」「日韓協定もその財産」といった表現は産経や読売が好んで社説に使う言葉である。朝日社説は韓国に対する見方やスタンスを変えつつあるのかもしれない。

朝日社説は「文政権は、米軍が持つ有事の際の指揮権を韓国に早く移すよう求めるなど、かねて自主防衛を強調してきた。もし今回の決定に、協定の破棄を求める北朝鮮への配慮があったならば、日米と韓国との間に深刻な溝を生んだといわざるをえない」とも書く。

「韓国文政権の北朝鮮への配慮」とはこれもおもしろい発想だ。ただ文在寅というあの大統領のこれまでの行動を考えると、「配慮」も否定はできない。

■朝日社説らしい「喧嘩両成敗」でいいのか

ただ朝日社説の後半部分方には、朝日らしさも残っている。

「安倍政権は輸出規制強化の理由に安全保障面の問題を掲げたが、今回の文政権はそれを逆手に協定破棄に踏み切った。歴史問題から、経済、安保へと広がる対立の連鎖を断ち切らなくてはならない」

安全保障の問題を盾にして攻撃し合う日本の安倍政権と韓国の文政権の双方を批判する。朝日社説らしい喧嘩(けんか)両成敗である。しかも朝日社説がよく使う「対立の連鎖」まで持ってくいるところなどは読んできて鼻につく。見出しも「日韓情報協定 対立拡大の連鎖を断て」だ。

朝日社説の最後は徴用工問題を取り上げている。

「文大統領は今月、植民地支配からの解放を祝う日の演説で、厳しい日本批判を控えた。だが報復合戦の根本にあるのは徴用工問題であり、この懸案を少しずつでも進展させなければ関係改善は望めない」

■「徴用工問題」の解決がなければ進まない

「徴用工問題を解決すべきだ」とのこの主張には賛成だ。解決のためには文政権が司法の判断と切り離した政治決断で自ら元徴用工らに補償金を支払うような斬新な政策が求められる。

朝日社説は「日本が輸出規制で韓国に対する優遇措置を外すのは、今月28日。そして、日韓の情報協定が効力を失うのは11月23日。これらの日程もにらみつつ、両政府は徴用工問題への対応策を落ち着いて話しあうべきだ」と訴えて筆をおいている。

まるで残された時間は少ないかのように思える。だが、日本も韓国も、トップの政治的決断によって、締め切り時間はどうにでも変えられる。そのためには首相や大統領の覚悟が必要だ。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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