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74歳で司法書士"高3の悔しさ惨めさが原動力"

プレジデントオンライン / 2019年10月5日 11時15分

伊藤忠男氏

加齢とともに記憶力は落ちるといわれている。だが脳の可能性は無限大だ。今回、「最高齢」で難関資格に合格した人たちに、その学び方を聞いた。第3回は「74歳で司法書士」の伊藤忠男さんだ――。(全4回)

伊藤忠男さん(76歳)の名刺を見ると、取得した資格がズラリと並ぶ。しかも、司法書士を筆頭に難関資格ばかりだ。伊藤さんは、コンピュータソフト会社を営むかたわら、52歳で宅建、リタイア後の66歳で行政書士、74歳のときに同年最高齢で司法書士の試験に合格した。どんな勉強法を身に付ければ、これほどの「資格マスター」になれるのか。秘訣を聞いた。

■基礎を学ぶことの大切さ

とにかく、私は負けず嫌いな性格なんです。年をとってくると負けたくない相手は、人様ではなく「過去の自分」。私は63歳での初挑戦から司法書士の試験を都合8回受けましたが、昨年の自分に負けたくないという気持ちで挑んできたからこそ、74歳で合格できたんです。

根源にあるのは、高校生の頃のある体験です。いまでこそ多くの人が大学に行きますけれど、私たちの時代はまだ貧しい家庭が多く、進学できる人は限られていました。たとえ勉強ができて向学心があっても、です。ましてや、田舎から都会の大学に進学できる人は限られていた。

私は島根で一番難関だった工業高校に進学し、卒業とともに就職しました。父親には、大学なんてとても行かせられない、戦後復興の時代ですから工業系の学生なら就職に困らないだろうと言われました。そんな卒業も決まった高校3年生のある日、小・中学校の同級生と駅でばったり会ったんです。彼と私とで級長(学級委員)を交互にやるような、意識しあう関係でした。彼が普通高校に行ったのは知っていました。「これからどうするの?」と聞くと「春から東京大学に行く。君は?」と。私は自分の進路は言えませんでした。

そのときの悔しさ惨めさが、自分の負けず嫌いにつながっていると思います。性格のせいか、人生を通してずっと勉強をしてきました。52歳で宅建に合格したときも、仕事をしながら。とにかく空き時間は勉強、市販のテキストを何度も読みました。

参考書やテキストを何度も繰り返し読み、重要な箇所にはマーカーを色分けして引いている。

しかし、司法書士試験の勉強は、それまでの参考書をひたすら読むという方法では限界があった。記述式の問題は一枚の答案用紙に、ボールペンや万年筆で解答しなければならないので、ミスをすると取り返せない。試験の緊張からうっかりミスをしてしまう……。失敗を繰り返すうちに「このまま受かったとしても実務でうまくいかないのでは」と疑念を抱いたんです。実務では、教科書にあるような相談ばかりではない。

そこで、65歳での3回目の挑戦に失敗したところで、1度これまでの試験向けの勉強をやめようと決意したんです。そこから4年間は試験は受けず、民法などの基本書を読み、実務に必要な「基礎を学ぶ」勉強に切り替えました。この間に、試験内容が被る行政書士の試験に合格しました。

■70歳から再びチャレンジ

そして、70歳から再びチャレンジを始めました。とにかく基本書とテキストを読み、過去問を何度も解く。図書館を利用し尽くし、ネットで判例を調べました。さらに、直前の追い込みや、課題である記述式の特訓には法律の専門予備校・伊藤塾のネット講座を利用、再開後5度目の挑戦で合格したのです。

今の目標は、自分が同じ高齢者だからこそできる、相続などの相談に答えるプロボノ(専門的な知識や技術を社会に役立てるボランティア活動)のような社会活動です。相続には、税金の問題も絡んできますから、今は税務の勉強も行っています。

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伊藤 忠男(いとう・ただお)
1943年、東京都生まれ。コンピュータソフト開発、ソフト会社経営などに携わる。96年、宅地建物取引士試験合格。2010年、行政書士試験合格。17年、司法書士試験合格。18年、簡裁訴訟代理等関係業務認定考査試験合格など。

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(伊藤 忠男 構成=伊藤達也 撮影=熊谷武二)

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