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なぜ「受付の対応」で会社の将来性がわかるのか

プレジデントオンライン / 2019年9月19日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/iryouchin

「業績が伸びていく会社」と「落ち込んでいく会社」を簡単に見分ける方法がある。数多くの企業の浮沈を長年観察し続けてきた経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「受付での対応をみれば、その会社の将来性はジャッジできる」という。どういうことなのか——。

※本稿は、小宮一慶『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■オフィスでは「植物」を、工場では「床」を見る

私は経営コンサルタントとして独立してからもうすぐ25年になります。業種も規模もさまざまな、たくさんの会社の経営に関わらせていただき、会社の成長、繁栄、ときには衰退の様子を見てきました。

現在も、11の会社の社外役員や顧問を務め、経営に関して率直に意見させていただいたり、ご相談にお答えしたりしています。

そしてこうした経験から、「これから伸びそうな会社」と「沈んでいきそうな会社」を見極めるための自分なりのチェックポイントを、今ではいくつも持っています。

例えば、私は会社を訪ねたときに、オフィスであれば「植物」を、工場であれば「床」を見ます。「整理・整頓」の様子も見ます。古びた工場でも、床がきれいに掃除され、整然と片付けがなされているところは安心できる会社、「新しいわりに、なんだか床が汚いな」「雑然としてるな」と感じる会社は、何がしかの問題点を抱えていることが多いのです。

■「季節はずれの広告」が意味するもの

植物がしおれようが枯れようが、業務には直接は影響しませんが、そうなってしまうまで誰も何もしない会社だということが問題なのです。「誰かが水やりをするだろう」「自分には関係ないことだ」とみんなが思っていて、ほったらかしにされている証拠です。

社内の美観に目配りができるかというのは、自分たちの働く環境への意識、ひいては会社そのものに対する意識のあり方を反映しているのです。

ある程度規模の大きい会社は、社内の清掃も、観葉植物などの手入れも、専門の業者がやってくれます。それは、社員に本業である業務に集中してもらいたいからです。

しかし、「仕事とは自分に任された業務をやることだけだ」と思い、自分たちの働いている環境に目を向ける意識、精神的余裕がなくなってしまうと、その会社はだんだん荒んでいきます。

以前、ある電機メーカーの本社の近くに、夏も過ぎているのに冷房を中心にしたエアコンの広告が掲げられたままになっていました。毎日、社員はみんなその前を通っているわけです。

「この季節にまだあの広告を出しているのはまずいんじゃないですか」と言う人が誰もいないのか、それとも意見があっても広報が動かないのか、いずれにしても大会社なのにお粗末だな、と思いました。

季節のずれた広告を出しっぱなしにしているのは、時間の合っていない時計、月遅れのままになっているカレンダー、しおれた観葉植物と同じことなのです。

そういうところに目が向かず、誰も行動を起こさなくなった会社は、本来の業務に対しても大事なことを見落としていることに気づかなくなります。

その会社は、数年後、本社ビルを手放すことになりました。

■会社の将来性は受付で分かってしまう

店舗はサービスの場なので来客に気を配るのは当たり前ですが、オフィスの場合は来客に対して「お客さまである」という意識の薄い会社がけっこうあります。

例えば、受付に誰も人がいなくて、電話が置いてあるような場合に、どこにかけたらいいのかが分かりにくいケース。電話をかけても、呼び出したい相手になかなかつながらないケース。「誰々さんをお願いします」と言って電話を切ってから、待たされるケース。どれもいい気分はしません。

そういうときに、通りがかった社員が「ご用件、承っていますか?」と声をかけてくれる会社と、知らん顔して素通りしていく会社があります。

この対応の仕方で、たちまち会社のレベルが分かります。

■自分自身のお客さまでなくても気にかけられるか

後者の場合、そこにいる人の様子を気にする感覚がないのか、自分のことで頭がいっぱいで、他人や自社内でも他のことに関心を持つだけの心の余裕がないのか、社員教育がお粗末なのか、いずれにしても今後の展開が期待できる会社とは言いがたいです。

自分のところに来たお客さまではないから関係ない、受付に人はいなくてもそこに電話があるのだから十分だろう——。そういう感覚の人は、自分がその組織に所属する一員だという意識が欠如しています。会社全体のことを考えるなら、自分とは関係のないお客さまであっても、親切に応対するのが当然の務めなのです(セキュリティー上もそのほうが良いことは言うまでもありません)。

小さい会社でも、大きな会社でも、社員それぞれが「あれっ、これっておかしくないか?」という目で会社全体のことを考えられているかどうか、そしてそれに対して自分で動こうとするかどうかは、とても大事なことなのです。

■気配りも「仕組み化」できる

これも気配りに関する話です。

私の知っているある会社は、応接室のテーブルの上に小さなメニュー・プレートが置いてあって、コーヒー、紅茶、ジュース、水、昆布茶などと書いてあり、「お好みのものをおっしゃってください」と言ってくれます。コーヒーなどはホットとアイスの両方があります。

口頭で「何がよろしいですか?」と聞いてもらえるのも親切ですが、あらかじめメニューが置かれていると、遠慮なく、そのときどきで飲みたいものをお願いすることができます。

そういうこまやかな心配りがうれしいわけですが、私がこれをいいなと思ったのは、気配りが「仕組み化」されている点です。メニューがあれば、誰がやっても同じ対応ができます。

仕組み化というと、いかに業務を効率化するかということのように捉えられやすいです
が、こうした業務とは関係のない小さなことも、会社における仕組みの一つです。

小宮一慶『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)

もちろんいまの時代はできるだけ無駄なことはやめて、省力化したほうがいいのは確かです。しかし、その流れの中で来客にお茶の一杯も出すことをしなくなるのが、はたして会社にとっていいことでしょうか。

お越しいただいたお客さまに「この会社の対応はいつ来ても感じがいいなあ」と好感を抱いてもらえることは、仕事を円滑に進める上でも大事なことです。また、お客さまに、もっとこの会社に来たいなと思ってもらえるのではないでしょうか。

拙著『伸びる会社、沈む会社の見分け方』では、こうした企業の将来性を見極めるためのチェックポイントを多数紹介しています。

会社の将来性が気になる状況は、日常のいろいろなところにあります。

・経営者として、自分の会社が良い方向に進んでいるか、あるいは停滞要素をはらんでいるかを確認したい方
・自分の会社、あるいは取引先の会社に将来性があるかを冷静に分析してみたい方
・就職や転職にあたり、会社選びに悩んでいる方
・これから独立・起業して会社を起ち上げたいと考えている方
・投資するときの参考にしたい方

こういう方々に、ぜひ「会社を目利きする力」を磨いていただければと思っています。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント
1996年に小宮コンサルタンツを設立し、代表取締役会長CEOに。経営、会計、経済、仕事術から人生論まで著書は130冊を数え、累計発行部数は360万部を超える。

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(経営コンサルタント 小宮 一慶)

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